ラグビー:ブレディスローカップ Day1
Kia ora! 10月11日にニュージーランド(ニュージーランド)とワラビーズ(オーストラリア)が毎年対戦するブレディスローカップ第1戦が行われました。結果は16-16と引き分けました。
試合結果の詳細についてはワラビーズのホームページで公開されているので参照してみてください。また、オールブラックスでも記事が早速書かれており、更にハイライトはオールブラックスのYoutubeチャンネルで公開されています。おすすめのシーンは3:08前後と5:47前後です。
日本語版ではラグビーリパブリックが早速記事をまとめてくれています。
試合のサマリーは記事に書いてあるので各自読んでいただければと思います。ここではスターティングメンバーと現場の動きに対する感想に近いものを書いていきます。
スターティングメンバーはオーストラリアの方が起用方針の意図がはっきり見えた
スターティングメンバーと交代は以下のようになりました。起用法としては元々それぞれのベストメンバーではあったと思いますが、オーストラリアが若手の勢いと経験を積ませようというのが見えるのに対し、ニュージーランドはやや保守的な印象が否めない感じでした。常勝を必然とされているチームなので起用する側もハードワークであろうとは思います。
今回、出場していないのはオーストラリアのノア・ロレシオ選手のみですが、接戦だったので出すタイミングは難しかったと思います。
ゴール担当はオールブラックスはジョーディー・バレット、ワラビーズはジェームズ・オコナーが一貫して努めました。ただし、81分の55mのペナルティーキックのみリース・ホッジが担当しました。
ニュージーランドはフォワード陣はホワイトロックとサム・ケインという大きな柱が健在である以上彼らを中心に回すことに大きな変更はない印象でした。ただバックス陣が全体的に若いので全体を見渡せる・ブルーズでバックス陣をまとめる動きを見せていたボーデン・バレットでまとめるつもりだったのでしょうが、アキレス腱を痛めたことにより大事を取って登録から外れました。代役にダミアン・マッケンジーが入りましたが個人のプレーとしての動きは遜色なかったものの、ボーデン・バレットと同じ水準のゲームマネジメントは難しかったかもしれません。彼がいなかったことのもう一つの痛手は80分以降ドロップゴールの選択肢が取れなかったことがあります。周囲が見えるボーデン・バレットがいた場合これを実行した(そういう動きをすることが頭にあった)可能性はあります。雨天+強風の条件下だったので彼がいてもできたかは分からないのですが。
チームの対戦スタイルとしては、2019年同様、クルセイダーズの基本に忠実かつ少ないアタック回数でトライを取りに行くスタイルが踏襲された印象でした。そこにブルーズの勢いが加わった印象です。ブルーズの戦い方はタックル・ボール保持時のゲインメーターの長さやキックでメートルを稼ぐ⇒ラインアウト後のタックルでボールを奪う傾向がありますがこれが時々重なって見えました。第2戦以降、ボーデン・バレットが出場することでさらにその傾向は加速していくと思います。
オーストラリアは、初出場・キャップ数が1桁の選手が多い分、キャップ数の多い選手を各ポジション(フロントロー/セカンド・バックロー/ハーフバック/バック。番号で1~3,4~8,9~10,11~15)ごとに1人配置させる工夫していた形跡が見られます。ジェームズ・スリッパ―、スコット・シオ、マイケル・フーパー、ジェームズ・オコナー、マット・トゥームアの5人がそのベテラン陣になります。彼らの下で若い選手に思う存分暴れてもらうという考えがあったのでしょう。その目論見は第1戦ではハリー・ウィルソンやタニエラ・トゥポウの正面突破シーンが多く見れたのでやや成功したと思います。
チームの対戦スタイルとしては前半はレッズの勢い重視の動き、後半はブランビーズの安定感が加わってきたという印象を受けました。ただ一方でレッズのラインアウトの不安定さ・反則の多さも出てしまっていた(反則はオーストラリアが14、ニュージーランドが7)ので第2戦以降のレベルアップが楽しみです。
◆ニュージーランド代表メンバー
1 ジョー・ムーディー(46)⇒57分 17 カール・トゥイヌクアフェ(13)
2 コーディー・テイラー(50)⇒57分 16 デイン・コールズ(69)
3 オファ・トゥウンガファシ(35)⇒63分 18 タイレル・ロマックス(1)
4 パトリック・トゥイプロトゥ(30)⇒74分 19 トゥポウ・ヴァアイ(debut)
5 サム・ホワイトロック(117)
6 シャノン・フリゼル(9)⇒63分 20 ホスキンス・ソトゥトゥ(debut)
7 サム・ケイン(68)*Captain
8 アーティー・サヴェア(44)
