スターブロッサムというタイトルについて
タイトルの発表と違和感の話
『ウマ娘』でサクラローレルを主人公にした漫画を連載するよ、という告知が行われていた。本日、2022/11/05にそのタイトルが発表された。
『ウマ娘プリティダービー スターブロッサム』
プリティダービーってついてる!サクラ軍団だけに、その花(ブロッサム)が咲くまでの物語を描くのだろうと思われるのだが、このタイトルに予感や違和感を覚える人が一定数存在する。
「それは、同じサクラ軍団でも、ローレルじゃないのでは?」
一定数の人々が、そのタイトルから存在を感じ取る馬がいる。
――サクラスターオー。
87年の年度代表馬にも輝いた、まぎれもない名馬である。
菊の季節にサクラが満開
サクラスターオ―は皐月賞と菊花賞の二冠に輝いた競走馬だ。
ウマ娘にはなっていないが、ウマ娘になってもおかしくない実績の持ち主である。サクラ軍団の他の競走馬たちがウマ娘になっていることを考えれば、尚のことである。
菊花賞を制した時の実況「菊の季節にサクラが満開」は、名調子として知られている。『スターブロッサム』というタイトルは、このスターオーの代名詞的な名実況を連想させる、というわけである。
(杉本さんはこの手の「馬名に引っかけた決め台詞」の名手で、セイウンスカイやマチカネフクキタルでも似たような名調子を見せている)
ウマ娘になる馬、なれない馬
話は変わって。
『ウマ娘』での馬名の使用許可について、多くのファンは、馬主さんに貰っている、と考えている。少なくとも何人かのウマ娘については、そうであるらしいという状況証拠も示されている。
この馬主さんは許可する/しない、という観点はよく語られる。しかし、馬主さんが、この競走馬については許可する/しない、というジャッジをしている可能性はあまり考慮されない傾向がある。
たとえば、セイウンスカイをウマ娘にするのはOKだが、ニシノフラワーをウマ娘にするのはNG、というようなパターンだ。
確かに、普通に考えれば企画そのものに対して0か1か、だ。
しかし、『ウマ娘』という企画そのものは許容した上で、どうしてもこの競走馬だけは聖域として触れないでほしいと考える、そういう競走馬がいない、とは限らない。
サクラスターオーは、そういう風に考えられ得る数少ない競走馬の一頭だ。
二冠を達成したその年の有馬記念に出走したスターオーは、競走中の故障によって予後不良、最終的に安楽死となった。葬式では「天国に行ってまで走らなくてもいい」とメンコをあえて納めなかった、という。
ウマ娘になるということは、ふたたび走るということだ。
それが残酷な現実に対する幸福なifを描くことだったり、ある日に終わった物語の続きを描くことだったりする。その可能性こそが『ウマ娘』の物語の人気の大きな要因(のひとつ)であるわけだが、そもそも「もう走らなくてもいい」という願いもまたある。
実績的には十分でありながらスターオーがウマ娘になっていないのは、そうした理由から、特別に彼の名前だけは使用許可を得られなかったのではないか、と考えるファンもまたいるわけだ。
そして、タイトルの話
『スターブロッサム』はサクラローレルの話だ。
ローレルは94年にクラシックだった世代で、しかも遅咲きの馬だった。87年と94年は、人間なら十年一昔でも、競走馬の世界では交わることのない世代差だ。当然、スターオーと関わりはない。
スターとは輝かしい活躍の比喩にすぎず、ブロッサムはサクラ軍団として当然選択されるべき語彙でしかない、という可能性はあるでしょう。
しかし、タイトルからスターオーを感じ取らずにはいられないのもまた事実。もし、競馬史に通じていれば、サクラローレルの物語に「スター」という呼称を使うのは避けるのではないか――。
そして、『ウマ娘』は本日11/5、6と2daysライブを行っており、明日にも何か大きな発表があるのは(ほぼ)間違いない。
つまり、そこでサクラスターオ―がウマ娘化され、『スターブロッサム』においてもローレルの指標足り得る存在として登場する――という可能性は十分にあり得るのではないか。
ローレルとスターオーには交わることのない世代差がある、と言った。
しかし、すべての競走馬が時代と世界を超えて、6学年のうちに集って競い合い、交わるのが『ウマ娘』の世界でもある。競走馬の世界では交わることのない7年差が、ウマ娘になることでバトンを継承できる程度に縮まる可能性はゼロではない、はずだ。
余談
かなり賞味期限の短い記事なので、パパっと読んでくれると嬉しい。