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動画生成AIは「それっぽいシーンの寄せ集め」映像しか作れないのか?/個人・自主制作領域での「クリエイティブ革命」/ Blog - 2025/01/09

現在の動画生成AIは「それっぽいシーンの寄せ集め」映像しか作れないのか?

映像作品にはテーマやコンセプトが強く反映されています。
伝えたいメッセージを映像技法や構成によって際立たせるためには、一貫した意図に基づくシーンのカメラワークや色彩設計、演出が欠かせません。
つまり「見た目がそれっぽい」だけではなく、作品全体としての意味・文脈づけが必要になります。

現在の動画生成AIはコンセプトやテーマに沿って体系的に繋げることができません。
学習データに合致した“統計的にもっともらしい”映像を生成するだけです。これが“ハルシネーション”と呼ばれる現象につながり、意図しないモチーフや形状・色彩の「嘘」が、作品のメッセージを毀損してしまうのです。

現状の動画生成AIは「統計的にそれっぽい」映像を大量に生成することは得意ですが、コンセプトや深い文脈を正確に反映して作ることはできません。

ですから、映像制作で動画生成AIを活用する場合、Bロールや素材として使用することしかできないわけです。

現在、動画生成AIで作られる多くの商業作品は、それっぽいシーンの寄せ集めを許容できるミュージックビデオやウェブ動画広告です。
本格的なドラマはまだ存在しません(制作することが困難です)。


現在の動画生成AIの活用範囲:

アイデアブレスト:
様々なビジュアルイメージ(断片)を大量かつ短時間で生成できますので、コンセプトの初期段階でのイメージ探しに利用できます。

リファレンス素材の生成:
撮影や制作に入る前に、作品世界のムードボード代わりとして、生成AIによる大量の“それっぽい”イメージを組み合わせて、ビジュアルの方向性を探ることができます。

エフェクトや部分的装飾として:
生成された抽象的な映像はパーツとして組み込む余地がありますので、エフェクトやトランジションなどで活用できます。

最終的には人間がコンセプトに合致したショットを取捨選択し、再構成する必要がありますので、既存の映像制作と変わりません。


AIが意図した映像を創出する「自動生成」はまだ実現していませんが、クリエイターと生成AIが相互補完関係を築き、より高度な映像体験を生み出す方向へ進化していくことは間違いなさそうです。


「それっぽいシーンの寄せ集め」とは?

作ってみました。
以下のような映像が「それっぽいシーンの寄せ集め」です。

この2つの動画は同時に制作したもので、テキストプロンプトだけで生成されています(Text to Video です)。
動画生成AIは、OpenAI SoraでKLING v1.6も少し使用しています(90%以上はSoraによる生成)。

日本人バージョン:

  • 再生時間:75秒

  • 楽曲生成:Suno AI v4 /ビデオ生成:OpenAI Sora, KLING v1.6

ムービーバージョン:

  • 再生時間:67秒

  • 楽曲生成:Suno AI v4 /ビデオ生成:OpenAI Sora, KLING v1.6

動画生成AIがサービス化されたのは2023年3月ですが、Text to VideoおよびImage to Videoが使えるようになったのは6月以降です。
まだ「1年半」しか経っていない技術がここまで表現できるようになったのは驚きです。

この2つの動画は空き時間を使って、約2〜3時間程度で完成。
恐ろしいですね。来年の今頃はどうなっているのでしょう。
動画生成AIのビジネスを避けている理由が理解できると思います(自分のオリジナリティを強固なものにするために生成AIを駆使しないといけません)。


現在の動画生成AIの使いどころについて、まとめておきます。

画像生成・動画生成AIは「それっぽいイメージを無限に生成できる天才」なので、大量に生成すれば、類似する生成画像・動画を分類しながら、高度な組み合わせが可能になります。

ミュージックビデオの場合:

ミュージックビデオやコマーシャルは、ストーリーの厳密な連続性・整合性よりも、短い尺の中で「印象的・刺激的なビジュアル」を重視する傾向が強い分野です。

MVなら音楽と連動したリズム、テンポ、色彩・構図の派手さが重要となり、CMの場合は商品やブランドイメージを視聴者の脳裏に焼き付けるための強烈なビジュアルインパクトが求められます。

ただし、クリエイターのディレクション能力や、生成カットから必要部分を選び抜き再構成する編集力が必須ですから、プロフェッショナルほど有利です。


個人・自主制作領域での「クリエイティブ革命」

インディーズの映像作家や小規模スタジオにとって動画生成AIは研究すべき技術だといえるでしょう。
アイデアやコンセプトにフォーカスした実験的な作品を、個人クリエイターが手軽に試せる環境が整いつつあります。小規模ながらも独創的な映像表現が次々と生まれてくるはずです。

ニッチなテーマや個人的な趣味の領域などにも大量の映像コンテンツ出てくる可能性があります。大きな市場での競合だけでなく、小さなコミュニティに向けた専門的なコンテンツが多数登場し、多様化するでしょう。

ただ、敷居が下がることで参入者が急増し、競争が激化するのも同時に起こる現象です。また、大企業や広告代理店などの大手プレイヤーも、AIを活用して更なる効率化を狙っていますので、大衆路線は避ける等の戦略が重要になります。


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更新日:2025年1月9日(木)/公開日:2025年1月9日(木)

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