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甚く感動した着物「辻が花」

母から譲り受けた着物を順番に虫干ししていて

まだまだ引き出しに目一杯入っているウールの着物を9月いっぱいに干し終わるのか?ってところで止まっていましたけど、1度に3着を1〜2日干す感じで進みまして、10月末やっと全ての着物の虫干しが終わりました。

秋冬物全てを終えてから最後のしめとして干そうと決めていた、訪問着を広げた時のことです。

明らかに別格な雰囲気の、所々に絞り、手描きと思われる図柄があしらわれたとても上品なデザインで、おくみ( 左右の前身頃に衿から裾まで縫い付けられた細長い半幅の布)に落款が入っていましてね。

翠山??

落款で作者や製作工房を特定できるので、この落款を調べてみると、『翠山工房すいざんこうぼう』の着物であることがわかりました。

翠山工房は、新潟県十日町市にある『株式会社桐屋とうや』が持つ、着物の染め技法「辻が花」を用いた着物を創作している工房です。
桐屋は、約400年前の江戸時代(西暦1624年〜1645年)の創業とされる老舗の着物メーカーで、桐屋の五代目が明治時代に『翠山工房』を開きました。
全行程を越後十日町市の産地にて一貫して行う翠山のオリジナルブランド「翠山 辻が花」の染め技法が特徴で、熟練した職人による手仕事にこだわって作り続けられています。

辻が花」とは、 " 縫〆絞りを主たる技法とした絵模様染め " のことをいい、室町末期から桃山時代にかけて大流行しました。
この時代は武家の文化が栄え、絵画や文様の需要が高まっている中で辻ヶ花が誕生し多くの人々に親しまれ、「染物といえば辻が花」といわれるほど一般的なものでした。
武将や上層階級も辻が花を好んで着用していたそうですが、その時代を過ぎると突如世間から姿を消します。
「友禅染め」の出現など、時代背景によって次第に人々が着なくなり、作り手が減少して技術を伝承する者がいなくなってしまったことが原因ともいわれていますが、真偽は定かではありません。
辻が花は、発生時期、加工法、名称の由来などが深い謎に包まれていて、「幻の染色」「幻の花・辻が花」といわれるようになりました。

江戸時代初期で途絶えた「辻が花」を再び世に送り出したのが「翠山工房」です。
元々は織物業でしたが、昭和に入り染めへと転換しました。
昭和50年代、辻が花に魅せられた職人たちでプロジェクトチームを発足し、約1年の月日をかけて昭和54年の春に翠山工房謹製辻が花訪問着の完成に至りました。
2019年1月、桐屋 ( 翠山工房 ) は倒産となり、同年4月から株式会社翠山として伝統を引き継いでいます。

現代において、伝統的な辻が花を当時の技術で完全に再現することは不可能といわれていて、現在の絞り染めで制作する辻が花は、全て独自の技法を発展させたものだそうです。
時代とともに技術も進化して、より複雑で細かい表現が可能になり辻が花の模様もさらに繊細で豪華なものへと変化していきました。
現代では、伝統的な技法を受け継ぎながら新しい表現方法を採用し、古典柄からモダンなものまで、デザインは多岐にわたっています。


絞り染めや手描き、刺繍など、伝統的な技法を用いて美しく表現されている『辻が花』というものを、はじめて知りました。
母から譲り受けた辻が花はこんな模様で

八掛にも同じ柄が描かれています。

本当に素晴らしくて、しばらくの間見入ってしまいましたよ。
おそらく、1990年前後のものだと思います。

これが、なんと、しつけ糸がついたままっていうね。

しかも、シミが、あちこちに。

すごくショック。
虫干ししていなかった結果がコレです。

母の桐箪笥の中は、未着用&未使用の宝庫でしたからね。

母に伝えには行ったんですよ。
「お母さん、あれ、辻ヶ花だったよ」と。
すると母は、
「辻ヶ花?聞いたことあるけど、着た覚えがないね〜」

そりゃそうだ。
しつけ、ついたまんまなんだからさ。

どうやら、広げたこともなかったそうです。

おそらく、祖母が母のためにあつらえて持って来たものを中身もろくに見ずにそのまま箪笥にしまってウン十年、っていうやつだと思います。

もう、ビックリ。

実は、色違いでもう1着あるんですよ。

白地に上品な色味の紫とピンク、美しい墨の線、絞りの技巧によって所々立体的になっている模様がこれまた美しくて、見れば見るほど丁寧な仕事に心底感動してしまいました。

【辻が花の絵絞り】
伝統的な絞り染めには、下絵を描かずに生地を結んでいく「絞り」という技法があり、絵絞りは下絵を描いてから絞り染めと本染めを行うという工程からこう呼ばれるようになりました。

京都きもの市場「きものと」コラムより


訪問着は、縫い目にまたがって模様が描かれる「絵羽模様」の着物で、ドレスと同じ感覚で着られるため、あらたまった席やパーティーなんかで着るものなんですけど、「果たしてそんな機会はあるのか?」と考えてしまいましたが、近いうちに試着はしようと思っています。

まだまだ未着用のあわせの着物があるので、その後になりますけどね。

そもそも、夏着物の試着が終わったところなんです。
虫干しと同時にちょいちょい着ていたんですけど、やっと全てに袖を通すことができました。

暑いので、1枚でも枚数を減らそうと、『美容衿』なるものをはじめて使ってみましたよ。

" 襦袢を着ていないのに着ているように見える " っていう、肌着の上に装着出来る衿だけのアイテムのことです。
洗濯も出来るし、色半衿も縫い付けて自分の好みにアレンジ可能、っていうので付けてみたんですけど

ん〜〜〜。
ちょいと、分厚い。
元々がしっかりした作りなので衿芯も入れていないんですけど、厚みが出てしまってこれだと暑苦しく感じます。
何も縫い付けないで使う方が良さそうですね。

これ ↓ は浴衣なんですけど、着物風に着るために美容衿をそのまんま使ってみたところ

スッキリおさまりました。
お手軽アイテムは是非活用していきたいので、一度気に入った布で美容衿を手作りしてみて良ければ量産しようと思います。

やっと肌寒い日が訪れるようになってきて、袷の着物の出番になりそうです。
今後の天気予報を見ると、20度超えの日がまだチラホラありそうですが、頃合いを見ながら未着用の袷に袖を通したいと思います。



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アユミ@絵描き
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