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東大阪「こーばへ行こう!」で明かされた「マチCOBAの駅」構想

今年の11月8,9日と15,16日の2週にわたって東大阪で開催された「こーばへ行こう!」というイベントに少しお邪魔しました。以下、その様子をレポートします。
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「人生をかけるものに出会いました。このスペースから東大阪の職人魂を日本中、世界に発信し、マチづくりにつなげていきます」

11月8日に開催された「マチづくりに繋がるモノづくり」の講演で、「こーばへ行こう!」実行委員長、(株)盛光SCM、(株)COBAの草場寛子社長
は、聴衆を前に力づよくこう話しました。


11月8,9日と15,16日の2週にわたって開催されたオープンファクトリー、「こーばへ行こう!」は、普段、近所で目にしていても中に入ることを許されない禁断の場所である町工場を一般解放し、モノづくりと人の交流を生み出すイベントです。今年で8回目を数え、過去最多の47社が参加しました。㈱盛光SCMには、開場と同時に60人ほどの園児が訪れ、会場を賑わしていました。

同講演は、東大阪の町工場やお店、地域イベントなどを取材・紹介する「COBA特派員」だった大西裕さんとのトークセッションという形で行われました。

講演会場は、㈱盛光SCMの工場の一角、11m×35m×7.5mの大空間。昨年12月、工場の機械を売り払い、確保されました。


「こーばへ行こう!」は、2018年、東大阪市役所の担当者から「町工場を一日貸してほしい」という依頼が来たことから始まったそうです。

「工場を売り出していく」というような趣旨ではなく、地域住民と工場の交流を促していくべき切実な必要性からでした。住宅と工場が隣合わせ、住工混在の町である東大阪では、日頃から工場で発生する騒音に対して近隣住民からクレームが寄せられます。住民との間で起こる揉め事を、工場と住民の相互理解を深めることで解決していくのが狙い。

同年10月、㈱盛光SCMの1社のみで第一回目の「こーばへ行こう!」が開催されました。集客のため、同社の社員全員が仕事の手をとめて近隣にチラシを配りに行きました。配り方はポスティングではなく、商店街の人たちに直接、手渡し。日頃、社外の人とのやりとりに慣れていない職人さんは苦労したのかもしれません。その結果、予想を上回る735人の参加者を迎えることができ、みんなで驚いたそうです。


その翌々年はコロナに見舞われた2020年。市役所の担当者から一本の電話が入りました。「コロナのため他の地域のオープンファクトリーは軒並み中止になってます。『こーばへ行こう!』も当然、中止ですよね」。

「周りがやらないなら自分たちもやらないというのではなく、自分たちの意志を持って行動していきたい」と考えた草場社長は、「他がやらないなら、東大阪はやりましょう!」と発奮し、前年より規模を縮小しながらも、なんとか開催しました。

2021年の第5回からは本格化し、年を追うごとに参加企業数が増え、世間の認知も高まって、昨年は9031人が来場するほどに成長しました。今年は2万人の来場を見込んでいます。イベントに来場した人が参加企業に入社することになったり、この機会に知り合った企業同士の協業が始まるなどの効果も出ているそうです。


11月8日は、草場社長が構想している「マチCOBAの駅」のプレオープン日でもありました。「町工場を強くする」をビジョンに掲げ、工場や企業、工場職人と市民の皆さまが出会い、交流できる場になることを目指しています。

今年GWに訪れた奈良の「道の駅」からヒントを得たそうです。
「農家から野菜を買いたくても、どこを訪ねたらいいか分かりませんが、道の駅には、さまざまな農家がつくった野菜が集まってきますね。例えば、150円の安い人参と200円とちょっと高いけど無農薬で生産された人参が一緒に並べられていて、お客さんは好きな方を買い求めることができます」

農家に当たるのが東大阪の町工場。そこで働く人がモノづくりに力を発揮できるよう「マチCOBAの駅」が外部の人との交流の場になる、と重ね合わせ、来年8月のグランドオープンに向けてさまざまな構想を練っています。

若者が大勢の聴衆の前でプレゼンできる場をつくるというのもその一つ。世界各国の著名人が講演を行っている「TED」のようなイベントにすることを思い描く草場社長は、今年の「こーばへ行こう!」の決起大会で、高校生二人が大勢の人の前でプレゼンしたことに触れました。その高校生は「みなさん、私たちの様なZ世代を引き込むポイントは3つあります!」と堂々としたプレゼンを行ったそうです。

他にも、音楽ライブやスポーツイベントを招致したり、Barサービスを提供するなど、東大阪ならではのエンターテイメント性を生かして盛り上げていきたいとのこと。


東大阪にある製造業の事業者数は5564社。工場密集率はダントツの日本一を誇ります。しかし東大阪、ひいては日本を支えてきた町工場の職人の技術継承が難しくなってきているようです。

例えば、㈱盛光SCMが行っている「へら絞り」という金属加工技術を持っている人は、東大阪に4,5人しかいないそうで、1人前になるには10~20年かかるそうです。

危機に瀕している「こーば!」の宝、職人たちにスポットライトを当て、支え盛り上げていく「マチCOBAの駅」の今後を見守っていきたいと思いました。

















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