No.5 地域学生センター 髙山隼さん・齋藤貴宏さん-行政と学生の連携で地域を変える
全国の地域活性化に関わる学生を繋ぎ、「地域」で活躍する学生を増やしていくことを目的に、地域課題を解決していく活動を行っている高校生の学生団体、地域学生センター。
今回の取材は、地域学生センターの代表髙山隼さん(高校1年)と、広報担当の齋藤貴宏さん(高校3年)にお話を伺いました。聞き手はクリネクションの蓑田道、城田空、古旗拳拓の3人です。
地域学生センターは、鹿児島県の鹿屋市で、地域を盛り上げていくことを目的としたイベント「かのや100チャレ」に参加していたメンバーが中心となり結成された学生団体です。かのや100チャレで事務局をされているシーズプロデュース株式会社(※1)の代表取締役の柳生成彦さんの協力を得て、2019年の7月に結成されました。地域活性のイベントなど、現在約15名程の学生が運営メンバーとして活動をしています。
地域学生センターの活動とは?
蓑田:地域学生センターはどのような活動をしているのですか?また、どんな活動をしていきたいと考えていますか?
齋藤さん:僕たちは、日本全国の行政、地域おこし協力隊などと連携し学生が地域活性化に参画する支援をしています。
日本全国の地域が抱えている課題を僕らの元に収集したり、地域と連携して中高生が地域活性化に参画できるようなプロジェクトを実施していくっていうのが僕らの活動の一つです。
次に、連携を行なった地域の物産販売。都心にいると地方の美味しいものはなかなか食べれないじゃないですか。埋もれてしまっている物産っていうのを広めていく物産展などを行っています。
3 つ目は人材育成塾。地域活性化の最前線で活躍されている人を講師として招き、地域活性化について学ぶセミナーを開くなどの活動もしています。
今後は、学生たちが自分の住んでいる地域をPRする大会やコンテストをやっていきたいと思っています。
古旗:地域学生センターは、かのや100チャレのメンバーが集まってできたという感じなのですか?
齋藤さん:そうですね。実は、2017年に第3回目のかのや100チャレが開催された時に、かのや100チャレの事務局をやられていたシーズプロデュースの柳生さんから提案を受けたのがきっかけで、僕らが地域学生センターを立ち上げることになったんです。
運営スタッフは 10〜15 人ほどです。僕たちの原点でもあるかのや 100 チャレには今年、150 人程が参加してくれました。
古旗:150人も集まるなんてすごいですね。
齋藤さん:かのや100チャレは、学校単位でチームを作り参加してもらっているイベントです。なので合同の学校説明会や、文化祭などで100チャレについて発表したり、鹿屋市の物産を販売するなどの活動を行ってきました。そうした活動が中学・高校の入試の雑誌などで取り上げられて、どんどんと広がっていったという感じですね。
古旗:なるほど。「100チャレ塾」というものはどういうことをしているんですか?
高山さん:僕たちが運営している「100チャレ塾」は、かのや100チャレに向けて、地域活性化に関する知識を学んだり、将来地域活性化に関わる人材を育てようという学習会です。
齋藤さん:地域活性へのスキルやノウハウを中高生のうちから学べるような環境を作っていきたいということと、専門知識を持たれてる方とのつながりを持つことで、こうした活動が最終的には地域活性化につながれば良いと考えています。
かのや100チャレ
全国の地域の課題について討論する「地域課題相談会」
古旗:地域学生センターは、鹿屋市関連のイベントとは別に「地域課題相談会」というイベントも開催されているんですよね?
