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動画編集におけるGPUの役割とは?初心者にも分かる徹底ガイド


はじめに

 動画編集を始める際、多くの人がどんなパソコンや機材が必要かを調べます。その中で「GPU」という言葉を目にすることが多いかもしれません。GPUはグラフィック処理を専門とするコンピュータパーツであり、動画編集やゲーム制作、3Dモデリングなど、映像に関する作業では欠かせない存在です。特に動画編集では、エフェクトの適用や高解像度の動画のスムーズな編集において、GPUの性能が作業効率を大きく左右します

しかし、GPUは種類も多く、性能も用途によって異なるため、どれを選べば良いのか迷ってしまうこともあるでしょう。さらに、近年ではAppleのMacBookシリーズがAppleシリコンという独自のGPUを搭載し、他のGPUとどう違うのかが気になる方も多いのではないでしょうか。

本記事では、動画編集におけるGPUの役割とその重要性、さらにはMacBookを含むさまざまなGPUの種類について詳しく解説します。これを読むことで、自分に最適なGPUを見つけるための知識を得ることができるでしょう。動画編集を始めたばかりの方から、より効率的に作業を進めたいと考えている方まで、幅広い読者に役立つ内容となっています。さっそく、GPUとは何か、そしてどのように動画編集をサポートしてくれるのかを見ていきましょう。


1 GPUとは何か?

 GPU(Graphics Processing Unit)は、画像処理や映像レンダリングなどを高速で行うために設計されたプロセッサです。元々はゲームや3Dグラフィックスの描画を行うために開発されましたが、近年では動画編集やAI計算など、多岐にわたる用途で利用されています。近年注目度が急速に上がっている生成AIでもよく使用されています。

1.1 CPUとの違い

  • CPU(Central Processing Unit)は、パソコンの「頭脳」に相当し、あらゆる計算処理を行う汎用プロセッサです。

  • GPUは、膨大なデータを並列処理することに特化しており、大量のピクセル処理やエフェクト計算などを効率的に行います。

1.2 動画編集での役割

動画編集では、タイムラインのプレビューやエフェクトの適用、カラーグレーディングなど、多くのプロセスでGPUが活躍します。AdobePremiereProをはじめとする動画編集ソフトの多くがGPUアクセラレーション機能を搭載しており、GPUがあることで作業スピードが大幅に向上します。

1.3 並列処理の強み

GPUは数千ものコアを持ち、それぞれが並列して処理を行うため、複雑なタスクを同時に実行できます。この並列処理能力が、動画編集における高速なレンダリングやプレビュー再生を可能にしています。

CPUは、パソコン全体は指示を出し、さまざまな作業をこなす頭脳のような存在です。GPUは、映像や画像の処理を専門とする部分で、大量のデータを一度に計算するのが得意です。簡単に言えば、CPUは「何でも屋さん」GPUは「映像処理のプロ」です。


2 GPUの動画編集における役割とは?

 GPUは、主に映像や画像の処理を担当するコンポーネントです。上述したように、CPU(中央処理装置)がシステム全体の計算を処理するのに対し、GPUは並列処理に特化しており、大量のピクセルデータや映像フレームを同時に処理できます。この特性により、動画編集では以下のような場面で大きな効果を発揮します。

2.1 プレビューの滑らかさ向上

編集ソフト上での映像プレビューがスムーズになります。GPU非搭載のPCでプレビューした場合、映像がカクついて上手く再生できないということも多々あります。こういった場合にGPUの力があれば、高解像度(4Kや8K)の動画でもカクつきが少なくなり、リアルタイムプレビューが可能になります。

2.2 エンコード・レンダリングの高速化

編集後の動画を書き出す際、GPUはエンコード処理をサポートします。特にCUDAやOpenCLに対応したGPUを使用すれば、書き出し時間を大幅に短縮できます。エンコードがはやくなれば別の編集作業に費やせる時間もその分増えますので、結果的に効率よく稼げるようになります。

2.3 エフェクトやトランジションの適用

ボケ(ブラー)や色調補正、エフェクトのプレビューがGPUによってリアルタイムで行いやすくなり、作業の効率が向上します。エフェクトを入れれば入れるほどGPUの有効性は顕著にあらわれるので、凝った編集がしたいのであればGPU搭載は必須と言えるでしょう。


3 GPUがない場合のデメリット

動画編集はGPUなしでも行えますが、その場合、以下のような問題が発生する可能性があります。

3.1 作業スピードの低下

GPUがない場合、CPUだけで映像処理を行うため、プレビューがカクカクする、レンダリング時間が極端に長いといったストレスを感じることがあります。

3.2 高解像度の動画編集が困難

4Kや8Kの動画編集では、GPUなしでは実質的に編集作業が不可能に近い場合があります。

3.3 複雑なエフェクトに対応できない

映像美を追求したエフェクトやトランジションのリアルタイムプレビューが困難になり、効率的な作業ができなくなります。


4 動画編集向けのGPU選びのポイント

4.1 VRAM(GPUメモリ)の容量
VRAMは、GPU専用のメモリで、映像や画像を一時的に保存し、処理を高速化するために使われます。動画編集では、4GB以上のVRAMが推奨されます。特に高解像度映像を扱う場合や複数のエフェクトを適用する場合には、6GB以上が望ましいです。

