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モアナ・パシフィカvsマオリオールブラックスあれこれ
※サムネ画像はJSPORTSのオンデマンド放送の一部をスクリーンショットさせていただきました。トップリーグの試合も放送してくれるのでスポーツ観戦が好きであれば是非加入してみてください。
記事より引用:
2022年以降のスーパーラグビー新規参入を目指す“モアナ・パシフィカ”が、歴史的な第一歩を踏み出した。
フィジー、サモア、トンガをルーツとする選手で結成されたこのチームは、ハミルトン(ニュージーランド)のFMGスタジアム ワイカトで12月5日、ニュージーランドの先住民族マオリの血を受け継ぐ選手で編成される“マオリ・オールブラックス”と対戦。21-28で惜敗したが、パシフィックアイランド(太平洋諸島諸国)出身のラガーマンたちに希望を与えた。
モアナ・パシフィカとマオリオールブラックスの対戦は試合内容のみならず、試合前のハカも見どころのあるものでした。
SCENES!
— All Blacks (@AllBlacks) December 5, 2020
Moana Pasifika issue a stirring pre-match challenge to the Māori All Blacks which they respond to with their traditional haka Te Tīmatanga
🎥: @skysportnz pic.twitter.com/Cp5vdwBRKL
先にモアナ・パシフィカ側がフィジー・サモア・トンガのウォーダンスをリミックスしたものを見せ、そのあとにマオリオールブラックスがマオリオールブラックスオリジナルのハカ、「テ・ティマタンガ」を見せる流れでした。
◆モアナ・パシフィカの出身国のウォークライ
モアナ・パシフィカはサモア・フィジー・トンガにルーツを持つ人でチームが構成されていますが、それぞれの国代表特有のハカがあります。それをざっと列挙してみます。それぞれ2019年のワールドカップで披露しているのでその動画を引用します。
1.フィジー:-シビ(Cibi)-
こちらがフィジーのウォークライ、Cibiです。
元々は、部族同士の戦いが始まる前の準備・戦いに勝利した後の祝福としての、ウォーダンスでした。
因みに、Cibiはフィジー語で「戦士による勝利の祝福」を意味します。
現代のCibiは、1939年のオールブラックス戦に向けてHAKAに対抗するためのウォーダンスをフィジーも持つべきという考えのもと作られました。
2012年頃、フィジー語で「挑戦の受け入れ」を意味する、Boleというダンスが使われましたが、結局Cibiに戻っています。
歌詞などはwikiにまとめ上げられているので参照してみて下さい。
2.サモア:-シヴァタウ(Siva Tau)-
こちらがサモアのウォークライ、Siva Tauです。
元々は、戦いが始まる前の準備としての、ウォーダンスでした。
これは1991年のラグビーワールドカップで初めて披露されました。2007年に一回構成が少し変わりましたが、また元に戻っています。
歌詞などはwikiにまとめ上げられているので参照してみて下さい。
3.トンガ:-シピタウ(Sipi Tau)-
こちらがトンガのウォークライ、Sipi Tauです。
元々は、トンガから500-1000kmほど北、サモアとフィジーの間にあるウォリスフツナという島々での儀式に使われており、これをトンガでも日常的に使っていたものです。(19世紀頃に取り入れていったと言われている)
ラグビーでのウォークライに関しては1970年頃までは「Kaliao」と言われており棒などを使っていましたが、1980年代から棒を使わない「Sipi Tau」の形に置き換わっていきました。現在の形になったのは2011年のラグビーワールドカップからと言われています。
歌詞などはwikiにまとめ上げられているので参照してみて下さい。
◆マオリ・オールブラックスのテ・ティマタンガの意味
「Te Tīmatanga」を直訳するとマオリ語で「始まり」を意味します。