齋藤さん:地域課題相談会は、地域活性をより分かりやすく、身近なものにしていきたいと思い開催しているイベントです。
地域活性化に関わっている学生って少ないじゃないですか。行政など公の力も必要。だから難しくて、固いイメージがあるんですよ。そうしたイメージを変えていきたい。
全国の行政や旅行代理店の人たちが「地域活性」を学ぶために集まる「一般財団法人 地域活性化センター」という団体があるのですが、そこの人たちにもイベントに参加してもらいました。
でも、クリスマスに開催したので、女子が全然集まらなかったんですけど(笑)
城田:何人くらい参加したんですか。
高山さん:参加者が14人くらいで。地域活性化センターの人が 10 人くらいで、合計24人ですね。
蓑田:このワークショップで出たアイディアっていうのを地域の人たちに伝えていったり、形にしていったりっていうのもあるんですね。
齋藤さん:そうですね。地域活性化センターに派遣された職員さんが僕らの提案を、全国にある派遣元の方に持ち帰ってもらって考えてもらうっていう、そういう繋がりも生まれてきています。
古旗:12月に初めてのイベントを行ったということですけど、その直後にこんなご時世になって。特に地域関係の団体は、活動自体が自粛しなきゃいけないっていう部分が出てきていると思うんですけど、地域学生センターさんは、こうした中でどんな活動をしているんですか?
高山さん:最近は、地域活性化の最前線で活躍されている方をお招きして、オンラインでリアルな声を聞けるようなセミナー「人材育成塾」を開いています
斎藤さん:危機をチャンスに見るっていうのは、すごい重要なことだと思います。なかなかこういう状態だとお互い顔を合わせてっていうのは難しいと思う一方で、やっぱりオンラインでやることになってから、北は北海道南は沖縄まで、いろいろな地域の方々と関わることができるんですよ。どんどん人づてにセミナーを広げていこうと考えています。
地域課題相談会の様子
地域活性の活動に関心を持ったきっかけ
蓑田:二人が地域学生センターの活動に参加されたきっかけは?
齋藤さん:僕自身、中三の時から3年間、鹿屋市の地域活性化プロジェクトに参加し、活動していました。100チャレで活動する中で、自分の住んでいる地域・学校のある地域の課題や、地域の課題に触れて解決することの楽しさに気づいたんです。
国際協力などをやっている団体は沢山あると思うんですが、海外の問題を知るためには、まずは自分の国の問題を知る必要があると、個人的には思っています。自分たちの住んでいる地域から始めないと変わらないじゃないですか。だからこそ地域活性化について学生たちに目を向けて欲しいと思っていて、地域学生センターに入ったという感じですね。
高山さん:僕は中学1年生のときに、部活の部長が活動に関わっていた関係から誘われたのがきっかけでした。
蓑田:活動をする中で、行政の方々との関わりっていうのもあると思うのですが、現地に実際どれくらい行かれているんですか?
高山さん:政策提案の発表会で優秀賞をとった学校に旅費として10万円が贈呈されて、実際に現地に行くという形です。なので僕は1回しか行ったことがないんですよ。
齋藤さん:僕は、2回ほど行かせていただいています。
古旗:基本的には各自の学校のチーム内で色々出し合って、首都圏で発表して、行くという感じなのですね。
齋藤さん:そうですね。やっぱり遠く離れていますので、住民目線がわからない。だからこそ現地の学校などとの連携っていうのも大切にしています。向こうに協力者を作ることで、行政だけでなく地域住民も地域活性化
に参画してもらえるような政策の立案につながっています。
物産展の様子
都会の目線ではなく、地域目線の活動を
蓑田:僕たちも活動している中で、「地域活性」って難しいなと思うんですよ。例えば、人口を増やすのが良いという地域もあれば、逆に人口が増えなくても良いという地域もある。「とにかく人口を増やせば良い」など都会の目線で語ってしまうっていうことに問題を感じているのですが、そうした問題についてどう考えていますか?
齋藤さん:地域学生センターの運営メンバーも、100チャレに参加しているメンバーも、全員首都圏なんですよね。
だから地方のことがわからないし、地方の現状を身にしみて感じているわけではないので、だからどうしても都会的なアイディアになってしまう、ということはあります。
ただ、人材育成セミナーなんかをやっていく上で、地方の人や行政と関わる機会を作れるようにしていて、そうした人との交流の中で、新しい地方の価値観っていうのを得られれば良いと思っています。
でも、自分たちが地方の価値観を習得できているとは到底思っていません。実際に僕たちが地域に住んでいたら、どういう風にしたいかとか、その地域に住んでいる人たちにも聞いて、政策を考えてくださいねっていうのは、色々な学校に周知している感じですね。
古旗:地域活性をやる上で、主観的に見ることも大切ですし、一方で外部の主観的な目線で考える必要もあるということですね。
齋藤さん:都会の人だと(地方に対して)客観的な目線で見ることはできますし、地方に住んでいると主観的な目線で見れるので、それを半々に持てるような活動にしていきたいと思っています。
地域活性を行うことの難しさ
蓑田:活動している中で、地域で一番課題だなと思っていることはありますか?