4.2 CUDAコアやストリームプロセッサの数
CUDAコア(NVIDIA)やストリームプロセッサ(AMD)は、GPU内で並列処理を行う小さな演算ユニットです。これらが多いほど、グラフィック処理や動画編集の高速化に効果を発揮します。これが多いほど、並列処理が速くなります。

4.3 編集ソフトとの相性
Adobe Premiere ProやDaVinci Resolveなど、主要な編集ソフトはGPUの種類によって性能差があります。事前に対応GPUを確認しましょう。

4.4 予算とのバランス
高性能なGPUほど価格も高くなりますが、ミドルスペックのGPUでも十分に快適な編集環境を構築できることが多いです。


5 よく選ばれるGPUまとめ

 GPUには様々なシリーズとモデルが存在し、それぞれ性能や用途に応じて選ぶことができます。以下に代表的なシリーズとその特徴を詳しく解説します。


5.1 NVIDIAのGPUシリーズ

NVIDIAは、ゲーム、クリエイティブ作業、生成AIなど幅広い用途向けのGPUを提供しています。主に以下のシリーズがあります。

5.11 GeForceシリーズ(一般ユーザー向け)

  • 主にゲームプレイや一般的なクリエイティブ作業を目的としたGPU。

  • 動画編集者にも適しており、CUDAコアによるGPUアクセラレーションを利用可能。

  • 代表的なモデル:

    • GeForce RTX 40シリーズ(最新世代)

      • RTX 4090, RTX 4080, RTX 4070, RTX 4060など。

      • 高性能で、レイトレーシング(光線追跡)やNVIDIAの新技術DLSS(AIによる高解像度化技術)に対応。

    • GeForce RTX 30シリーズ(前世代)

      • RTX 3090, RTX 3080, RTX 3070, RTX 3060など。

      • 動画編集や3Dレンダリングにも十分な性能。

    • GeForce GTXシリーズ

      • GTX 1660 SUPERやGTX 1050など。

      • 予算を抑えたい場合の選択肢。RTXシリーズと比較するとレイトレーシングやDLSSは非対応。

5.12 Quadroシリーズ(プロフェッショナル向け)

  • CAD、CG制作、映像制作などの業務用途向け。

  • 高精度計算が必要なクリエイターやデザイナー向け。

  • 現在は「NVIDIA RTX Aシリーズ」に統一されつつある。

    • NVIDIA RTX A6000(最高クラスの性能)

    • NVIDIA RTX A4000, A2000(ミドルレンジ)

5.13 Titanシリーズ

  • ゲームとプロフェッショナル用途の両方をカバー。

  • Titan RTXなどが存在し、非常に高価格だが多用途向け。


5.2 AMDのGPUシリーズ

AMDは、ゲームやクリエイティブ作業用のGPUを提供する一方、価格競争力が高い点が特徴です。以下が主なシリーズです。

5.21 Radeon RXシリーズ(一般ユーザー向け)

  • ゲームやクリエイティブ用途を主にカバー。

  • 性能と価格のバランスが良い。

  • 代表的なモデル:

    • Radeon RX 7000シリーズ(最新世代)

      • RX 7900 XTX, RX 7900 XTなど。

      • RDNA 3アーキテクチャを採用し、4K編集や高負荷作業にも対応。

    • Radeon RX 6000シリーズ(前世代)

      • RX 6800, RX 6700 XT, RX 6600など。

      • 動画編集にも十分対応可能。

    • Radeon RX 5000シリーズ

      • RX 5700 XT, RX 5600 XTなど。

      • エントリーレベルでの動画編集に適している。

5.22 Radeon Proシリーズ(プロフェッショナル向け)

  • 高精度な色再現性や安定性が必要な業務用途向け。

  • 代表的なモデル:

    • Radeon Pro W6000シリーズ

      • W6800, W6600など。

      • クリエイターやCGデザイナーに向けた性能。

    • Radeon Pro WXシリーズ

      • WX 9100, WX 7100など。


6 用途別のおすすめ

6.1 動画編集初心者・軽作業

  • NVIDIA:GeForce GTX 1660 SUPER, RTX 3060

  • AMD:Radeon RX 6600, RX 5700 XT

6.2 高解像度映像編集・中級者

  • NVIDIA:RTX 3070, RTX 4060

  • AMD:Radeon RX 6800, RX 6700 XT

6.3 プロフェッショナル用途・4K/8K編集

  • NVIDIA:RTX 4080, RTX 4090, Quadro RTX A4000

  • AMD:Radeon RX 7900 XTX, Radeon Pro W6800

個人的には動画編集初心者であればNVIDIA RTX3060 or RTX4060
中級者であればNVIDIA RTX4070
上級者またはプロであればNVIDIA RTX3080RTX4080以上
が良いと思っています。
価格も大きく変わってきますので、それぞれのGPU搭載のPC価格を見て、ご自身の予算に合わせて選んでいただくのが良いです。


