Theseus Pharmaceuticals（テセウス・ファーマシューティカルズ）
Theseus Pharmaceuticals(テセウス・ファーマシューティカルズ)とは
バイオベンチャーであるTheseus Pharmaceuticals(テセウス・ファーマシューティカルズ)を紹介します。
会社名：Theseus Pharmaceuticals(テセウス・ファーマシューティカルズ)
上場市場：NASDAQ
事業内容：
テセウス・ファーマシューティカルズ（THRX）は、標的治療薬の発見、開発、商業化を通じて、がん患者の生活改善に取り組むバイオ医薬品企業です。
企業評価(InvesterObserverのスコア)：83(2023/2/11)
Theseus Pharmaceuticalsの主力製品: THE-630
テセウス・ファーマシューティカルズでは、癌治療薬の開発を行っています。THE-630は、主力の製品候補の一つですが、どんな薬なのでしょうか。
とりあえずホームページには下記のように記載されています。
Our lead candidate, THE-630, is a single molecule pan-variant inhibitor of the receptor tyrosine kinase KIT designed for patients with advanced GIST whose cancer has developed resistance to earlier lines of targeted therapy.
日本語に訳しますと
‘当社のリード候補であるTHE-630は、受容体型チロシンキナーゼ(KIT)の単一分子汎変異阻害剤で、初期の標的治療に対して耐性を獲得したGIST患者向けに設計されたものです。’
？？なんだか難しいですね？？
まずは用語から順番に説明したいと思います。
GISTとはGastrointestinal Stromal Tumorの略で消化管間質腫瘍となります。消化管間質腫瘍は、消化管である胃や小腸の壁にできる腫瘍です。
受容体型チロシンキナーゼ(KIT)ですが、こちらは細胞表面にある膜貫通タンパク質(図1)です。KITは受容体型チロシンキナーゼをコードしている遺伝子の一つです。
受容体型チロシンキナーゼは細胞膜の表面にあることから細胞外との物質とのやりとりを担っており、ホルモンなど様々な物質と相互作用します。
そのため受容体型チロシンキナーゼは、多くの種類がんの発生と増悪においても重要な役割を担うことが示されており、変異した受容体型チロシンキナーゼを阻害することで癌を治療することができます。このようなタンパク質の働きを阻害する物質を阻害剤と呼びます。
Wikipedia抜粋
ここからが本題なのですが、テセウスで開発されているTHE-630は受容体型チロシンキナーゼに対する汎変異阻害剤(pan-variant inhibitor)です。
汎変異阻害剤とは、複数のパターンの変異を対応できる阻害剤なのですが、まずは一般的な阻害剤から説明します。
通常の阻害剤は、一つのパターンの変異にしか対応できません(図2)。
Theseus Pharmaceticalsホームページより抜粋
そのため、がん細胞がその阻害剤に対して耐性変異してしまうと、阻害剤が無効化してしまいます。
がん細胞が耐性変異してしまった場合は、他の阻害剤を用いて治療することになりますが、それに対しても耐性変異してしまう場合があります。これが複数回続くと、もはや対応が難しくなってしまいます。
これに対して汎変異阻害剤では、複数の変異パターンに有効な阻害剤となっています。そのため複数回の治療後の不均一な変異を持った癌細胞クラスターにも有効であるとされています(図3)。
Theseus Pharmaceticalsホームページより抜粋
このことから汎変異阻害剤であるTHE-630は、新たな癌治療薬として注目されています。
Theseus Pharmaceuticals THE-630のステータス
Phase 1/2の試験を実施中のステータスとなっています。
プライマリー完了予定日が2025年6月となっており(*)、株を持っている人はここ1,2年が要注意ですね。
(*)A Study of THE-630 in Patients With Advanced Gastrointestinal Stromal Tumors (GIST)
Theseus Pharmaceuticalsの直近のニュース
2023/1/5 第3の開発プログラムのターゲットとしてBCR-ABLを発表
Theseus Pharmaceuticals Highlights Key Anticipated 2023 Milestones and Announces BCR-ABL as Target for Third Development Program
2023/3/9
テセウスの社長兼最高経営責任者であるティム・クラックソン（Ph.D.）は、次のように述べています。「私たちは、リード候補であるTHE-630の進行GISTにおけるファーストインヒト試験を開始し、NSCLC患者を対象とした第4世代のEGFR阻害剤プログラムの開発候補としてTHE-349を指名し、CMLおよびPh+ ALL患者におけるBCR-ABLの標的とした第3のプログラムを最近導入して最高潮に達するまで、探索パイプライン全体で大きな進歩を遂げていました」
Theseus Pharmaceuticals Announces Business Highlights and Reports Fourth Quarter and Full Year 2022 Financial Results