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宇野維正先生考察第三十六段 三原勇希 × 田中宗一郎 POP LIFE: The Podcast aiko回 前半2エピソードの宇野先生編


今回は毎度おなじみのPOP LIFE: The Podcastからの宇野先生の発言をピックアップしていきます。いつもPOP LIFE: The Podcastは4エピソードまとめて更新していますが今回は後半は3週間後配信という特殊な回のようなのでとりあえず前半2エピソードの時点で公開します。

aiko回という事でいつも以上に話題になっているようです。もしかしたら「aikoを語るPODCASTの内容をまとめたnote」だと思って検索して初めて読む方がいるかもしれませんがこのnoteは映画音楽ジャーナリストの宇野維正先生の発言だけを切り取るnoteです。内容をしっかり知りたい方はぜひSpotifyで聴いてください。

では、宇野先生の発言をピックアップしていきます。


#147 aikoの凄さはどうしたって伝えられない? Guests: ぽっぷ(リトルペンギン社)、宇野維正


三原さん「ぽっぷさんは私が奈良で一日警察署長をやった時に〜」
『えっ、その時にパクられて来たんですか?笑』
『ちょうどパクられてた来たみたいな』


タナソー「2012年の元旦にaikoというアーティストの素晴らしさに日本で120万人目ぐらいに気付いたんですよ」
『もっと遅いとおもう。340万人目ぐらいだとおもう』
タナソー「日本において偉大な失敗作を残せるのはaikoと曽我部恵一ぐらい」


『サザンはある時期から失敗作を作れなくなった。逆に言うとある時期までは失敗作を作っていた』
『aikoが偉大な失敗作を作っているというタナソーさんの認識は独特ですよね。僕はそこまで明確にこれが失敗作と言う認識はないかな』
『言い方を語ると作品を作る上での第三者の視点がたまに抜け落ちると言うか決定権を本人が持ってるからこそそうなるんでしょうね。失敗作を作れない人はどっかでストップ掛かるわけだけど、誰もaikoを止められないって状況な訳ですね』
『ちょっと報告させて貰って良いですか?今日、aiko回は難しいって時に、サザンや米津玄師の時も言ったんですが、タナソーさんはそんな事考えるなって言ってたけど、本人が聴いてる可能性があるって言うのが我々の頭によぎるわけじゃないですか。特に人気PODCAST番組だけにね。それこそ、三原さんとか一緒にお仕事した事ありますよね』
『その1998年の宇多田ヒカルって本を書いてあるんですよ。帯に宇多田ヒカル、椎名林檎、aiko、浜崎あゆみ、なんたらかんたらって勝手にやりやがった宇野って奴がいるぞってそう言う話ですね』
『物凄いプライドがある、もっと言うなら嫉妬深い方だと思うので』
『良くタナソーさんが言って僕も同意する批評って言うのは比較から始まりんだよってそう言うあるじゃん。日本の音楽ジャーナリズムって言うのはとにかく比較を回避したがる。それはファンダムに対する刺激も強いし過剰に反応されるリスクもあるって言う中でどういう話になるか分からないけど、まあ僕のやったことは比較ではないんだけど他のアーティストと並べると言うことはなかなか禁断だと思われがち。僕はそこは踏み抜いたというある種の十字架は背負ってるつもりですよ』


『aikoさんが98年デビューからその都度その都度聴いてますが、奥さんも含めて付き合った女性がaikoが好きだったことは一度もない。むしろ何でaikoなんて聴いてるの?みたいなのがずっとあって』


