共創型イノベーション
こんにちは。
2020年4月より
武蔵野美術大学 大学院 造形構想研究科 造形構想専攻クリエイティブリーダシップコースに通っています。
私の学科では「クリエイティブリーダーシップ持論」という授業があり、
毎週クリエイティブとビジネスを活用して実際に活躍されているゲスト講師をお招きし、お話を伺います。
あくまで講義のレポートではありますが、デザイン思考などを学び、実践している方々との繋がりや、情報の共有が少しでもできれば嬉しいなと思います。
武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科 クリエイティブリーダシップコース クリエイティブリーダシップ特論 第5回【講義日】2020年6月15日(月)
今回は 産総研の江渡浩一郎さんにお話を伺いました。
江渡さんはメディアアーティストであり、またニコニコ学会βなどをはじめとしたさまざまな共創のプロジェクトを主導されています。
ニコニコ学会β
ニコニコ学会βは、2011年から5年間限定で開催されたユーザー参加型の学会です。
人に愛される学会を作りたいという想いの元に作られたそう。
従来から研究を推進してきたアカデミアとビジネスに加え、プロとアマの区別なく、ユーザーの参加による研究の世界を作り上げられました。
インターネット放送に適した新しい研究発表スタイルが生み出され、科学技術コミュニケーションに新展開をもたらすものとなりました。
また、βが付いているのは学会未満の存在であること、ユーザーの参加によって成り立つ学会であることを意味するとのこと。
ユーザーが参加することで出来上がる余白と、毎回どの様な学会が作り上げられるか予測できないワクワク感が素晴らしいデザインだなと感じました。
野生の研究者が発表することができる新しい形の学会は非常に大きな反響を呼び、
グッドデザイン賞ベスト100、アルス・エレクトロニカ賞を受賞されています。
2012年にはGOOD DESIGN賞のページには江渡さんが実際にニコニコ学会βについてご紹介くださっている動画が載っていますので、是非ご覧ください。
共創型イノベーション
江渡さんが何度も仰られていた「共創型イノベーション」という言葉が印象的でした。この「共創型」と「イノベーション」二つについて改めて整理していきたいと思います。
イノベーション
まずこの授業で何度も出てくる重要キーワードの イノベーション について
江渡さんは「一般的なものではないものを一般化すること」と示されていました。
この具体例として、温水洗浄便座を例にご説明くださりました。
元は医療機器として身体的な障害がある人のために生まれた温水洗浄便座でしたが、今ではどのトイレにもこの機能が搭載される様になりました。極端なユーザーの存在をあらかじめ包摂することによって、新しい価値を生んだ例です。
共創型
「共創」で重要なことは、さまざまな視点をもつ多様な人が,「共通善」という1つの共通した目的を持つことと示されていました。
その問題に取り組むために単一のアプローチを設定せず、事前に調整しないで取り組む。それによっていびつなものを生むこともあるが、従来では想像できなかったような光るものが生み出されることがあるとのことでした。
活動を通じて互いに影響を与え合い、そこから新しいものが生み出される。そのようにして、「共にみんなでイノベーションを起こす」ことが共創型イノベーションと示されていました。
皆が同じ頂上を目指しながら、違うルートで山を登っていく様な共創型イノベーションは、根本として頂上に対して各自に強い想いがあることが重要であると感じました。
「何が善いのか?」を各々が真剣に愛を持って考えながら作り上げることは、簡単な様で、意外に出来ていない様に感じました。
最初から完璧なものを想定し生み出すのではなく、何ができるか分からないワクワク感と余白を大切にしながら、真剣に作り上げていく姿勢は全てにおいて重要なことであると強く感じました。