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ジシアンが含まれる肥料: その効果と使用上の注意

最近、農業界で注目されている「ジシアンジアミド入り肥料」。この肥料は、伝統的な化学肥料とは一味違い、様々な効果を持っています。この記事では、ジシアンジアミド入り肥料の特性やその効果、さらに使用する際の注意点について詳しく解説していきます。

1. ジシアンジアミドとは? - 成分と特性

ジシアンジアミドは、石灰窒素を原料とし、酸性の環境で水と反応させることで合成されます。具体的には、シアナミドを合成した後、加熱重合させることでジシアンジアミドが得られます。このジシアンジアミドは無色の斜方状晶または板状晶の形をしており、溶解性は水温によって大きく変わります。実際、25°Cでの溶解度は4.13g/100mlで、100°Cでは96.8g/100mlとなります。

さらに、ジシアンジアミドは硝化抑制材として知られており、尿素態窒素やアンモニア態窒素にのみ作用します。これは、アンモニアから亜硝酸への酸化反応をブロックし、アンモニア態窒素の硝酸態窒素への変化を抑制する効果があるためです。この特性を利用して、多くの化成肥料にジシアンジアミドが添加されています。

主な用途としては、エポキシ樹脂の硬化剤や農薬の殺菌剤、そしてシアナミド誘導体の原料として利用されます。特に、日本やアメリカ、EUでは殺菌剤としての使用が公認されています。

2. ジシアンジアミド入り肥料の使用とその効果

ジシアンジアミド入り肥料は、畑作物や牧草、果樹などに使用することができます。特に基肥としての利用が一般的です。ジシアンジアミドが水に溶ける特性を持っているため、多量の水が存在する場合は、ジシアンジアミドの効果が希釈される恐れがあります。このため、冠水状態の水田での使用は推奨されていません。

ジシアンジアミド入り肥料を土壌に施用すると、その養分は土壌水分に溶けて放出されます。同時に、肥料に含まれるジシアンジアミドも溶出し、養分とともに土壌溶液に拡散します。このジシアンジアミドは、土壌微生物に対して強い殺菌効果を持ち、特に亜硝酸菌の増殖を抑える効果があります。

3. ジシアンジアミドの土壌中の動き

ジシアンジアミド入り肥料が施用されると、その養分は土壌水分によって解けて放出されます。ジシアンジアミドも同様に溶出し、土壌溶液内で養分とともに存在します。この溶出されたジシアンジアミドは、養分と結びつきながら、粒子の周囲に土壌溶液のクラスターを形成します。そして、時間と共に、この養分イオンとともに、濃度勾配に沿って土壌溶液へと拡散していきます。

ジシアンジアミドは、土壌中の微生物に対して強い抑制効果を持ちます。特に、亜硝酸菌の増殖を抑える効果があり、アンモニアから亜硝酸への酸化反応をブロックすることで、アンモニアイオンの硝酸イオンへの変化を制御します。加えて、ウレアーゼを持つ土壌微生物の増殖と活動もある程度抑制されますが、主な期待効果は硝化作用の抑制にあります。

ジシアンジアミド入り肥料の効果は、土壌のタイプや水分、有機質の量、pH、温度など多くの要因に影響されます。総じて、砂質土やローム、良好な透水性と通気性を持つ土壌、有機質が少ない土壌、弱酸性から中性の土壌、高温の季節に、その効果がより大きくなる傾向があります。

4. ジシアンジアミド入り肥料の施用上の注意点

  • アルカリ性肥料との混合: ジシアンジアミド入り肥料はアンモニア態窒素を含むため、アルカリ性の物質と接触すると、化学反応が生じ、アンモニアガスを放出する恐れがあります。これを避けるため、石灰や草木灰などのアルカリ性肥料との混合は控えるべきです。

  • 水田での使用: ジシアンジアミドの流出を防ぐため、冠水状態の水田での使用は避けることが推奨されています。

  • 過剰施用の危険性: ジシアンジアミド入り肥料は高濃度の養分を含むため、過剰に施用すると作物に害が及ぶ可能性があります。特に、若い作物には直接的なダメージを与える恐れがあるため、適切な量を守って施用することが重要です。

  • 緩効性効果の過信: ジシアンジアミドの効果は多くの要因に影響されるため、緩効性が十分に発揮されない場合も考えられます。施用後、作物の生育状態をよく観察し、必要に応じて追肥を行うことが大切です。

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