テンプレート生成AIでポスターを作成 - Blog 2023/10/25 デザイン生成AIの未来
「プロではない人」向けのデザイン制作ツール
誰でも使用可能な商用の生成AIが登場して1年、文章生成、画像生成、動画生成などの技術が既存のアプリやサービスに実装され始めています。
今回は「デザインテンプレート生成」という新しい生成AIサービスについて取り上げます。
まず、デザインテンプレート生成AIとは、どのようなものか以下の短い動画(58秒)でご確認ください。
テキストプロンプトを入力して、ポスターのベースを生成し、テキストやビジュアルを構成する要素をグラフィック機能や画像生成AIなどを活用しながら編集していくデザインワークのダイジェストです。
重要なのは、このサービスは「プロではない人」(つまりコンシューマー向け)であり、デザインの知識やスキルを持っていない人たちが使うツールだということです。
再生時間(58秒):
今月10〜12日、ロスアンゼルスで開催されたAdobe MAX 2023で3つの生成AIモデル「Adobe Firefly Image 2 Model」、「Adobe Firefly Vector Model」、「Adobe Firefly Design Model」が発表されました。
Adobe Firefly Image 2 ModelとAdobe Firefly Vector Model(イラレの生成AI)はこのnoteで詳細に紹介していますので割愛します。
3つの生成AIモデル
Adobe Firefly Image 2 Model
Adobe Firefly Vector Model
Adobe Firefly Design Model
Adobe Expressの新機能「テキストからテンプレート生成 (Beta)」
今回ご紹介したいのは3番目の生成AIモデル「Adobe Firefly Design Model」です。Adobe Expressのベータ機能として公開され、誰でも使用可能になっています。
※まだ日本語に対応していません(2023年10月現在)
Adobe Expressのホーム画面に「テキストからテンプレート生成(Beta)」のプロンプト入力ボックスがあります。
このページの冒頭に掲載されている映画ポスターの英語のプロンプトは以下のとおりです。
プロンプト:
「テキストからテンプレート生成(Beta)」は、入力されたプロンプトの内容に沿って、文章や被写体、背景などを自動生成していきます。
文章はAzure Open AIで生成
被写体などはAdobe Fireflyで生成
背景やその他はAdobeが権利処理した画像
※Adobe Stockのイメージを含むテンプレートが生成された場合は、開いた後にエディタで確認することができます。
参考:Text to Template User Guidelines
Text(generated by Azure Open AI) and Adobe Firefly generated imagery are your content, subject to theGenerative AI User Guidelines.
Background and design elementsare Content Files that are licensed for your use under your agreement with Adobe.
Adobe Stock imagery* is provided to you under either a standard license or limited license subject to theAdobe Stock use restrictions.
冒頭の動画を見て作業全体の流れは把握できたと思いますが、一部のビジュアル要素は、私がAdobe Expressの生成AI(Firefly)を使用して追加しています。
繰り返しになりますが、Adobe Expressはコンシューマー向けの製品であり、「デザインの民主化」を掲げているCanvaと競合する「プロではない、あらゆる人」のためのデザインツールです。
Adobe ExpressやCanvaなどのデザインストア形式のサービスには、膨大な数のデザインテンプレートが提供されていますが、意図したイメージに近いテンプレートを探すことが難しくなっており、「利用者の要望を聞いて、最適なデザインテンプレートを生成する」機能はそれらの問題を解決します。
生成されるデザインに使用されているビジュアル要素は、Adobe Fireflyによる生成画像やAdobe Stockの素材が使用されるため、安全に商用利用できることも大きな利点だと言えます。
このデザインテンプレート生成はまだベータ機能で、日本語にも対応しておらず、現時点で詳細な検証はできませんが、今後「デザインの民主化」はさらに拡大し、素人のデザインレベル向上が期待できます。
プロフェショナル領域での影響
今回のデザインテンプレート生成は、プロ向けの機能ではないため、プロフェッショナル領域での直接的な影響は小さいと思いますが、今後の技術進化によって状況が大きく変化していく可能性があります。
現実的な視点からの予測と、その影響に対する危機感を含んだ分析です。
価格の下落:
生成AIを安易に利用する業者の増加により、例えば、相場が10万円だった仕事が3万円程度で提供されるようになる可能性が高く、生計を立てるための収益モデルが大きく変わる恐れがあります。質の時代:
高付加価値の仕事を増やすことで競争を回避する必要があります。技術の進歩により簡易的なデザインが生成AIに取って代わられる中で、デザイナーが提供できる独自性や創造性をより強調する時代への移行を意味します。業務の多様化:
デザイナーは、ブランディング、マーケティング、戦略立案などの領域でも活躍することで、より多岐にわたる価値を提供することを求められます。中間者の排除:
クライアントが直接生成AIを利用することで、デザイン会社などを通さない取引が増える可能性も考えられます。これは、デザイナーとしての役割がコンサルタントやストラテジストへとシフトすることを示唆しています。
技術の進歩は止めることはできませんが、その変化にどのように適応し、新しい価値を提供するかが、これからのデザイナーの生存戦略となるでしょう。
更新日:2023年10月25日(水)/公開日:2023年10月25日(水)