9 アーロン・スミス(92)⇒74分 21 TJ・ペレナラ(64)
10 リッチー・モウンガ(17)
11 ジョージ・ブリッジ(9)
12 ジャック・グッドヒュー(13)
13 リーコ・イオアネ(29)⇒56分 22 アントン・レイナートブラウン(43)
14 ジョーディー・バレット(17)⇒69分~FB
15 ダミアン・マッケンジー(23)⇒69分23 ケイリブ・クラーク(debut)クラークはWTB
RESERVES
16 デイン・コールズ(69)
17 カール・トゥイヌクアフェ(13)
18 タイレル・ロマックス(1)
19 トゥポウ・ヴァアイ(debut)
20 ホスキンス・ソトゥトゥ(debut)
21 TJ・ペレナラ(64)
22 アントン・レイナートブラウン(43)
23 ケイリブ・クラーク(debut)
※カッコ内はキャップ数。以下、同
◆オーストラリア代表メンバー
1 ジェームズ・スリッパー(96)⇒59分 17 スコット・シオ(63)
2 フォラウ・ファインガア(12)⇒59分 16 ジョーダン・ウエレセ(9)
3 タニエラ・トゥポウ(19)⇒51分 18 アラン・アラアラトア(35)
4 ラカン・サラカイア=ロト(21)⇒74分 20 ロブ・ヴァレティニ(1)
5 マット・フィリップ(3)
6 ハリー・ウィルソン(debut)⇒65分 19 ロブ・シモンズ(100)
7 マイケル・フーパー(99)*Captain
8 ピート・サム(9)
9 ニック・ホワイト(31)⇒71分 21 ジェイク・ゴードン(1)
10 ジェームズ・オコナー(52)
11 マリカ・コロインベテ(28)
12 マット・トゥームア(52)
13 ハンター・パイサミ(debut)⇒74分 23 リース・ホッジ(39)
14 フィリポ・ダウングヌ(debut)
15 トム・バンクス(6)
RESERVES
16 ジョーダン・ウエレセ(9)
17 スコット・シオ(63)
18 アラン・アラアラトア(35)
19 ロブ・シモンズ(100)
20 ロブ・ヴァレティニ(1)
21 ジェイク・ゴードン(1)
22 ノア・ロレシオ(debut)
23 リース・ホッジ(39)
2戦目以降の出場が楽しみな選手
◆ニュージーランド代表メンバー
アキラ・イオアネ
ウィル・ジョーダン
ボーデン・バレット
◆オーストラリア代表メンバー
ウィル・ハリソン
テイト・マクダーモット
ノア・ロレシオ
トム・ライト
ジョーダン・ペタイア
ニュージーランドに関しては、なぜウィル・ジョーダン出さないんだという声がtwitter、instagram双方のコメントに見えていたのですが私も出すべきだと思います。出るとすればWTBになるのでジョージ・ブリッジと入れ替わる形でしょうか。個人的には、アキラ・イオアネが出ているシーンを見たいです(笑)
オーストラリアは若手が多いのと召集メンバーが多いのでニュージーランドよりも楽しみな選手が多いです。ただ第1戦の起用法を貫くのであればコーチは「ウィル・ゲニアがいればSHウィル・ゲニアとSOウィル・ハリソンorノア・ロレシオでバランス取れるのになぁ…」と考えているのではないでしょうか。オコナーをWTBに置いたうえでニック・ホワイトと組ませる起用法が一番可能性はありそうですね。
テイト・マクダーモットは、今回の試合で同じSOのニック・ホワイトがお手本を示してくれたので2戦目以降彼の立ち回りを見て自ら消化した上で動けるようになるのではないかと思います。(今回のニック・ホワイトは普段以上にテイト・マクダーモットの動きに近かった)
トム・ライトとジョーダン・ペタイアは二人ともトライを取れる選手ですが、今日のコロインベテとダウグヌが非常に良かったので、怪我や大事を取った休場もなくこのままとなると初出場は4か国対抗戦まで持ち越しになるかもしれません。
参考:スタッツ比較
引用元:ワラビーズ公式サイト
https://wallabies.rugby/match-centre/3/2021/8987
要約すると、
攻撃:AU>NZ
守備:NZ>AU
セットプレー:NZ>AU
規律:NZ>AU
という感じです。ここのスタッツに記載はないですがポジション支配率・ボール支配率はどちらもオーストラリアが60-65%ほどでした。
プレーの効率・質に関してはニュージーランドの方が優位です。(オーストラリアはそれを理解した上で攻撃時間を長める戦略を取ったのだと思います)
オーストラリアの課題はセットプレー(スクラム・ラインアウト・モール)のレベルアップ・タックルの精度の改善、ニュージーランドの課題は強いて言うなら雨天下でのプレイに慣れることでしょうか。雨天下での試合はスーパーラグビーのリーグではオーストラリアではありましたがニュージーランドではほとんどなかったように思います。