今まで付き合って来た女性は宇多田ヒカルはこの曲良いよねとか椎名林檎は好きだったりとかそう言う事はあるんだけどaikoって地上波とかも出てる、特に初期の頃のイメージ。aikoってだけで偏見を持たれてる。aikoってだけで偏見がある』
『そう世代も違いもあるかも知れない。三原さんやぽっぷさんの世代はないかも知れないけど1985年より前に生まれた層には割とあったりすると思う』
『あと報告と言うのは坂元裕二さん回をやったじゃないですか。これは坂元裕二さんご本人聴かれるだろうなと思って、上手く話せなかったなと思ったらご本人からメールが来ましたよ。凄く楽しいんで聴いてくれたみたいで過去の回も聴いてくれて何の回が面白かったみたいな話をしてくれた。』
『少なくとも桑田さんからも米津さんからも聴いたという声を聴いてないから』
『ちょっと、ホッとしたのよ。こうやって勝手に喋ってても喜んで貰える事があるんだと言う思いを胸に今日は頑張りませんか?と言う話』
『坂元裕二さんってちょっと熱狂的なaikoファンなんですよ』
『花束みたいな恋をしたの素晴らしさは自分の好きな物が画面に映ってない所。おびただしいポップカルチャーの固有名詞やリファレンスがありながらもそれと書き手が直接関係ない。好きなものを作品に載せたりする人ではないと言う話をしたと思うんですけど、一つの証拠ですよね。坂元裕二さんはとにかく本当にaiko好きで、公開されてるんですけどaikoのプレイリストを何個も作ってSpotifyに置いてます』
『Spotifyでaikoが解禁になった日にプレイリストを上げてました。その後、足りなかったのかaiko2、aiko3とあげてます』
『けど僕の知る限り一緒に仕事はした事ないですし多分、カルテットの主題歌を書いた椎名林檎さんとは恐らくどちらも相思相愛のクリエイター何だと思うけど。俺、本当に比較し続けてるなこのところ』
『多分、坂元裕二さんはaikoを主題歌にしてくれとはもちろん言わないし、aikoが主題歌になりましたって言ったら勘弁して、勘弁してくれと言うんじゃないかな好きすぎて。好きなものと一緒になる事が必ずしも幸せではないんですよ』
『他でもないタナソーさんが聴いてなかったもの偏見があったからでしょ』
たまにaikoさんが出てるラジオとか聴くけどやっぱりなんか話の自分と共通言語がなさそうな感じがするよね。永遠の片想い感はありますよ。絶対、話が通じないんだろうなって』
『目が笑ってないんじゃない?恐れ多い感じがする』
タナソー「逢いたいとは思わないもん」
『僕もそう』

『僕も違う意味での偏見は持ってるのかもね。絶対話が合わないとか通じないだろうとか勝手思ってることも含めて。絶対、逢いたくないんだけどそれは恐れ多い』
『あと、凄すぎて怖い。懐に入れる感じが全くしない。タナソーさんの逢いたくないとは近いけどちょっと違うかも知れないな』
『(aikoがタワレコとかで試聴機で自分の曲聴いてる人に普通に声掛けてる事について)出来の悪いドッキリ番組みたいな感じだよね』
『怖い、怖い全てのエピソードが怖いわ』

『はっきり言って俺タナソーさんより全然何度高いからさ。ナキ・ムシの時点で気付いてるんですよ。とんでもない人が来たって。』
『居場所も感度だからさ』
『当時、僕は洋楽の仕事してたんですけど、aikoポニーキャニオンじゃないですか。レコード会社A&Rの人がサンプル盤とかを当時の会社に持ってきてくれるんですけど、本当にaiko好きだったから洋楽だから関係ないんだけどポニーキャニオンの人にaikoの新しいやつって聴けたりしませんか?って言うと「aikoね」ってやばいブツを出すみたいな感じでこっそり貰うみたいなことを頻繁にしていて当時ポニーキャニオンに限らずレコード会社の業界の人と話機会が多いじゃないですか。なんかのきっかけでaiko好きなんですよねと言うとはー、そうでしょ?みたいな感じで音楽業界の中で隠れファンじゃないですけど、aikoのヤバさを共有する秘密結社みたいな物が当時からあったんですよね。そこは共有していてなんとなくユーミンマニアとかにも近かった感じがしたんだよなあ。当時、ユーミンを担当していた人もaiko縛りでカラオケ行きましょうみたいなことを言われた。僕はお酒は飲まないんで結局、社交辞令で行かないんですが』
『ライブにも誘ってもらえるようになって最初に行ったのが武道館で今はどうか分からないですが普通は武道館のライブは一階の一番観やすい座って観られる場所が関係者席になりがちなんですけど、最初に行った時にアリーナの十列目ぐらいで右も左も関係者じゃないですよ。混ぜてある。そうなると当然ライブ始まると立つじゃん。関係者って良くも悪くも座ってるのよ。ファンの人の邪魔になったらいけないしって言うのもあったり。でも、この席だと当然周りみんな立つから立たないといけない。来たんなら全身で私を観て私を感じてって言うこれはすごいなと思った一つのエピソード。そう言うアーティストってなかなかいないからこれは怖い人なんだと思った』
『僕が言ってるのは全部あげるから全部ちょうだいって言う怖さ。このわたしのぜんぶあげるからぜんぶちょうだいみたいな』
『今はどうか分からないけどそれは徹底してんなと思う。そんなアーティスト他にいないから』


『今日の四人は世代の違いもジェンダーの違いもあるじゃないですか。女性がaikoの歌に対してどう思うのかって言うのも、もしかしたら違うかも知れないじゃないですか。今言った全部あげるから全部ちょうだいがプライベートの女性だったら逃げ出すしかないじゃないですか』
三原さん『あげないんですか?」
『そんなの魂吸い取られて終わるもん』

