【海外登山ネパール】Naar Phu渓谷とアンナプルナ山域テント泊21日間の旅④
Phu(4080m) - Naar Phedi(3540m)
Phu からは来た道を折り返し、Meta に着く前の分岐点で Narr Phedi 方面へ。
今日は、この旅で訪れることを楽しみにしていた場所の1つである Sartek Monastery 僧院での宿泊となります。
僧院の敷地には宿泊施設が併設されており、修行僧の生活を間近に見ることができます。
私たちはテント泊のため、敷地の一角をお借りしてテントの設営をしました。
私たちがロバから荷物を下ろし、テント設営をしていると年の頃は5-6歳でしょうか、可愛らしい修行僧たちが5人ほど集まって来て、興味津々の様子で私たちの作業を見ています。
私が「テント、一緒にたててみる?」と身振り手振りで話かけると、彼らは少し恥ずかしそうに、はにかみながら僧院へと戻って行きました。
しばらくすると僧院で夕方の勤行が始まり、荘厳な読経が聞こえてきます。
その瞬間、自分がまるでチベットの奥深くにある僧院に居るような、そんな不思議な世界に引き込まれていく錯覚に陥ると同時に、心がスッと解き放たれ、安らいでいくのを感じました。
Naar Phedi(3540m) - Naar(4110m)
僧院を出発すると急登がしばらく続き、かなりしんどく感じます。
いつものように、ピーターは絶好調の様子でポーターのテンディ(26)とチェワン(20)を追い抜き、彼の赤いザックと赤いTシャツ・オレンジのズボンはあっという間に私のいる位置からは見えなくなりました。
パサンと私はお互い離れて歩きつつ、写真を撮りながらゆっくり歩き、3時間ほどでランチ休憩地である Naar に到着。
Naar (4110m) で蘇る祖母との思い出
私たちがお昼の休憩で台所を使わせてもらうロッジに到着すると、庭でだいぶ待ったであろうピーターが「これが人生やな。最高やな」と言いながらコカ・コーラの瓶を片手に、山を見ながらくつろいでいます。
ロッジの庭先ではお婆さんがゴザを敷いて、収穫したニンニクの皮をむいていました。
幼い頃、祖母が畑で収穫した玉ねぎを同じようにゴザを敷いて、皮をむく手伝いをしていたのを思い出しました。
大好きだった祖母との幼少期の思い出は、この年齢になっても忘れることはなく、田んぼの土の匂いや感触、祖母の声、リウマチで指の関節が曲がってしまった手で農作業をしていた姿は今も鮮明に心に焼き付いています。
祖母を思い出す時、なにか胸がぎゅっと締め付けられるような、懐かしくもあり、嬉しくもあり、幸せな思い出、でも少しだけの悲しみと…
そんな説明のつかない、いろんな感情が入り混じった思い。
私はすっと引き寄せられるように、ニンニクの皮をむいているお婆さんの横に立って日本語で「ちょっと手伝わせてもらってもいい?」と話しかけました。
するとお婆さんは「ここにお座り」と私の言葉が終わるのを待たずに、地面を手のひらでトントンとしてくれました。
お昼ご飯も終わり、出発する時間になりました。
「お婆さん、これからもどうぞお元気で」と少し寂しそうな表情を浮かべるお婆さんの両手を握ってお別れしました。
Kangla Phedi(4530m) へ到着
Naar から今日の目的地であるKangla Phedi は思っていた以上に遠く、雪が降り出したことで急に気温も下がり、テント設営地に着く頃には疲れ切っていたのが正直なところです。
それぞれのテントを設営し、少しの休憩。
それからピーターとパサンの3人で高所順応に出発する頃には気温も氷点下となり、私自身の風邪もあって200mほどの登りでも呼吸が乱れるのを感じました。
今晩の夕食は風邪をひき込んでいる私を元気づけようと、料理長のダンナッグが私の大好物のモモを作ってくれました。
彼の作ってくれる料理は本当にどれも美味しく、「こんな料理上手な人が家にいてくれたら…」と何度思ったことでしょう。
彼の作ってくれたモモをお腹いっぱい食べ、早々にテントに戻って少しでも睡眠をとることにしました。
深夜になると、テントにさわさわと雪が降る音が聞こえ、その優しい音をききながら何日かぶりにぐっすり眠ることができました。
朝起きてテントから出ると、昨晩降った雪がテントにうっすら積もっています。
今日はここで高所順応での滞在のため、朝はゆっくりスタート。
皆で外にテーブルをセッティングし、山を眺めながらコーヒーをいただきました。
高所順応へはピーターと私、各自それぞれが好きなところへ登ることにしました。
ピーターはキャンプ地裏側の山へ、私はキャンプ地からすぐの山へ。
風邪をひいているせいか、上り下りを3度繰り返したのですが身体が順応していないのが感じられ、これから標高を上げることに不安がでできました。
昨年のラダック登山では身体が順調に高度に順応しているのを感じられたのですが、その感覚とは程遠く、体調管理を怠って風邪をひいてしまった自分に対しての腹立たしさともどかしさで悶々としながらテントへと下って行きました。