【海外雑記】香港の街並み-3
※トップ画像は香港ラグビーの中継をスクリーンショットさせていただいたものです。(Facebookにて香港ラグビー協会/HKRUが中継していました。)
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香港の街並み3回目の記事は都市計画(主に高度制限)からの視点での記事になります。かなり人を選ぶ記事です。
よくわかんねえという人は画像の色がついているブロックの範囲内で建物を建てればいいんだ~という事だけ分かって頂ければ良いです。
主に引用元は下のURLになります。
上記のポータルサイトをベースに各地を検索すると、地域ごとの都市計画法ー例えば床面積は敷地の面積の2倍まで、といった具合の表記がまとめられたデータに辿り着きます。
「Indexタブ⇒各地域(香港、九龍、新界、離島・・・)⇒さらに細かい地域」
で各地域の都市計画・景観のルールがまとめられたPDFデータをダウンロードできます。
ここで入手したPDFデータのルールを理解し、違反しないように建物をデザインしていきます。ただし、特例でちょっと曲げてもらうことは可能なようです(要相談)
…PDFデータについてはここで書くと長くなりそうなので興味のある方のみ各自読んでみて下さい。
1.地図のデータを実際に読み取ってみよう
今回は鰂魚涌(Quarry Bay)-太古駅周辺で見てみます。
怪獣大廈があるエリアですね。
左のスケールで上から3-4段目まで拡大すると各エリアの情報が細かく表示されます。太古は香港のいわゆる「100万ドルの夜景」エリアに入るので建物の高度制限についての規制が厳しめにかかっています。
△105 ・・・ このエリアの建築物は天端が海抜105m以下になるようにしなければならない。
□5・・・ このエリアの建築物は5階以下で建設しなければならない。
ざっくり意訳すると上記のような形になります。この高さを規定することで遠くから見た時の山の稜線・ビルの天端のラインが綺麗になるようにしていると思われます。
逆に、例えば新界の元朗のように夜景エリアに入らないような所に「△、□」の規制はありません。(つまり、単純にPDFに記載されたルールに従えばいい)
〇15、といった形で地域を区切ってその番号に応じたルールを定めたりすることもあるようです。
もう一つ、色分けですが、
赤・・・ 総合開発エリア(・・・日本の大規模再開発などに近い印象)
ピンク・・・ 商業地域(オフィスビルやショッピングモールなどを建てる)
濃い赤・・・ 住宅地域(住宅+低層に商業施設)
オレンジ・・・その他(特定の用途。工業系はこの色が多い)
黄色・茶色・・・ 住宅地域(住宅)
オリーブ色・・・ 村(日本でいう低層住居専用地域に近いイメージ)
水色・・・ 学校・運動場
緑(黄緑)・・・ 公園・緑地・公開空地
ざっくりこのような形で用途が分けられています。
工業/商業/住宅/住宅専用で分けられるのは恐らく世界共通だと思います。
2.地図のデータを元にGoogleEarthでポリゴンを作ってみよう
地図の読み取り方が分かったところで、実際にポリゴンを入れて視覚化してみました。(※緑地・学校・その他の用途については今回は割愛しました)
上空から見た鳥瞰です。
鰂魚涌(Quarry Bay)-太古(Tai koo)駅周辺が商業エリア(ピンク・赤)になっており、離れたところが住宅専用地域という形になっています。
この駅近をお店、駅から離れたところを住宅街、という考え方自体は日本と同じです。
斜めからも見てみます。
一部を除いてほとんどのエリアで規定が順守されています。
☝啓徳空港跡地(滑走路)から
☝油塘駅周辺から
☝インターコンチネンタルホテル・星光大道から
☝鯉魚門燈塔から(ドローンがよく飛んでいるエリア)
4方向からシミュレートしてみた結果、原則背後の山の稜線より下になるような規制がかかっていることが窺えました。
また、学校・運動場周辺については「階数」での制限になっているため、曲がりなりにも空が確保されています。(緑丸)
怪獣大廈の部分が実は横切られているのですが、建設後の制定だと思われます。意図としては学校に向かう道の安全な通路・採光の確保なのだと推測しています。(一時期観光地化されたので怪獣大廈の取り壊しは難しいかもしれません)
おまけ:深水埗の街並みについて考える
香港の街並み-1で触れた深水埗の露店が立ち並ぶ街並みについても見てみます。これは主に景観保全の観点です。
☝第1回記事。深水埗はここでの「a.」エリアに該当する。
駅周辺の状態です。
住宅地域(店舗兼住宅)+最高高度80m,90m
が深水埗駅周辺の用途・高度制限です。
一方で、現状建てられている建築物の大半は最高高度が45m程度(⇒1960年代の建物)です。
地主の収益次第で建て直した方が利益が取れる見通しが立った場合は1街区丸々再開発で建て替えられる恐れもあります。現在の街並みを保全したい、という視点でいうとあまり良い状況とは言えません。
将来的に収益を維持しつつ、観光客も多く来る賑わいを維持する場合、床面積を最大化する方向ではなく「部分的に」レベルの高い内装デザインなどで単価を上げる方策を考えていく必要もあるのではないでしょうか。
不動産単価・賃料が安いからこそそれ以外のサービス・デザインに費用を回せるという事は強みになってくると思います。
(日本の古民家改造・リノベーションは既に事例が多数あるし、香港現地でもそういう動きは前からある模様)
最後に-日本でも模倣は可能
香港の100万ドルの夜景を構成するための高度制限については日本の長崎・神戸・函館など景観を観光資源にできる地域でも適用ができる部分がある印象です。
特定の場所から見たときにどういう景観を作りたいかというマスタープラン・視点を法制定側-(ここでは行政、市や県)が持つことが重要になってくると思います。
現行の法体制でも地域自治体が条例を付加する形でコントロールすることは可能なので自治体がそれに対する見識を持っているか・そして実施できるかどうかが鍵になるでしょう。
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