『20代前半までだったらそりゃ全部あげますよ』

『下手に社会人になってaikoなんて摂取しようならね、三日間寝れなくなってこの後ぶっ倒れて会社に行けないみたいな怖さはあるのよ』
『この音楽の本当の意味でのターゲットではないんだなという思いはここ10年ぐらいしてる』
『40ぐらいで恋愛寿命みたいな物を感じて宇多田ヒカルの話でも思ったけどラブソングとどう対峙するのかって言うね。三原さんやぽっぷさんみたいな恋愛年齢真っ盛りの人が聴くaikoとはね』
『ラブソングしか書かないことを揶揄するつもりは全くないんだけど、もちろん優れた作家が同じモチーフを繰り返すって言うのもそうだと思うけど、スターというかパフォーマーってさある種サクリファイスみたいな所あるじゃないですか。aikoは恋愛に従事しちゃったというか芸術的には凄いことだけど、呪縛としてのラブソングを感じざる得ないかな』
『aikoの恋愛ジャンキーって曲があるじゃないですか。あの頃はユーモアも余裕もあったと思うけど今では本当に恋愛ジャンキーになっていった過程だと言う見方も出来なくもないじゃん』
『それは女性に限らず、恋愛に限らずポップスターの構造というのはあるんだよね。大衆と言うか自分のリスナーの欲求に応えていくうちに後戻り出来ない所まで行ってしまう所を少なからず感じるよね』
『メガネでもコンタクトでも裸眼でもないってことね笑』
『ちなみにまた坂元裕二さんの話して良い?実は今日も仕事で会ったんですよ。アルバムどうですか?って聞いたら一曲目が寂しすぎてこの先聴けないって言ってた』

『ばいばーーい。あの曲がアルバムの一曲目って全盛期のマイクタイソンみたいな感じじゃん。カーンってなってボーンと殴るみたいな。』
『アレンジもアイアムザウォラスみたいな感じじゃん。オーラスでしょみたいな。二時間ぐらい体験した後の最後の曲じゃんって』
『泡のような愛だった』からはセルフプロデュースですね』
『全四回の四回目で話すようなことを話しちゃった感じ』


【寸評】

宇野先生のaiko観が分かるなかなか面白い回ですね。aiko観から宇野先生の恋愛観が分かるというどこに需要あるんだ?笑という話ですがなかなか面白いです。aikoを褒めてるのか何なのか分からない発言も多い宇野先生でした。



#148 aiko最新作『どうしたって伝えられないから』を語り倒し、言葉の無力さに燃えつきました Guests: ぽっぷ(リトルペンギン社)、宇野維正




『映画音楽ジャーナリストの宇野維正です』
『今のあれだと楽曲自体のムードもアップな曲じゃないですか。僕は三原さんやぽっぷさんの解釈で良いんだろうなと思う』
『ある時期からaikoってさ。シンガーソングライターの要素を4つに分けるとするとさ。タナソーさんって基本、歌詞聴かないんだって言うじゃん。でも、aikoに関しては歌詞の話するじゃん』
『タナソーさんは自分の中の好きな要素が溢れた時に歌詞にまで興味がいくってことだね』
『シンガーソングライターを大雑把に4つのエレメントに分けると一つは歌詞ですよねlyric。もう一つはコンポーズですよね。三つ目はボーカリゼーション、4つ目はプロダクション、アレンジメント。で、結局、パラメーターがあったとしてaikoは基本ね、aikoに関して毎回僕が言葉を失ってしまって1998年の宇多田ヒカルでも基本的にはあれも失ってる本なんですけど、基本さ、lyricとコンポーズとボーカリゼーションに関しては基本パラメーター振り切ってるんですよ。10点なんですよ。たまにそれが20点だったり30点だったりするけど基本10点なんですよ。だからレビューとかするときってアレンジだとかプロダクションとかそっちのことしか書いてないんだよね。それで僕ちょっと嫌になっちゃったんだよね』
『結局何も書けてないなって言うか。アレンジャーも島田さんって言う初期の型を作った方はいるけど基本、ちょっとずつ変わってて、結局、そこの部分でしか書けてない。何も伝わってないと言うか伝えられない。どうしたって伝えられない。そう言う意味ではアルバム全体についてならともかく磁石についてどう?とか聞かれても良いよね〜しか言えないんだよね』
『僕が全然言い切れない思いを常に抱えるって言う流れが言うなら今回アレンジャーのトオミヨウさんが入ってきて良くなった。もう僕は音楽専門誌には書かないけどもし音楽専門誌なやレビューを書くならトオミヨウさんについて書くんだろうな。この人は凄いね』
『僕は最近アルバムの中では一番好きよ。全然確信をつく事はいないんだけど一つの要素はアルバムの約半分を手がかけているトウミヨウさん』


(収録中なぜかむせる宇野先生)


『aikoのオスタープロジェクトのプロデュースについて批判的なことをツイートしたが炎上する事もなくむしろaikoファンから島田さん最高ですよねみたいなリプが来た。YOASOBI炎上以降、宇野はボカロPに厳しいというイメージが付いちゃいましたが。』


