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ワクチン摂取による重症患者数のほうが多かった?!?
天然痘ワクチンに関する興味深い話が先日紹介した
「因果推論の科学 「なぜ?」の問いにどう答えるか」
に出てきたので紹介したいと思います。
ワクチン接種者の死亡人数 > 感染者の死亡人数
天然痘のワクチンが作成され、人々への接種が進む中
「天然痘の予防接種による死亡人数が、天然痘による死亡人数よりも多い」
ということがわかってきて大論争となりました。
これは一体どういうことでしょうか、、??
天然痘はワクチンの有効性を示す歴史的な代表事例だったはず、、
なぜこんなことが起こったのでしょうか?
ワクチン接種者の死亡人数が多くなった理由
結論をいうと
これは、予防接種の効果により、天然痘が撲滅されつつあることにより
天然痘で亡くなる人が激減していただけでした。
本の中で使用されている例で説明しますと
子供が100万人いるとします。
そのうち99%がワクチン摂取し、残り1%は摂取しませんでした。
ワクチン接種した子供のうち1%が抗原抗体反応を起こし、そのうち1%が重症化して死亡するとします。
一方でワクチン接種しなかった子供の2%が天然痘にかかり、20%(5人に1人)が死亡するとします。
この場合ワクチン接種者の死亡者数、ワクチン非接種者の死亡者数は
ワクチン接種者の死亡者数 = 100万人 x 0.99 x 0.01 x 0.01 = 99人
ワクチン非接種者の死亡者数 = 100万人 x 0.01 x 0.02 x 0.2 = 40人
というわけでワクチン接種者のほうが多くなります(図1)。
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ここまで読んで頂いた方はわかると思いますが、これはワクチン接種が十分普及してきたことの裏返しなのですね。
ただしその当時の人々の立場に立って考えると、ワクチン接種者の死亡者のほうが人数が多いため目にする機会も多く、
「ワクチンやばくない?!?!」
と直感的に考えてしまう人がいるのも仕方のないことかもしれません。
本来これはどのように考えるべきなのでしょうか?
ワクチンの有効性をどのように説明すればよいでしょうか?
反事実
結論をいうと「反事実」について考察する必要があります。
今回のケースでいうと
「ワクチン接種者が0人だった場合、どのような世界になっていたのか」
を想像する必要があります。
ワクチン接種者が0人だと死亡者は
100万人 x 0.02 x 0.2 = 4000人
ということで4000人になります。
つまりワクチン接種により
3861 = 4000 - (40 + 99)
3861人死亡者を減らせることができていたのです。
まとめ
「因果推論の科学 「なぜ?」の問いにどう答えるか」で述べられていた
天然痘のワクチンの話を紹介させて頂きました。
現代にも通用する話ですので、参考になればと思います。