「もっぱらなけなし」
今年の夏の新作は2曲入り音源となりました。おそらく便宜上はシングルということになるのでしょうが、あくまで2曲入り音源ということで今回もセルフライナーnoteを書いてみます。
今作について
今年は何も出さないつもりだったんです。最初。ただ昨年末のライブ用に作った「もっぱら」のバンド版を寝かせておくのももったいないなぁという貧乏性が発動してしまいどうにか上手い出し方を考えていたところで「なけなし」のバンド版アレンジになんとなく手を出し始め、この2曲をフィジカルとストリーミングでだすのもアリかなと思い始めました。
なにか音源を出すなら4曲のEPかフルアルバムで出したい気持ちがあり、あまりシングルの形態で出すことにかっこよさを見いだせていなかったのでかなり悩みました。ただ何もしないよりはいいのかなと。謎のもっぱら人気にあやかってうまい落とし方するにはシングル的形態もアリなのかなと。あとは、いかに「もっぱら」を形骸化していくかを考えたときに、シングルカット的なやり方をした方がきれいに形骸化させられるんじゃないかともおもいました。「もっぱら」のための「なけなし」だし逆も然りという感じで「もっぱらなけなし」というタイトルの「2曲入り音源」という方向性にしてみようとなりました。
楽曲解説
「もっぱら」に関しては前作のセルフライナーnoteにいろいろ書いたのでアレンジ面の事を。「なけなし」はしっかりもっさりいろんな事を。
もっぱら
10~15分でできた曲なのに他のいっぱい時間をかけて作った曲より褒めていただくことが多い「もっぱら」と今後どう付き合うかを考えたときに、もっと形骸化した濃度の下がったものにしてみたいというのが思い浮かびました。元々がプラスティックラブ的なシティポップ路線のイメージだったのでアレンジも陳腐な感じにしてみました。ありがちな。大きなテーマは「パターン化された"エモ"」
KinkiKidsの「Kissからはじまるミステリー」のアレンジを参考にしつつ、カイリーミノーグとかシニータあたりのユーロビート感をブレンドしました。要はSAWプロデュース感。無機質でからっぽなありがちなありふれたそんなアレンジを心掛けました。サラッと聞き流せるどこにでもあるような雰囲気にして、「みんながそんなに好きっていうならこうなっても好きって言ってよね!」という気持ちでいます。ボーカルのオートチューンも似合ってないダサさが気に入ってかけすぎなぐらいケロケロさせました。
歌詞の本質をいかに消滅させるか、というところにこだわっています。なんだかんだネチネチ言ってる歌詞ですが、いい曲だねと褒めてもらえるのってサビの「もっぱら~」のインパクトだけだったりするわけで、そのインパクトだけに頼って意味や思惑を完全に排除できたとき、ようやく「泣いてばっかりなんていられないこと」を本当に知れる、歌詞の回収ができるんじゃないかという目論見です。ありふれたクソみたいなMVとか作りたい気持ちです。
なけなし
歌詞を書いたメモの最終更新は2022年10月25日、曲を覚えておくように録ったボイスメモは2022年10月5日でした。だから多分初演は11月。
元々、laboの栗橋さんとの雑談で出てきた「なけなしの言い訳」というフレーズからすべてが始まった曲です。実はこのなけなしの前に1曲試作品として「なけなしの言い訳」から始まる曲がありまして。
歌詞にまとまりがなく流れも読めないのでこのスタンスで新しい歌詞を書いてロックに仕上げたのが今の「なけなし」です。
2021年に作って結局未発表のままデータが消滅してしまい再現に時間がかかている「禁断少女」という曲があるのですが、その曲のスピンオフ的な気持ちで歌詞を書きました。ちなみに誰も知らない「禁断少女」のサビは
というものでした。トー横が舞台。23歳の時に作った曲。この「禁断少女」を観測している「僕」を好きな女の子が主人公なのがこの「なけなし」であります。24歳の時に作ったので「禁断少女」も24のあの娘になりました。「禁断少女」もいつか引っ張り出してあげたいですね。禁断ですけど。
基本ライブで毎回やっていたのでそろそろバンドに起こしたいなと思い少しずつ作業を始めました。「勝手にシンドバッド」のイメージでとにかくパーカッションを入れたい!とゴテゴテに盛ってから、あえてサーフロックの音像を作ってみました。
あとはこの曲で初めて自分以外の人にギターをお願いしました。laboで出会ったスーパーギタリスト、のだ・ベンティ・とーたく氏にリードを弾いていただきました。
このTwitterでのやりとりから本当に引き受けてくださり、超かっこいいギターを入れてもらえました。感謝です。
8月11日の誕生日イベントでバンド版を初披露だったのですがとーたくさんのギターのおかげですごい盛り上がりましたわ。自分もテンション上がった。ただ、やりたいことが少しずつ形になってきていることで、やりたいこととできることの乖離がやっぱり大きくなってきて、ライブへの恐怖心みたいなものは膨れ上がっていく一方だなとも感じました。毎回これができればね。いいんだけど。
ジャケット
レコードマークシリーズはひと段落したものの、シングル的形態で出すとなったらやっぱりシンボル的なものが欲しいなと思い、レコードマークをアレンジする方向にしました。というか、背景が邪魔!と思ってしまう。例えばどちらも夜の歌ですから、ありがちな夜景をジャケにすることも考えましたが、どうしてもあのマークにこだわりたかった…。
あとは両A面でもなければA面B面でもない、あくまで2曲入り音源であるということを踏まえると、まったく同じアイコン的なものの方が無機質な作品感が出て意図に合っている気がしました。
フィジカルとストリーミングで出すことには決めていたので、フィジカルの方はそれぞれのアイコンと歌詞のページを上下反転して並べました。あくまで「2曲入り音源」なのでどちらを表紙にしてもいいですから。
ストリーミングの方はフィジカル版の歌詞カードを4ページ分まとめて1枚に重ねました。全部で一個ですよというか。フィジカル版への販促も込めて。買えば全部読めるのにほんとにストリーミングだけでいいんですか?という気持ちで。
公式海賊版な気持ちでもあります。そういうの出してみたくて、今はライブの録音を撮りためています。オフィシャルブート的なカセットテープが出せたらと思ってます。その一環ですね今回の仕様は。
もっと「もっぱらなけなし」
恒例の元ネタプレイリストです。より造詣を深めたい方におすすめです。
とりあえず「なけなし」をどうにか形にできてよかった。もう今年の後悔は無いです。「もっぱら」はあんな姿になっても愛してあげてください。
ライブおさえて制作に専念したい気持ちとライブやらないと曲できないというジレンマ。上手くやっていきたいですね、ということで2023年の新作でした。