『けど、やっぱりあのタイミングで今思えば早かったよりキャリアの長いシンガーソングライターが新進のプロデューサーと組むと言う。方向性は全然間違ってなかったと思うんだけど当時、僕も嘆いた事はあった』
『今回のオスターはシャワーとコンセントとハニーメモリー。良いじゃん』
『僕の今回のアルバムの三曲のうちの一曲は青空。カクバリっていうのはなるほどそうかもなと思ったけど、長年aikoを聴いて来て僕の耳の変化してるんですよ。aikoも変化しているように。かつての島田さんのプロデュースに代表されるギターのサウンドと、母音を引っ張ったaikoの歌唱とそれにストリングが絡んでいくみたいな奴って昔凄い好きだったんだけど、今は軽快なポップソング。なんならギターが主張してない方向のaikoの曲が好きなのと、僕は歌詞の聴き方がストーリーで聴かないんだよね。フレーズで聴いちゃうんで、フレーズが残るのが良い歌詞。そういう意味で青空の出だしは百点だよね』
『青空の出だしは百点だよね。禁断の何かを齧ってしまった。例えばイリーガルな物でも良いけどさ。そういう感覚も含めてそれをユーモラスに歌ってると言うポップソングとしてのバランスがこのアルバムの中では凄く美しい曲だなと思った次第ですね。』
『僕も三曲のうちの一曲はメロンソーダなんですよね。やっぱaikoを聴いてる時のふわーってなってくコーラスの転調あるじゃん。よく出来たポップソングのようでいるんだけどルートの三つ目とかフッーってくるじゃないですか。ああいうのを聴くためaikoと言うかポップミュージックを聴いてるんだなと思います』
『キャンペーンソングになって経路を知らなかったから、これで初めて聴いたけどそういう話をするとよそゆきのaikoなのかな?と思いますけど歌詞はフレーズだしメロディは転調の浮遊感なんで、僕はフッてくるのはそこにずっぱりで来たのがこの曲で。こうやってひたすら乗っかり続けて二曲消化しましたけどね。へへへ』
『俺もばいばーーいですよ。三曲目』
『しらふの夢ってタイトルだけどしらふの夢じゃないなって言ってる。否定してる。凄いタイトルですよね。逆の意味のタイトル付けてる。こわっ!』
『収録してるのは発売の翌日なので聴き込めてない。お許しください』
タナソー「ヒゲダンやマカロニえんぴつはある意味ではaikoフォロワー」

タナソー「19世紀の終わりにシカゴ万博ってあったじゃないですか?」
『知らないよ』





『僕ね、車のナンバー7だった時ありますよ。ナンバー一桁にする自己顕示欲の塊なんで』
『僕がベントレーかフェラーリ乗ってたら1を付けてます。でも、俺の車は1をつける程の車じゃないから7をつける。本当にベントレーかフェラーリに乗ったら1を付けてますよ』






『aikoがプライドが高いかどうかはそれは目線によって違うと思う。ファンに対しては高くないかも知れないけど音楽家としてはやっぱりプライドが高いんじゃないかな?』


タナソー「どう考えても日本のソングライターでナンバーワンなんですよ」
『本当にそう思うよ』



俺は関ジャムって本当に観ないんだよね』
タナソー「俺も観ない本当にむかつくから」


タナソー「あの関ジャムの2000年以降のランキングにaiko入ってないのはありえない」
『本当にありえないね。何から何まで間違ってる』


タナソー「しょーもない耳の悪い人が聴いても3曲は入る」
『J-POPの名曲みたいな奴でしょ。俺もちらっと観たけど本当にくだらねえなあって思ったけど。入ってないのも意味が分からないし、入ってもカブトムシとか花火になるのも切ないしどうなっての納得いかない』
『結局1と7が好きって言ってる奴にaikoは分からないって事だよね』
僕もナンバーワンだと思ってる。一番好きなのは違うけど、一番凄いのはaikoだよ』
『ぽっぷさんいるおかげでタナソーさんのaiko語りもすっと入ってくる。三原さんの発言量も多くて良い回じゃないですか』

タナソー「次回は三週間後になります」

【寸評】

すっかりYOASOBI批判したことがネタ化している宇野先生でした。

宇野先生が自己顕示欲の塊だと自白してます。周りはそう思っててもなかなか本人が認めるのは珍しいので貴重な発言ではないでしょうか。

関ジャム批判は先日の配信イベントでも言ってましたね。

言いたい事は分かるのですがあの関ジャムでは西寺郷太氏をはじめ宇野先生やタナソーの知人も結構選者に入ってたのにこんなこと言って大丈夫なのかな?と勝手に心配してしまった次第ですね。




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