No.13 芝園かけはしプロジェクト -多文化共生でみんなが暮らしやすい団地へ-
こんにちは。学生団体CRENECTIONの山内翼です。今回は埼玉県川口市にある芝園団地で地域活性活動に取り組む、芝園かけはしプロジェクトの代表圓山王国さんを取材しました。
活動を始めるきっかけ
芝園団地は1978年(昭和53年)に入居が始まった、埼玉県川口市にあるUR都市機構の賃貸住宅です。1990年代後半から、都心へのアクセスが良い立地のため、中国人を中心とした外国人住民が増加しました。2018年現在、およそ5000人が入居し、そのうち外国人入居者が過半数を占めています。また日本人入居者は高齢の方が多い団地となっています。
この状況で主に2つの問題が発生していました。
①文化や習慣の違いによる生活トラブル
②住民同士の接点不足
このような問題を解決するため、団地の自治会の役員の方が中心になって、大学にゼミや多文化共生のフォーラムを通して学生に声をかけました。その学生たちは2014年に商店会主催のイベントに参加し、生活トラブルや接点不足といった芝園団地の現状を知ることになりました。そこで偶然に集められた有志の学生たちが立ち上がり、問題を解決するため、2015年に芝園かけはしプロジェクトが発足しました。
代表の圓山さんは現在大学院で都市計画やまちづくりを学んでいて、地域のコミュニティづくりをしてみたいということで参加しました。他にもさまざまな分野に興味がある学生が集まった団体です。こうしていろいろな視点から考えられるのは活動をするうえで大切だと思いました。また、集まった学生は芝園団地にゆかりがある人ではないということは意外でした。
これまでの活動
このように、団地の現状を踏まえ、問題点を解決できるように意識して活動をしています。
かつて団地内で住民の接点不足を象徴するようなものとして、外国人への誹謗中傷が書かれたベンチがありました。そこで”落書き机直しプロジェクト”としてUR都市機構とも協力して取り組み、国籍や年代問わず、団地の住民の方の手形を付けたベンチにしました。これは様々な文化・年代の人と共生するという交流のシンボルとなりました。現在でもこのベンチは、団地の住民の憩いの場になっています。
このような外国人に誹謗中傷の問題は芝園団地に限らず、どこで起きていてもおかしくなく難しい問題です。しかし、これを真っ先に変えようとする姿勢からこの団地に対する強い気持ちを感じました。
”多文化交流クラブ”では、各自で食べ物を持ち寄るランチ会や、クリスマス会などの季節の催しもの、科学実験教室など様々なイベントを行っています。このイベントでは、楽しみながらコミュニケーションできる場になっています。
団地における住民間の接点不足の解消するためにこうしたイベントを行うことで、住民同士も団地にはどんな人がいるのか知ることができます。さらに企画を通して交流を深めることができるのでいいイベントだと思いました。
また、このようなイベントは誰かだけが楽しむものではありません。全員にとって意味のある時間にするために、キーワードとしていたプロセスからの交流についてはとても大切な考えだと思いました。
上のパンフレットは2019年度に発行したもので、冊子になっています。中には団地での生活のルールや外国人にとってなじみが薄い"自治会"という概念の説明、困ったときの相談口などが書かれています。外国人住民だけでなく,日本人住民にとっても生活の参考になるような内容で、日英中の3言語で書かれたパンフレットになっています。
新たに引っ越してきて、慣れない環境での生活になる方にとってこうした生活案内パンフレットのようにルールや相談口が書かれたものがあると格段に生活のしやすさが変わると思います。さらに長く住んでいる方にとっても、改めてルールなどを確認することができ、ためになるいいパンフレットだと感じました。
日本人住民と外国人住民の双方で話し合うワークショップの場では、相手の悪口から言い争いに発展してしまうことを想定していました。しかし、悪口大会学べることがあり、ファシリテーターのプロジェクトメンバーがこのようなことが起きてしまった場合の対処に挑戦したいという思いがあったそうです。こうした思いから、NGワード等を設けず、ありのままのワークショップを実施したそうです。プロジェクトメンバーの十分な想定もあり、修復不可能な言い争いには発展せず、無事パンフレットを作成できました。
こうした活動を聞いていくうちに、”外国人住民のために…”や、”外国人は外部から来た者だから…”というような考えではなく、すべての住民が一住民として対等な関係になれるような取り組みを意識しているということを強く感じました。
オンラインでの交流は高齢の方にとってなじみにくく扱いにくかったり、外国人住民の方にとってもオンラインを使ってまで交流しようとは思わないそうです。人とのつながりを意識を重視してきた中で、コロナウイルスの感染拡大によるオンラインでのつながりの希薄化は難しい課題となっています。
また、地域情報誌については当団体の活動と似ているところもあり、今後アイデアを共有するなどして、互いの良さを伸ばしていきたいと思いました。
芝園かけはしプロジェクトの地域情報誌「かけ×はし」他、芝園かけはしプロジェクトの制作物に興味ををお持ちの方は芝園かけはしプロジェクトにお問い合わせください。
活動をするうえで気を付けている点
芝園かけはしプロジェクトのメンバーは、元々団地に関わりがあったわけではない外部から来た第3者の立場です。団地で様々な人と接し、活動をしていくうちに第3者という中立の立場から傾いてしまうことがあるかもしれません。しかし、芝園かけはしプロジェクトのメンバーは、活動でどの立場の方にも色眼鏡をかけずに対等に接していけるのは強みだと感じました。
数字の面だとあまり貢献できていないように見えても、悲観的にならず、一歩一歩少しずつ変えていけるように活動をしていく姿勢が印象的でした。
これからの芝園団地
最近、団地では”こども食堂”の活動が始まっています。これは、芝園かけはしプロジェクトの活動ではなく、URの協力のもと、川口市内でこども食堂を運営している方と団地の住民の方による活動です。この活動では運営に携わる方が足りていないという課題を抱えています。
この活動に限らず、現状地域活動に関わる人が少ないそうです。そこで、芝園かけはしプロジェクト、UR、川口市が連携して地域の担い手を育てていける活動を考えているそうです。
取材を終えて
今回、芝園かけはしプロジェクトの代表の圓山さんを取材して、芝園かけはしプロジェクト全体が団地の問題点を認識して解決し、多文化共生の実現を目指して活動しているのを強く感じました。また、市やURと協力した活動を考えているそうで、今後の幅広い活躍が楽しみです。
詳しく知りたい方へ
・芝園かけはしプロジェクトホームページ
・芝園かけはしプロジェクトfacebook
・CRENECTIONについて
この記事を書いた人・取材した人
山内翼(やまうちつばさ)埼玉県出身.趣味は知らない土地に旅行に行くこと.地域活動に興味がある.人とのつながりを感じられるまち・都市づくりに関わりたいと思っている.
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