マオリオールブラックスがテ・ティマタンガを披露するようになったのは2001年からでした。
"kaumātua(長老)WhetuTipiwaiがマオリ・オールブラックスのために特別に書き上げられました。それは、私たちが今日持っているものへの虚空、無、暗闇からの創造のマオリの物語を語っています。"
というようにマオリの長老がマオリ・オールブラックスに向けて、マオリの物語とラグビープレイヤーへのメッセージを込めて作られたもののようです。
上のようにマオリの物語については本にもなっているようなので、興味があれば買ってみてください。ニュージーランドから発送されるので1ヶ月くらいで届くと思います。
wikiより引用(Google翻訳で直訳):
ニュージーランド先住民の遺産の1つは、リズミカルに叫ばれる言葉を伴った、活発な動きと足の踏みつけを伴う伝統的なマオリの姿勢の踊りであるハカでした。これは、1888年10月3日のイギリスのサリーとの試合中に最初に行われました。ハカは後にニュージーランド代表チームのオールブラックスに採用されました。
2001年、マオリは最初に「ティマタンガ」ハカを演じました。これは、生命の進化と4つの風からのニュージーランドの創造について説明しています。これは、kaumātua(長老)WhetuTipiwaiがマオリオールブラックスのために特別に書き上げられました。それは、私たちが今日持っているものへの虚空、無、暗闇からの創造のマオリの物語を語っています。また、マタウランガ(知識)、ワナウナタンガ(団結)、タウマタタンガ(卓越性)を達成するための目標、目的、戦略を表明し、設定している若い戦士、若い首長、若いラグビー選手の集まりについても説明します。
引用元:https://en.wikipedia.org/wiki/M%C4%81ori_All_Blacks#Haka
最後に対戦前のハカについてのエピソード動画を載せます。(字幕ON推奨)
◆未来のオールブラックス
マオリ・オールブラックス、モアナパシフィカのメンバーの中でも若い選手は将来オールブラックスに選ばれる可能性も十分あります。(あるいはサモア、フィジー、トンガ代表) ここでは試合の中で目に付いた20代前半の選手を数人挙げてみます。
20歳前後の選手でオールブラックスに既に入っている選手は、
トゥポウ・ヴァアイ、ケイレブ・クラーク、ウィル・ジョーダン、ホスキンス・ソトゥトゥらがいます。彼らと同世代、という事になります。
1.マオリ・オールブラックス
ビリー・プロクター(Billy Proctor)/ウェリントン・ハリケーンズ/CTB,FB
まだ21歳の選手でポジションはセンター(12,13番)です。モアナ・パシフィカ戦では13番を付けました。オールブラックスはウィングはケイレブ・クラークをはじめ良い選手が溢れるほどいますが、センターはそこまでではありません。従って2021-22シーズンでさらに台頭してきた場合、彼が2023のW杯に出てくるかもしれません。
クイン・トゥパエア(Quinn Tupaea)/ワイカト・チーフス/CTB
ビリー・プロクター同様、CTBの選手です。ニュージーランドU20(20歳以下の選抜チーム)ではビリー・プロクターと入れ替わる形でセンターに入っていました。モアナ・パシフィカ戦では12番を付け、ビリー・プロクターと手を組みました。
カレブ・トラスク(Kaleb Trask)/ベイ・オブ・プレンティー・チーフス/SO,FB
(上をクリックでFaceBookのページ動画に飛びます。動画の15番の選手です)
SO,FBを中心にやる選手で2021年はブリン・ガットランドのリザーブに入る可能性が高いと思います。モアナパシフィカ戦では15番を付けました。
ビリー・プロクター(13番)とクイン・トゥパエア(12番)は下の動画のように、後半9分にパスを繋いで勝利を引き寄せるトライを決めています。
🔥 Mīharo! No superlative will do justice to this. Just sit back and admire this piece of brilliance from the Māori All Blacks.
