第1 〔設問1〕
 1 小問(1)
  (1) 請求原因②について
   ア 本件連帯保証契約書について
 契約書は、真正に成立したことが証明されれば、契約書記載通りの契約が成立したことを証明する性質を有する(処分証書)。
 本件連帯保証契約書は処分証書であり、XB間における保証契約の締結が直接推認される。
 したがって、直接証拠としての意味を有する。
   イ Bの印章による印影が検出されていることについて
 私文書は、本人又は代理人の署名又は押印があれば、真正に成立したものと推定される(民事訴訟法(以下省略)228条4項)。また、印章は、通常、他人に渡すということが考えられないため、本人又は代理人の印象があれば、自らの意思に基づく押印であると推定される(二段の推定)。
 上述の通り、本件連帯保証契約書は、直接証拠としての意味を有している。Bによる印象が検出されていることにより、本件連帯保証契約書の真正な成立が推定される。そうであれば、直接証拠の証拠価値を高めるも補助事実といえるから、補助証拠としての意味を有する。
  (2) 請求原因③について
   ア 本件連帯保証契約書について
 請求原因③は、代理権の発生原因事実であり、契約書の真正な成立により契約の成立を立証するものではない。
 これは、Bの印影のある本件保証契約書をAが持参してきたことをもって、AがBから代理権を授与されたことを推認する事実(間接事実)となる。
 したがって、間接証拠としての意義を有する。
   イ Bの印章による印影が検出されていることについて
 Bの印影により二段の推定を働かせても、証明できるのは請求原因②に関する事実であり、請求原因③とは関係ない。
 これは、契約書にBの印影があることから、Bが自らBの印章を押し、その契約書をAが持参したことによって、AがBから代理権を授与されたことを推認する事実(間接事実)である。
 したがって、間接事実としての意義を有する。
 2 小問(2)
 Bの見解の根拠となっている判例は、契約締結が当事者本人によってなされたとしても、代理人によってなされたとしても、いずれにせよ相手方と本人との間で契約が成立する結果になることを理由に弁論主義に反しないとする。
 しかし、以下の理由から、弁論主義に反すると考える。
  (1) 弁論主義
 弁論主義とは、主張及び証拠収集を当事者の権能かつ義務とする裁判所との役割分担である。法律解釈及び証拠の評価は裁判所の役割(自由心証主義、247条)であるから、弁論主義の対象は、主要事実であると考える。
 したがって、要件事実が異なる場合は弁論主義に反すると考える。
  (2) 要件事実
   ア 契約の締結が当事者本人によってされた場合、相手方と本人との契約締結の事実が要件事実となる。
   イ 他方、代理は、契約は当事者間で成立するという原則の例外(民法99条)であるから、例外である事実によって利益を受ける側に立証責任がある(法律要件分類説)。
 したがって、①代理行為の存在、②顕名、③代理権の存在を立証する必要がある。
   ウ よって、要件事実は異なる。
  (3) 結論
 以上により、請求原因を追加しないで代理人として保証契約を締結したと認定することは弁論主義に反するため、Pの見解には問題がある。
第2 〔設問2〕
 Bは、Cに訴訟告知(53条1項)をし、Cは「参加することができた」にもかかわらず欠席しているとして、参加的効力により①、②の事実を否認することは許されないと主張する。
 これに対し、Cからは以下の反論が考えられる。
 1 「参加することができた」とはいえないこと
  (1) 訴訟告知がなされたとしても、被告知者は、告知者の訴訟する行為と抵触する行為はできない(45条)。 また、相手方に参加する可能性もある。このような場合でも参加的効力を及ぼすのは不当である。
 そこで、告知者と被告知者の攻撃防御が同一で、被告知者の参加を期待しても不当でない場合に「参加することができた」に該当すると考える。
  (2) Bは民法110条の責任を問われ、基本代理権の授与の事実は認めているが、その他の事実は否認している。
 他方、Cは民法117条の責任を問われており、責任を否定するには、Bから有効な代理権を与えられたことを立証する必要がある。
 そうであれば、BとCの攻撃防御は対立するから、Cに参加を期待することはできない。
  (3) したがって、「参加することができた」とはいえないから、Cに訴訟告知の効力は及ばないため、①、②の両事実とも否認できる。
  (4) 仮に「参加することができた」といえたとしても、さらにCから以下の反論が考えられる。
 2 訴訟告知の効力の範囲
 Cは、参加的効力は主文に関する判断にしか生じないと反論する。
 しかし、参加的効力は、敗訴責任の分担という趣旨から認められるものであり、理由中の判断にも及ぶ。
 3 理由中の判断に含まれないこと
 表見代理は、(ⅰ)代理行為の存在、(ⅱ)基本代理権の存在、(ⅲ)顕名、(ⅳ)代理権があると信ずべき正当な理由がある場合に成立する。
  (1) ①の、CがXとの間で保証契約を締結した事実は、(ⅰ)により理由中の判断に含まれているから、参加的効力は及ぶため、否認することはできない。
  (2) しかし、②の事実は上記の理由中判断に含まれないから、参加的効力が及ばず、否認することができる。
 表見代理は、代理権がない場合に成立するものではなく、代理権の立証が困難な場合にも成立を主張する。したがって、CがBから代理権を授与されたことはなかったという事実は理由中の判断に含まれない。
 したがって、②の事実については否認することができる。
第3 〔設問3〕
 1 ①について
 Cのみが控訴した場合、XB間の訴訟は控訴審における審判の対象となるか。
 同時審判申出共同訴訟(41条1項)は、訴訟における両負けを防ぐため、併合審理が強制される。しかし、実体法上管理処分権が一つであることを理由に合一確定が要求される必要的共同訴訟(40条1項)とは異なり、事実上の矛盾判決を防ぐという申立人の利益を図るものである。したがって、通常共同訴訟であるから、公訴不可分の原則は適用されず、XB間の訴訟は控訴審における審判の対象とはならない。
 したがって、控訴審において、XがCに敗訴した場合、両負けが生ずる。
 しかし、これは、XがXB間の訴訟について控訴できたにもかかわらず控訴しなかったことにより、合一確定の利益を自ら放棄した結果ともいえるため、不当ではない。
 2 ②について
 C及びXが控訴した場合、それぞれの訴訟が控訴審における審判の対象となり、併合審理となる(41条3項)。したがって、両負けを避けることができる。
 ①の場合と異なり、Xが自ら控訴したことにより、合一確定の利益を放棄したとは評価できないからである。  以上

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