7 MacBookに搭載されているGPU

「MacBookにはGPU搭載されているの?」と疑問に思われている方もいらっしゃると思いますので簡単に説明します。結論から言いますと、MacBookにもGPUが搭載されています。以下に詳細を説明します。

7.1 Appleシリコン搭載MacBook(M1/M2シリーズ)

最近のMacBookは、Apple独自開発のSoC(System on a Chip)を使用しており、CPUとGPUが一体化した構造になっています。以下が特徴です。

  • M1チップシリーズ(M1、M1 Pro、M1 Max、M1 Ultra)
    GPUコア数はモデルによって異なり、7コアから最大64コア(M1 Ultraの場合)まであります。これにより、グラフィック処理能力が大幅に向上しています。

  • M2チップシリーズ(M2、M2 Pro、M2 Max、M2 Ultra)
    GPUコア数がさらに強化され、最大76コア(M2 Ultraの場合)を搭載するモデルもあります。動画編集や3Dレンダリングでも高いパフォーマンスを発揮します。

同様にM3、M4と数字が大きくなるにつれて性能は上昇します。2024年12月現在ではM4が最上位モデルです。

7.2 インテル搭載MacBook

インテルプロセッサを搭載していた以前のMacBookには、以下のようなGPUが搭載されていました。

  • 内蔵GPU(Intel Iris Plus Graphicsなど)
    日常作業や軽い編集には十分ですが、重いグラフィック処理には限界があります。

  • 専用GPU(AMD Radeon Proシリーズ)
    一部の高性能モデル(MacBook Pro 16インチなど)には、AMD Radeon Pro 5300M、5500M、5600Mなどが搭載されていました。

7.3 GPU性能のポイント

  • AppleシリコンのGPUは専用GPUを必要としないほど高性能であり、動画編集アプリ(Final Cut Pro、DaVinci Resolveなど)との最適化がされています。

  • 専用GPU(AMD Radeon Pro等)を搭載している旧型モデルは、グラフィック処理が必要な作業に強いものの、Appleシリコンの登場で徐々に主流から外れています。


8 GPUを活用する編集環境の構築

GPUを導入しても、ソフトウェアや設定が最適化されていなければ性能を十分に発揮できません。以下のポイントも押さえておきましょう。

  • 編集ソフトのGPUアクセラレーションを有効化
    多くの編集ソフトには、GPUを活用する設定があります。この設定をオンにすることで、プレビューやエンコードの高速化が可能です。AdobePremiereProでは画面左上の「ファイル⇒プロジェクト設定⇒一般⇒レンダラーをGPU高速処理(CUDA)」を設定しておきましょう。(以下参照)

  • 最新のドライバーをインストール
    GPUの性能を最大限に引き出すために、メーカーが提供する最新のドライバーをインストールしておきましょう。


まとめ

 この記事では動画編集におけるGPUの役割と重要性についてお伝えしてきました。GPUは、映像処理に特化したハードウェアであり、高解像度動画の編集やエフェクトの適用、プレビューのスムーズさに大きな影響を与えます。作業効率を大幅に向上させ、ストレスのない編集環境を作り出すために、適切なGPUを選ぶことが重要です。

NVIDIAやAMDのGPUは、それぞれが得意とする分野や性能が異なります。NVIDIAのGeForceシリーズは、手頃な価格帯から高性能モデルまで幅広い選択肢を提供しており、特にCUDAコアを活用する動画編集ソフトとの相性が抜群です。一方で、AMDのRadeonシリーズはコストパフォーマンスの高さと、OpenCLを利用するソフトとの親和性で注目されています。また、Appleシリコン搭載のMacBookは、独自のGPUアーキテクチャにより、ハードウェアとソフトウェアの最適化が進んでおり、軽量で持ち運びやすいデバイスとして高い評価を得ています。

しかし、最適なGPUを選ぶには、自分がどの程度の作業を行うのかどのソフトを使用するのかといった具体的なニーズを見極めることが大切です。また、GPUだけでなく、CPUやメモリ、ストレージの性能もバランスよく揃えることで、より快適な編集環境を構築できます。

最後に、GPUは動画編集の効率を高めるための強力なツールですが、必ずしも最高性能のGPUが必要なわけではありません。自分に合った選択をすることで、コストを抑えながら、満足のいく編集環境を手に入れることができます。本記事が、GPU選びに悩む動画編集者の方々にとって役立つ情報となれば幸いです。自由で楽しい動画編集の世界を、ぜひ最適な環境で楽しんでください!

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