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あの蒸し暑い夏の日

1000000回の愛してるより10000回の愛してるが似合う君に出会って何年が経つだろうか。

7月7日、いつも通り憂鬱な朝を迎えた。6月に置いていかれた梅雨が余計に僕を憂鬱にさせた。

テレビをつけると、子供が短冊に願い事を書く姿をアナウンサーが取材していた。
「仮面ライダーになれますように!」
「かけっこで1番になれますように!」
「家族みんなが幸せでいれますように!」
バカバカしい。今日は雨だぞ?感動の再会どころが天の川は氾濫してそれどころじゃないだろ。

時計を見れば13時を過ぎていた。七夕だからとかそんなんじゃなくて、家にそれしか無かったから。と言い聞かせそうめんを食べた。これも仕方なくなんだが、母親から送られたカラフルなやつ。七夕を楽しんでるやつみたいで自分に嫌気がさした。


腹も満たされたところで一服するか。
タバコがない、最悪だ。
レギュラーのセブンスターならどこでもあるが、12のメンソールにこだわっているせいで、ここから坂を超えて20分のコンビニまで行かないといけない。


この雨のせいでイライラは止まらない。


雨の中、しかたなく出かけることにした。


家を出てすぐにある坂。いつもこの坂を登ると憂鬱が加速する。今日は雨が降っている上に、ヤニ切れで最悪だ。

坂を登って数分、見かけたことがない白いワンピースを着た女が現れた。
この辺で見かけたことないな。引っ越してきたのか?
いつもならスルーするところだが、何故か気になった。しかし、話すことも無く、何事もなく通り過ぎてコンビニに着いた。常連だからか入った瞬間に店員がタバコを取ってくれた。数分でコンビニをあとにした。


コンビニの前で一服していた。
やはりあの女が気になる。

白いワンピースが似合いすぎる透明感と、日本人らしい黒くて長い髪。幅の広い二重と…
って俺どこまでジロジロ見てたんだ?
あの女がまた通らないうちに早く帰ることにした。


すぐにタバコを吸い終えて、家に帰ることにした。雨は止んでいた。


帰りは下り坂だから憂鬱が晴れる。


坂に着いた。


白いワンピースを着た女が突然目の前に現れた。


「さっき私の事ジロジロ見てたでしょ」

少し笑みを浮かべながら、白々しく話しかけてきた。


「む、虫がついてたから。」

俺らしくない、変な声が出た。


「嘘ー!じゃあ取ってくれればよかったじゃん!」


かわいい。
普段の俺ならバカバカしくてさっさと帰ってるはずなのに、妙のこの女に惹かれる。


「い、今からちょうど飯食いに行こうと思ってたんだけど、お前も来る?お詫びも込めて奢るよ。」

俺らしくない。俺じゃない。


「え!ほんとに?!いくいくー!」


「私、パフェ食べてみたいなー!」

「え?食べたことないの?」

「うん。うち親厳しかったから。外食自体もしなかったんだよね。」

「よし!じゃあパフェ食べに行こう!」

この重たい空気と、彼女の悲しげな顔に耐えられなくなった俺は、またらしくない振る舞いをした。



近くの喫茶店に入って、彼女にパフェを奢った。
あざとく食べる彼女に俺はどんどん惹き込まれた。

憂鬱な毎日を過ごしながら遠い未来で1人生きたいと思っていた俺を、広い世界に連れ出してくれた。


パフェを食べ終えて、何事もなく2人は別々の道へ帰っていった。


「あ、連絡先聞くの忘れた。」

振り返って彼女を追いかけようとしたがその姿はもう無かった。


どうせこの辺に住んでるからまた会った時に聞こう。
家に着いてまた1本タバコを吸った。少し甘かった。

テレビをつけると、そうめんのアレンジレシピを紹介していた。


あ、今日は七夕か。



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