見出し画像

「 社会的養護 」 のあれこれ

今回しゅーいちで取り上げるキーワードは「社会的養護」です。

児童の虐待についての報道がしばしば行われている一方、そのような子どもたちのその後についてはなかなか知る機会が限られているのではないでしょうか?

まず通報などがあり、特に深刻なケースの場合には一時保護所に預けられます。さらにその中でも家庭復帰が難しいと判断された子どもたちが社会的養護の対象となります。

厚生労働省のHPで確認すると、「社会的養護」の用語は次のようになっています。

「保護者のない児童や、保護者に監護させることが適当でない児童を、公的責任で社会的に養育し、保護するとともに、養育に大きな困難を抱える家庭への支援を行うこと」

その実態がどのようか、詳しく見ていきましょう!

(1) 種類で見る社会的養護

スクリーンショット 2019-11-20 9.45.27

出典:日本子ども支援協会


社会的養護は、大きく「施設養育」「家庭養育」の2つに分けられます。

■ 施設養育
児童心理司や社会福祉士などの専門的職員が配置された、社会的養護が必要な児童のための施設における養育。乳児院や児童養護施設などが代表的。また施設が小規模化され、規模が家庭的になったものは家庭的養育とされる。

・乳児院
乳児(原則1歳未満)を養育する、あるいは退院した乳児について相談や援助などを行うことを目的とする施設

・児童福祉施設
養護を要する児童(原則1歳以上)を養育する、あるいは退所した児童について相談が自立のための援助を行うことを目的とする施設


■ 家庭養育
里親制度によって里親委託を受けた方による養育。

・養育里親
養子縁組を目的とせずに、要保護児童を預かって養育する里親。ニーズに応じた多様な里親委託が可能。

・専門里親
虐待された児童や非行等の問題を有する児童、及び身体障害児や知的障害時児など、一定の専門的ケアを必要とする児童を養育する里親。専門里親になるには専門的な研修を要する。

・ファミリーホーム
里親のうち、5〜6人ほどの多人数の子どもを預かり養護する住居のこと。

・普通 / 特別養子縁組里親
養子縁組(具体的な血縁関係とは無関係に人為的に親子関係を発生させること)を前提とした里親のこと。普通養子縁組里親では実親との親子関係が解消されないのに対し、特別養子縁組里親では解消されるのが違い。


(2)数で見る社会的養護

ここでは社会的養護の現状について厚労省発表のデータに基づきながら見ていきます。(各グラフの出典は「社会的養育の推進に向けて」(H31.4 厚生労働省子ども家庭局家庭福祉課)より)

▼全国の児童相談所における児童虐待に関する相談件数
⇨児童虐待相談件数は年々増加傾向にある。

スクリーンショット 2019-11-20 9.53.29



▼平成29年度 児童虐待相談対応の内訳
⇨ 社会的養護のうち、施設養育が8割を超える。

スクリーンショット 2019-11-20 9.59.56


▼要保護児童数(全体)の推移(H2〜H29)
⇨児童養護施設児童数が減少、里親児童数が増加傾向にある。

スクリーンショット 2019-11-20 9.55.00



▼高等学校等卒業後の進路
⇨全高卒者平均と比べると、高卒で就労する割合が高い。

スクリーンショット 2019-11-20 10.06.57



▼措置理由別児童数(H29)
⇨虐待のみでなく、父母の精神障害や経済的理由も高い割合を占める。

スクリーンショット 2019-11-20 10.09.40



▼各国の要保護児童に占める里親委託児童の割合(2010)
⇨諸外国に比べると、日本の家庭養育の割合は極めて低い状態にある。

スクリーンショット 2019-11-20 10.04.58



▼登録里親数(H5-H29)
⇨登録里親数は平成23年以降、増加傾向にある。

スクリーンショット 2019-11-20 13.33.25


(3)社会的養護のこれから


2009年、国連総会は「児童の代替的養護に関する方針」を決議しました。

特に以下の4点を狙いとしており、とりわけ社会的養育の形態をより家庭的な形態にすることを強調しています。

(a) 児童が家族の養護を受け続けられるようにするための活動、又は児童を家族の養護のもとに戻すための活動を支援し、それに失敗した場合は、養子縁組やイスラム法におけるカファーラな どの適当な永続的解決策を探ること。

(b) かかる永続的解決策を模索する過程で、又はかかる永続的解決策が実現不能であり若しくは児童の最善の利益に沿っていない場合、児童の完全かつ調和のとれた発育を促進するという条件の下、最も適切な形式の代替的養護を特定し提供するよう保障すること。

(c) 各国を支配している経済的、社会的及び文化的状況を念頭に置きつつ、これらの点における責任及び義務を政府がより良く実施することを支援し促進すること。

(d) 市民社会を含む公共部門・民間部門の双方で社会的保護及び児童福祉に携わる全ての者の方針、決定及び活動の指針となること。


しかしグラフにもあった通り、日本における里親(家庭養育)の割合は他国と比べても十分とは言い難い状況にあります。

それ以外の面についても、日本の社会的養護の質や量については様々な指摘がなされているところです。

例えばニューヨークに本部を置く国際人権NGOのHUMAN RIGHTS WATCHは「夢がもてない:日本における社会的養護下の子どもたち」という報告書を作成、日本の社会的養護体制の課題を明らかにし、政府に対して提言も行なっています。


このような状況を背景としながら、最近では社会的養護のあり方を見直そうとする機運も高まってきています。

日本財団は2017年、「社会的養護のアウトカムに関する系統的レビュー 報告書」を作成し、どのような養育形態が子どもの中長期の成長発達にとって望ましいのかを、エビデンスに基づきつつ中立的な立場で明らかにすることを目的に研究を行いました。

また厚生労働省においても今年の4月に「社会的養育の推進に向けて」という資料を発表、社会的養護の質の向上について方針を示しました。

この動きはソーシャルセクターでも活発になってきています。特に認定NPO法人Living in Peaceでは、児童養護施設の小規模化、施設でクラス児童のキャリア形成や進学支援を進めるための事業などを幅広く展開しています。

スクリーンショット 2019-11-20 18.28.25

出典:Living in Peace 事業内容

全ての子どもたちがみんなに育まれる、そんな文化が少しずつ広がっていってほしいですね!


【資料まとめ】

・全国児童養護施設協議会「もっと、もっと知ってほしい児童養護施設
・全国児童養護施設協議会「もっと、もっと知ってほしい児童養護施設のお仕事
・国連(2009)「児童の代替的養護に関する方針
・HUMAN RIGHTS WATCH(2014)「夢がもてない:日本における社会的養護下の子どもたち
・新たな社会的養育の在り方に関する検討会(2017)「新しい社会的養育ビジョン
・日本財団(2017)「社会的養護のアウトカムに関する 系統的レビュー 報告書
・厚生労働省子ども家庭局家庭福祉課(2019)「社会的養育の推進に向けて


「すてきだな」「おもしろそうだな」と思ってもらえたらぜひサポートをお願いします!!! 子どもたちの教材費や大学生講師の交通費と活用させていただきます😊 Twitterはこちら!https://twitter.com/Creche_PR