ヤクルトレディをなぞれば

Yakult1000が流行語大賞に入るほど販売好調で、飲料や食品事業全体が伸び、ヤクルトは2023年第2四半期決算で、この時点での売上高、各利益が過去最高だと発表しています。

売上に大きく貢献しているヤクルトレディの存在は有名ですね。

最近、自宅のすぐ近所2か所をレディさんが訪問している様子が目にとまりました。おそらく、以前から視野に入ることはあったのでしょう。あまりに自然な風景なので、これまで意識にのぼってこなかったのだと思います。

ヤクルトという商品を評価するほどの知識を持っていません。ただ、ヤクルトレディという販売システムを学びたいと思います。


60年ほど前、ヤクルト製品を普及させるために、主婦に限って販売員を採用したことがヤクルトレディの始まり。それまでの販売員はほとんど男性。結婚した女性は家庭を守るものという時代の中、主婦の販売員の方が家庭にいる主婦と共感し合えるだろう、という意図が的中して販売本数が伸び、この画期的な販売システムが主軸になったそうです。

現在、全国で3万人を超えるヤクルトレディが活躍。ヤクルト以外にも、乳製品、食品、化粧品、サプリなど多岐にわたる商品を家庭やオフィスに届けています。

一部、正社員やパートとして販売会社に直接雇用されている人もいますが、多くは販売実績に応じて収入が決まる個人事業主。割り当てられた顧客訪問だけでなく、面識のない家庭のピンポンを鳴らすなど、日々、新規顧客の開拓に奔走しているようです。

ヤクルトレディの拠点、宅配センターに併設されているヤクルト保育園に子供を預けてから仕事に取り組める環境が、特に専業主婦後に仕事復帰を模索している女性にとって魅力的なようです。勤続30,40年の人が珍しくなく、90代のレディが活躍しているところからも、働きやすさがうかがい知れます。

ヤクルトレディの訪問を受け、商品の購入は断ったものの、一緒に働きませんか?とスカウトされて働き始めた女性がいたり、街を走るヤクルトカーを見て、やってみようか、と応募した女性もいる。雇用という入口からヤクルトファン以外も共同体のベルトコンベアに巻き込んでいきます。


ヤクルト保育園のおやつには、やはりヤクルトが出てくるんですね。

「千成ヤクルト保育園」HP より

食事にはジョアが。

【東京ヤクルト公式】ヤクルト保育園の紹介~前編~ より


お母さんがヤクルトを売っている間、しっかりヤクルト製品に親しんでいる子供さんは、大人になってもその味を忘れずに購入してくれるのでしょうか。生きた乳酸菌はすっぱい物質、乳酸をつくるそうだし、戦後まもなく学校給食で提供されて不評だった脱脂粉乳も入っていて、子供さんの口に合うか気になりますね。コカ・コーラに負けないくらい砂糖を入れて調整されているので大丈夫なのでしょう。

東京ヤクルト保育園では、食事の前に、とってもテンポのいい「ヤクルトのうた」をみんなで歌うのだと紹介されています。

はじまる はじまる はじまるよ。
いちにち いっぽん ヤ~クルト♪
にこにこ にっこり にゅうさんきん♪
ミルミル げんきが わいてきた~
よいこの おなかは いいちょうし~

https://www.youtube.com/watch?v=J7e20tJZBqg  
【東京】ヤクルトレディ ヤクルト保育園スタッフからのメッセージです♪
 より

多感な子供さんの、人間形成していく上での深いところに染み込んでいけそうですね。


ヤクルトレディ発祥の地、高松で奮闘するレディを紹介した動画をまじまじと視聴しました。

「つらくて涙出したときもあったけど、この仕事よかったよ。私に合ってるんかな」と話す勤続52年、78歳(動画投稿時)の名物レディ、下津さん。たくさんの家庭や会社の人間模様を見届けました。訪問先の会社の新卒社員が社長や相談役になるほどの年月、自転車を漕ぎ続け、ヤクルトを届けてきた重みが伝わります。

同動画では、勤務歴5年のレディ、花村さんがセンターに顧客を招いてイベントを開催している様子も紹介されています。まとまった時間をもらってヤクルト製品の魅力を伝えられるいい機会。参加した顧客は、愛飲しているヤクルトの知識を吸収することに貪欲なようです。ヤクルト愛をより深めて帰っていくのでしょう。

花村さんは訪問先にウンチの模型を持ち歩いていました。ヤクルトレディは単なる販売員でなく、健康アドバイザー。模型のような便が出るようにしっかり乳酸菌をとることを顧客に伝えるのだとか。


牛乳配達のように対面せず保冷受箱に商品を届ける仕組みも整っています。留守でも受け渡しができる置き配は、販売員が巡回していく効率がいいでしょう。在宅している顧客にとっても、作業の手をとめて玄関まで出ていく手間が省ける。幅を持って約束した時間に行ってみたら顧客が風呂に入ってたり、体調が悪くて寝込んでたり、再訪問日の調整はレディにそれなりの負担となります。

しかし、レディを待っている顧客がいる。

一人暮らしの高齢者宅に商品を宅配しながら話し相手にもなることで安否確認を兼ねる「愛の訪問活動」という自治体とタイアップした地域社会により影響を与えそうな取り組みも、牛乳配達員にはできない。

対面するからこそ、約束の商品を届けるだけにとどまらず、日頃のやりとりから顧客の状況を把握して、適当なタイミングで化粧品を勧めるなど、確度の高いクロスセルも仕掛けられる。

【東京ヤクルト販売公式】新人ヤクルトレディの1日に密着!~ひらばやしさんvol.2~ より


継続訪問し対面で商品を届けるスタイルには、時代が変わっても簡単には代替されない強みがありそうです。歳月をかけて踏み固められた強靭な仕組みが、海を越えて広がっています。

「ヤクルト本社」HP  より


足を使って築き上げる家族のような人間関係を背景にしたヤクルトレディの言葉は、顧客の健康観に確かな位置を占めることでしょう。

2020年以降、コロナワクチン接種のことが健康面で大きなトピックとなっていますね。これら懸案事項が顧客との会話にのぼる場面も想像されます。どんなやりとりが展開されるのでしょうか。信頼を勝ち得たレディの言葉は、無下にされにくいように思えます。

彼女らの魔法のかけ方を覚えたら、活動に寄与できることがあるでしょうか。

【本文で触れなかった参照ページ】


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