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【マイクロチップ義務化】ペットの飼い主には責任がある?

1 マイクロチップ装着の義務化

令和4年6月1日から、ブリーダーやペットショップ等で販売される犬や猫について、マイクロチップの装着が義務化されました。

環境省『犬と猫のマイクロチップ情報登録に関するQ&A』 https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/pickup/chip.html

ブリーダーやペットショップ以外の一般の飼い主については、マイクロチップの装着は強制されてはいません。
それでは、ペットの飼い主にはどのような責任があるのでしょうか。

2 飼い主の責任

動物の愛護及び管理に関する法律(以下「動愛法」とします。)には次のような飼い主の責任が規定されています。
(e-Gov法令検索:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=348AC1000000105

  • 動物を適正に飼養または保管することにより動物の健康および安全を保持し、動物が人の生命や財産に危害を与えることを防止し、動物が人に迷惑をかけることを防止する責任(動愛法7条1項)

  • 感染症についての知識をもち予防する責任(動愛法7条2項)

  • 動物の逸走を防止する責任(動愛法7条3項)

  • 動物を最期まで面倒見る(終生飼養)責任(動愛法7条4項)

  • 繁殖について適切な措置を講じる責任(動愛法7条5項)

  • 動物が自分の所有であることを明らかにするための措置を講じる責任(動愛法7条6項)

マイクロチップの装着は動愛法39条の2第2項に規定されており、自分の所有であることを明らかにするための措置を講じる責任を具体化するための一つの手段として考えられています。

3 義務に違反するとどうなるか

動愛法44条以下に罰則についての規定がありますが、先ほど説明した飼い主の責任を守らないこと自体は罰則の対象になっていません。
飼い主の義務に関する動愛法7条の各規定を見ると、文の終わりは「努めなければならない」となっています。
法律で「努めなければならない」となっているものを『努力義務』といいます。
『努力義務』には強制力が無く、各自が自主的に守るよう努力しましょう、という目標みたいな意味しかありません。
そのため、飼い主の責任に反しても罰を受けることがないのです。
しかし、罰がなければ守らなくていいわけではなく、飼い主が責任を自覚し、強制されなくても自主的に守ることが好ましいのはいうまでもありません。

4 なぜ飼い主に責任が発生するのか

例えば、土壌汚染の可能性がある土地を所有している人は、他の土地に被害を及ぼさないために法律で土壌汚染の対策に関する義務を負います。
このように、他人に被害を及ぼさないよう、被害を及ぼす原因となる物の所有者が何かの義務を負うことはなんとなく理解できると思います。
動愛法でいえば、動物が人の生命や財産に危害を与えることを防止する責任(動愛法7条1項)は、他人に被害を及ぼさないようにする責任の一つといえます。
しかし、その他の責任は、他人に被害を及ぼす原因があるから規定されているのではなく、動物のための規定であることが読み取れないでしょうか。
飼い主が動物のために責任を負う理由は、動愛法1条(目的)に次のような内容が含まれているからだと考えられます。

「・・・国民の間に動物を愛護する気風を招来し、生命尊重、友愛及び平和の情操の涵(かん)養に資するとともに、・・・人と動物の共生する社会の実現を図ることを目的とする。」

動愛法は、他の法律のように他人に被害を及ぼす行為を禁止するだけでなく、法律の名前の通り『動物愛護』を大切にしているのです。

5 まとめ

以上のように、動愛法は飼い主の責任について規定しています。
しかし、法律の規定にとらわれず、全ての飼い主が動物への愛情を持つことや人と動物の共生する社会を実現する責任があることを自覚してほしいと願っています。


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