高山さん:正直、僕たちの立場で言えることではないんですけど、地域によっては、行政の職員の方がやろうっていう気持ちみたいなのがあまり見えない部分もあるなと、正直なところ思います。
僕たちが提案した政策がどうなったのかっていうのも実際に公表されないこともあったり、自分たちが地域活性化の活動をしているのが実際にはどうなっているのか、わからないなっていう問題は感じていたりはします。
蓑田:意外と地域との関わり方で、そうした課題って多いと思います。外から見た目線と中から見た目線って違うし。
高山さん:もう1つあるのが、審査員の中でも結構高齢の方が多いという問題もあります。やはり高齢者の方が見ると若者とのギャップが生まれて、実際政策がちゃんと通じなくて、ダメになってしまったこともありました…
古旗:難しいですね。今の日本の社会の仕組み上。どんな地域でもあることですよね。
齋藤さん:田舎では、若者がこれをやりたいと思っていても、なかなか実行に移せないっていうのがあると思います。そこには、地方と都会の情報格差がやはりあるのかなと思います。都会だと情報が流動的なので、ひっきりなしに新しい情報がくるけど、情報の伝わり方が遅いというのはあると思います。
蓑田:でも地方や田舎に関わらず、行政の方々って良くも悪くも保守的になりがちなところってあると思います。そうした行政の方々との話し合いながら新しい提案をすることっていうのが一番大切だと思うんですけど、なかなか行政と関わりたがらない人って多いですよね。
齋藤さん:地域活性化の事例とかを見ていても、どうしても民間だけで、行政だけでやっているものが多くて、民間と行政が連携してやっているものってなかなか多くはない。民間は民間でやるし、行政は行政でやるという流れが地域にできてしまっている。だからこそ、官民が連携する流れを作り、将来地域活性化に活かせるような活動をしているって感じですね。
スキルアップセミナー
地域活性化を行うリーダーを育成したい
蓑田:地域学生センターとして地域同士の活性化を支援する活動をされていると思うんですけど、こうした社会を作りたいみたいな目標はありますか?
齋藤さん:僕らとしては、地域活性化をするサイクルを作っていくっていうのが当面の目標なので、地域課題と全国の地域活性化に関わる学生を繋ぐことで、人脈を広げてもらう。また行政の方にはそれを「学生が言っていることだから」っていう風に軽視するのではなく、しっかりと本気で検討してもらうとか、本気で実行に移してもらえるような仕組みづくりをしていくことで、地域の抱える課題を解決し、地域を活性化することに繋げていきたいと思います。
蓑田:今後、どのようなことをやっていきたいですか?
齋藤さん:今後の展望としては、地域活性化を行なっている学生たちが自由に使えるフリースペースや、地域活性化の事例なんかが集まった事例集をそこに置いたりとか、物産展を行なったりとかできる拠点を首都圏に作って、地域活性化について、少しでも学生たちが関われるような環境を整えていきたいと思っています。
あと、大きな目標になってしまうのですが、学生時代に地域の活動に参加してもらうことによって、例えば過疎化が進んでいる地域だったり、それによって地場産業が衰退している地域で、地域活性化を行うリーダーとなるような人材っていうのを育成していけるようになりたいと思っています。
かのや100チャレで話す齋藤さん(左)
※1 シーズプロデュース株式会社は、「地域と学校”の活性化のためのサービス」を提供している会社。地域と学生を繋ぐ活動にも積極的に取り組んでおり、資金面や講師を紹介するなど、地域学生センターの活動を支援している。
この記事を書いた人・取材した人
蓑田道(みのだたお)東京都港区出身・在住。学生団体クリネクション共同代表。名古屋の情報サイト「NAGOYAPRESS」編集者。趣味は旅行、地図を読むこと。地域の再生を通して地域から社会を変えていくことを目標として活動をしている。
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