— All Blacks (@AllBlacks) December 5, 2020
🎥: @skysportnz #MABvMPA pic.twitter.com/cxXbFR6quI
2.モアナ・パシフィカ
モアナ・パシフィカの場合、ルーツの国籍と現住所の国籍両方所持しているケースもあるので、オールブラックスではなく、サモアやトンガ、フィジーの代表として登場する可能性もあります。国際試合ができるのは圧倒的にオールブラックスですが、当落線上、第2線級の選手はルーツを持つ国の代表になることも多いです。(ex:ティム・ナナイ=ウィリアムス・・・サモア代表。現在は松島選手と同じクレモントでFBのリザーブに入ることが多い)
これはオファー次第になってくると思います。
また、英語の記事ではありますが、モアナ・パシフィカの選手がオールブラックスになってしまうことでサモア、フィジー、トンガの国民があまりいい思いをしないのではないか、という記事もあります。これは日本に対しても言えることなのですが。生まれた所と、ラグビー選手として育った所(第2の故郷のような)と、どちらを選ぶのか?という話でもありますね。
(日本代表にもアイランダー出身の選手が多い・・・中島イシレリ、ヴァルアサエリ愛など。 堀江翔太や松島幸太朗のように南アフリカ、NZの育成システムを経由して日本代表になった選手もいる)
マリノ・ミカエレトゥウ(Marino Mikaele-Tu'u)/ホークスベイ・ハイランダーズ/FL/ルーツ:サモア
23歳、ポジションはNo.8です。マオリ戦ではフランカー(6番)に入りました。
プレーの粗さが気になることはあるものの、突破力と高い運動量が魅力的な選手です。
現状、6-8番は良い選手が多いのでサモア代表になる方が現実的かつ面白いかもしれません。
ナイトア・アン=コイ(Naitoa Ah Kuoi)/ウェリントン・チーフス/LO/ルーツ:サモア
Naitoa Ah Kuoi throwing on the afterburners 🔥
— Wellington Rugby (@WgtnRugby) November 11, 2020
🎥 @skysportnz pic.twitter.com/7D5p5Rz3Q4
21歳、ポジションはLOです。2020年にデビューし、チーフスのラインアウトでボールの受け取り担当をよくやっていました。
2021年もチーフスで先発してトゥポウ・ヴァアイと両LOになる可能性が高いので、スーパーラグビーを観戦できる人は彼に注目してみても良いかもしれません。
フォラウ・フカタヴァ(Folau Fakatava)/ホークスベイ・ハイランダーズ/SH/ルーツ:トンガ
Never EVER sleep on Folau Fakatava!
— Mitre 10 Cup (@Mitre10Cup) October 4, 2020
Do @hbmagpies have one hand on the #RanfurlyShield? Tune into @skysportnz for a thrilling finish.#OTAvBAY pic.twitter.com/7lr9KP3V6J
トンガ出身の1999年生まれの選手で2019年からスーパーラグビーのハイランダーズに参戦しています。ポジションはスクラムハーフです。
個人的にオールブラックスでアーロン・スミスとTJペレナラが引退した後、若い選手で誰が良いかと聞かれたら彼を指すと思います。もう一人はフィンレー・クリスティー(ブルーズ、出身はスコットランド)です。
ただし、このプレー水準だとトンガのラグビー協会も放っておかないと思うのでオールブラックスは早めにスコッド入りさせる方が良いかもしれません。
サレシ・ラヤシ(Salesi Rayasi)/オークランド・ハリケーンズ/WTB/ルーツ:サモア・フィジー
Salesi Rayasi was a MACHINE for @AucklandRugby on Saturday night!
— All Blacks Sevens (@AllBlacks7s) November 2, 2020
Credit: @skysportnz #Mitre10Cup pic.twitter.com/b6DNJ7uXJE
オールブラックス7人制代表の選手で24歳になります。(ケイレブ・クラークも7人制代表の選手)
マイタ―10カップではオークランド代表としてトライを量産しました。そのせいか、モアナ・パシフィカ戦ではかなり厳しいマークに遭い、あまり目立つことはできなかったので15人制で代表を目指すとなれば、突破力が課題になるかもしれません。
ジョシュ・イオアネ(Josh Ioane)/オタゴ・ハイランダーズ/SO/ルーツ:サモア
Incredible finish!!!
— Ultimate Rugby (@ultimaterugby) September 5, 2020
Pinpoint kick from Josh Ioane and an even better take from Will Jordan 🤯#NorthvSouth pic.twitter.com/816DhTyOp9
既にオールブラックス1capある選手ですが、今後出場機会が増えても良い選手です。マオリ戦ではやや距離の長い40m前半のペナルティーゴールを前半3回決めて9点を積み上げました。リッチー・モウンガがスランプに陥った場合、彼がSOに召集されることもあると思います。
◆最後に
モアナ・パシフィカの場合、サモア代表、フィジー代表、トンガ代表の選手も混ざっているので、他のメンバーがそちらを選択することによりサモア、トンガのレベルアップが進むことも考えられます。そのため、スーパーラグビーに参戦する2022年にどのくらいの成績を残すか注目する必要があるかもしれません。
マオリ・オールブラックスの方は、ハカのリードが今までアシュ・ディクソンが中心でしたが、今年はシーン・ワイヌイが前半を担当しました。こちらも、シーン・ワイヌイがマオリ・オールブラックスのキャプテンになることがあれば彼が中心のチームに移行していくだろうと思います。