あれから二年 #9

「きっと大丈夫って、信じましょう」

ケアマネさんが言っていたこの言葉は、ジェットコースターのように上がり下がりしていた私の情緒をいつでも落ち着かせてくれた。

多くの方が被災して、金銭的にも体力的にも精神的にも参っている、というニュースも目にする中、我が家は順調に家の直しに向けて手続きが済み、工事着工待ちになった。

いつでも

「あ!なんかツイてる。私、ラッキーだ!もってる。」

そんなふうに思い、寝る前には

「今日も一日ありがとう」

と感謝してから寝るようになり、屋根のブルーシートが風に飛ばされて雨ざらしになっていたときも

「きっと大丈夫。雨漏りはしない。たくさんの難関をくぐりぬけてきたのだから、よけいな心配はしない。」

そう唱え続けていた。

怖いくらいに幸先よく順調だったこと、運が良かったことですごく申し訳ない気持ちになり、ある日、友達と電話で話していて、私は泣いてしまったのでした。

友達は

「大丈夫。みんな順番で良くなっていくよ」

すごく優しくてあたたかい言葉が私の中にスーっと入って、楽になりました。

今でもなにかピンチになったときは思い出して、あたたかい気持ちになり、冷静を取り戻します。

屋根は、身内の同級生の大工さんを仲介して、神戸から別の大工さんが来ました。

12月9日のことでした。

6時間かけて千葉県まで来てくださり、我が家に着いてすぐ、外壁にハシゴをかけて、一気にヒョイヒョイと屋根の頂上まで上がっていき。

親方が

「けっこういっちゃってますね」

と私に声をかけましたが、私は、地下足袋だけで、我が家の急傾斜の屋根を一気に登っていったことにビックリしてなにも言えませんでした。

12月10日、午後三時のお茶の時間に。

「瓦が足りないねん。注文してるんだわ。少しの間、待っててください。」

と言われました。

その当時のホットワードが

「瓦職人がいない」

「瓦が間に合わない」

「製造が追いつかない」

だったので、

あーこれは年明けかな?さらに待つのかな?と思い、「どれくらいの時間待ちますか?」と聞いたら、

「10日間と思います。」

と。

本当?そんな短い日数で本当にいいの?と若干の不安を抱きつつ了解した。

それから10日を過ぎ、大丈夫かな?と少し不安が増し始めた頃、連絡が入った。

25日、直しに入ります、と。

わあ!すごい!やった!

そして25日にまた、大工さんが神戸から来てくださり、それが最終の直しになり、私には最高のクリスマスプレゼントになった。

不安の中でもめげずに信じて待っていて、良かった、と心から思った。

親方に

「これであたたかい年越しができます。ありがとうございます。」

と言ったら、

「まだまだこれから寒くなるねんけどな」

と小声で言われ、

「ん?」

と私が聞き返したら、

「いや、なんでもない」

と言って、笑顔で車に乗り込み、私は、見えなくなるまでお見送りしたのでした。

屋根にブルーシートがかかっていない!私はすごく嬉しくて、たくさん写真を撮って遠方の両親にLINEした。

義父も、穏やかな表情で、

おめでとう!良かったね

と言ってくれた。

雨漏りが気がかりで、大雨の夜は何度も目が覚め、天井を見上げた。

強風にあおられてブルーシートがはがされ、ばさばさとたなびく音で目が覚めたこともある。

たくさんの不安、心配事が解消され、夫婦ともに気持ちに余裕が生まれて、このころから夫と義父のぶつかり合いは減ったように思う。


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