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【海外登山ネパール】Naar Phu渓谷とアンナプルナ山域テント泊21日間の旅②



Dharapani(1860m) - Koto(2600m)

焼けるような喉の痛みでほとんど眠れず、寝袋の中で寝返りを繰り返すうちに夜明け。
こういう時はいつもと逆で「いっそ、早く朝になってくれたらええのに…」と思ってしまうのは私だけでしょうか。

隣テントのジッパーの開く音がすると、「今日もええ天気やなぁ!」と溌剌としたピーターの声が。
それにつられて私もテントのジッパーを開け、腫れぼったい目をパチパチさせながら、「ピーター、おはよう。よく眠れた?」ときくと「むっちゃよく寝れたよ!」とのこと。
「そぅ、それは良かった」と言ったものの内心では、「ピーター、よう寝れたんや…羨ましい」とは言えず、気分を取り直し、次は右隣のテントで寝ていたパサンに「パサン、おはよう。よく眠れた?」と聞くと、「うん!ありがとう。よく眠れたよ」とのこと。

それ以降、私は彼らに「昨晩はよく眠れましたか?」と聞くのは一切止めにしようと心に決めました。

3週間お世話になるテント

Dharapani から Koto への道のりはジリジリ焼きつくような暑さに加え、階段や登りが多く、寝不足の私の体にはキツイ1日となりました。

バテ気味の私を横目に足取り軽く、颯爽と歩いて行くピーター。

彼がガイドより早く歩くことは昨年のラダック登山で知っていたものの、まるでトレーニングを積んだ若者のように、登りも下りも信じられないようなスピードです。

一体、なにをどうやったら60歳でこれだけの体力を維持できるのだろう?

ピーターが何か秘密にしている肉体改造的なものか、はたまた特別な食生活があるのか?
この3週間、彼をよ~く観察してみようという変な目的もできました。

Kotoへ無事到着
Koto

Koto(2600m) - Dharmasala(3230m)

Koto からは Naar Phu 渓谷へのルートとなるため、チェックポイントで許可証を提示します。
ここからはトレッカーの数もグンと減り、景色も渓谷風に変わり、静寂の松林の中を歩きます。

皆でワイワイ、たわいもない話をしながら歩くのも楽しいものですが、やはり私は山の中を静かに歩くのが好きです。
この日はピーターもパサンもそういう気分だったのかはわかりませんが、お互い自分たちのペースで離ればなれ、写真を撮ったり、立ち止まって景色を楽しんだりの1日となりました。

チエックポイント
ここからはすれ違うトレッカーも少なくなる
松林の中に建てられたログハウス
住んでみたいと思わずパチリ


Dharamasalaへの道
結構な登りが続く


今日の目的地である Dharamasala には夕方遅く到着。

標高も3000mを越えてくると、日が沈むと急に冷え込みが厳しくなってくるのが感じられました。
喉の痛みに加え、咳き込むようになり防寒用のダウンジャケットと毛糸の帽子を被りテント設営。
テント設営地を貸してくれたお茶屋のご夫婦が台所の暖炉にあたりなさいと招いてくれ、この辺りの山や山での生活の話をしてくれました。

翌朝、テントの片付けや荷造りをしていると、お茶屋のお母さんが私のところへやって来て、私の手を彼女の両手で包み込むようにしながら「冷たい手やなぁ」と言いながら、「これからの道のり、気をつけるんよ。また帰りには必ずここに寄って。待ってるから」と母親が子供にするように手をこすり合わせて温めてくれます。

帰りみちはここを通らないとわかっていながら、私は「うんうん。わかったよ。ありがとう」となんだか泣きそうになるのをこらえながら、彼女の手をぎゅっと握りかえしました。

Dharmasala(3230m) - Meta(3560m) - Junam Goath


今日も登りがほとんど。

私の体も本格的な風邪の症状が出始め、全身がだるく感じられるようになってきました。
パサンに「ちょっと今日はゆっくり歩くから」と伝え、呼吸を整えながらゆっくり歩くことを心がけました。
しばらくして左方向に見えてきたピサンピークの雄大な山景色を眺めながら、今日のテント設営地である Junam Goth に到着。

少しの休憩をとった後、カトマンズから溜まっていた洗濯をしたり、パサンと近くの森で木登りをして、疲れをとるためにゆったりと過ごしました。


ピサンピーク
快速で歩くピーター


Junam Goth
ダイニングテント・個人テント
パサンと木登り
素晴らしい紅葉


Dharapani からここまでの道のりは風邪をこじらせてしまった私にはキツイ道のりとなりましたが、景色は素晴らしく、特にピサンピークについては近づくほどに圧倒されるほどの迫力と美しさでした。

深夜、テントから出て見上げる満点の星空と、月光に映し出されたピサンピークの輪郭。

その息をのむほどの美しさは、いまだに目を閉じると鮮明に私の瞼の奥に浮かんできます。