設問1
 Yは、本件訴えは固有必要的共同訴訟(民事訴訟法(以下省略)40条参照。)であり、X1死亡により当事者を欠いているため却下されるべきと主張している。X2側としては、以下で述べる通り、Aによる受継の申立て(126条以下)をするべきである。
 1 固有必要的共同訴訟該当性
 そもそも、本件訴えは固有必要的共同訴訟であるか。
 (1)規範
 40条は、訴訟の目的について当事者ごとに異なった判断がなされることにより実体法上の権利関係に矛盾が生じることを防ぐ目的で共同訴訟を必要的にするものである。そうであれば、目的物の合一性は、実体法上の権利関係を合一に確定すべきか否かという観点により判断する。
 (2)あてはめ
 X1らは、Yから共同して甲土地の売買契約を締結しているため、甲土地の共有者である。
 たしかに、共有持分権者は、それぞれの持分権に基づき単独でその権利を行使することができる。
 しかし、X1らは、甲土地の共有者全員であるX1とX2で売買契約に基づく所有権移転登記を求めており、これは単独の持分権を主張するものではなく、共有所有権全体の実現を求めるものである。共有所有権全体に関する判断が共有持分権者ごとに異なると実体法上の権利関係に矛盾が生じるため、合一に確定すべきである。
 (3)結論
 よって、本件訴えは固有必要的共同訴訟である。
 2 訴訟の係属
 X1は、本件訴え提起後、訴状送達前に死亡している。それでも当事者間に訴訟係属が生じたといえるか。
 (1)規範
 訴状が被告に送達(98条以下)されることにより二当事者対立構造となり訴訟係属が生じるが、送達時は訴訟行為の積み重ねがないため、訴状に明示された当事者から当事者を判断せざるをえない。
 ここで、訴訟係属後に当事者が死亡した場合、その相続人が訴訟を承継する(124条1項1号)。これは、それまでの訴訟手続きを相続人に承継させることが訴訟経済に適うこと、相手方に対して新たな負担を求めるものではないことから認められるものである。この趣旨は、提訴後訴訟係属前に当事者が死亡した場合であっても同様であるから、このような場合には同号が類推適用されると考える。
 (2)あてはめ
 X1は訴え提起時には生存していたが、Yへの送達前に死亡している。そして、X1の唯一の相続人はAである。
 (3)結論
 よって、X1の地位をAが承継する。
 そのため、Aによる受継の申立てがされればAとの間に訴訟係属が生じ、必要的共同訴訟の当事者を欠くことはなくなるため、本件訴えは却下されない。
設問2
 X1は、前訴判決の既判力により、Zの主張を排斥したい。
 1 115条1項4号
 (1)規範
 同号は、単に請求の目的物を所持するにすぎないは者は、当該目的物に関して固有の利益を有さず手続保障の必要がないため、既判力を及ぼすものである。この趣旨は、名義上の権利者となっていても実質的な権利を有しない者にも及ぶため、このような者に対しては同号が類推適用されると考える。
 (2)あてはめ
 Zは、甲土地の登記簿上の名義人であるが、原因行為であるBZ間の売買契約は虚偽表示により無効である(民法94条1項)。そうであれば、Zは甲土地の登記簿上の権利者であるが実質的にはその所有権を有していないといえる。
 (3)小括
 したがって、Zに対して115条1項4号が類推適用される。
 2 結論
 よって、既判力により、Zは、後訴において、前訴で認定されたX1らとYとの間の売買契約の成立と反する事実の主張は認められない。  以上

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