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ミスコンの企画書を捻り潰された話

 京大の非公認ミスコンが話題ですね。

 大学生の頃、文化祭の実行委員に所属していた。中学生の頃に森見登美彦を読んだ時から、大学生になったら文化祭の実行委員に入るんだと心に決め、もちろん京都大学に入ることはできなかったが東京の有名私大に入学し、いくつかのサークルの新歓コンパでタダ飯を食らった後、最終的に文化祭実行委員だけに所属することになった。

 1年生で初の文化祭が終わったぐらいのタイミングで全学部の文化祭実行委員が集まる会に隔月で参加するようになった。そこそこマンモス大学だったので学部ごとにキャンパスがあり、そのキャンパスごとに違う文化祭が開催されていたので、実行委員たちが情報交換をしたり、全学部の交流会などを開催・運営したり、合同企画を立ち上げたりして、学部ごとの繫がりを演出したりする会で、隔月で大学本部に集まる。終わってからの飲み会が楽しくて参加していた。交通費も学校から出るし。個人的には遊びに行く感覚だったのだが、本当はまじめな会合である。私はそこで、2年生の春ぐらいに「全学部統一企画の立案」をやらされたことがある。

 全学部統一企画は、毎年秋に行われる「全学部文化祭閉会式」という式典で行われるもので、例年は「キャンパスがある町のグルメを紹介!」のような、各学部の魅力を発表する企画が行われていた。じゃあ今年もそれでええやんと、言いかけたとき。一緒に参加していた自分の学部の実行委員長の先輩、Sさんから「これは挑戦なんだけど….」と入れ知恵をされた。というのも、その企画は数年前に提出されたものの何らかの理由で本部学生課から却下され開催されなかったのだという。
 その企画こそ、「全学部ミスコン」である。各学部のミスコンでグランプリを受賞した者を集め、投票してもらい真のミスを決めようじゃないか!という企画。ありそうでなかった企画。でもなんで却下されたんすかね….

「却下の理由が謎のままだから、本部学生課の職員が入れ替わっているであろうこのタイミングで提出してみて、過去に却下された理由を知りたい。どうせ最後は学生課が出してくる無難な企画になるから適当な企画書でいいよ。」

 なんやそれ。

 ということで、自分の学部でミスコンの担当をしている友達から企画書のデータをもらい、一部書き換えて提出。あとは却下の理由を聞くだけだった。

 却下が言い渡される予定であった会合に都合で参加できなかったため、後日Sさんから「却下になったらしいけど詳しくは自分担当じゃないからわからない。とりあえずおつかれ。」とだけ言われた。つまらん。と思ったが、まぁそんなもんだろう。コピペだし。ぐらいに思っていた。そしてそんなことも忘れていたある日。夏の交流会の時だったか、全学部実行委員会の委員長であるOさんから「いやぁ~ミスコン残念だったね…もみ消された形になっちゃって….」と割と深刻な表情で言われた。

え、もみ消されてたの?

 Oさんの言うことにゃ。いくつかの企画書を提出してその中から本部学生課で判断してどの企画を実施するかが決められるところで、ミスコンの企画書だけ会議に出されることがなかったらしい。ということをOさんが本部学生課の担当職員から申し訳なさそうに伝えられたらしい。どうやらお局的ポジションの職員がミスコン的企画に嫌悪感を抱いているらしく、スムーズな議事進行のためにもみ消されたということらしい。すべて伝聞。
 「せっかく出してくれたのに本当に申し訳ないね…」とOさんから謝罪を受けたが、Oさんが謝ることではない。本部学生課恐ろしいな、と思っただけである。

 まだルッキズムという言葉がそこまでカジュアルに話題に上がることがなく、所謂「意識高い系」と揶揄されるような層でしか耳にすることがなかった頃。そんなこともあるもんかねぇと思っていたところ、しばらくして某体育会系部活動に問題行動が起きたり、本部の上層部でお金がらみの問題が起きたり、いろいろ大変だった母校。重たすぎる事件にもまれてミスコンの件について思い出すこともなくなった頃には自分も実行委員を引退し、1年間の留年を経て、特に森見登美彦作品的イベントも経験しないまま、大学を卒業した。
 そしてついに自分の学部でも、ミスコンが廃止された。本部からのお達しだったそうだ。ミスオブミスまで輩出したのに。フライデーでグラビアまでやってたのに。期待してデジタル写真集買ったら全然脱いでなくてさ。とにかくいろいろ残念である。

 京大のミスコンを見てふと思い出してしまった、私とミスコンの思い出。

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