ラップに欠かせない「韻」の話
ラップを語る上で韻は欠かせない要素です。
もちろんラップでは必ず韻を踏まくてはならないという決まりはありません。
しかしながら、多くのラップの曲には韻が踏まれているものが多いです。
英語を話す国では日常会話の中で韻を踏むということが一般的に行われています。
しかし、日本ではあまり韻を踏むということが一般的ではありません。
なので、あまり韻を踏むということがどういうことなのかよくわかっていないという方も多いのではないでしょうか。
また、ラップで何のために韻を踏んでいるのか、韻を踏むことでどのような効果があるのかというのもあまり知られていないと思います。
そこで、韻とは何か、そして韻を踏むことでどんないいことがあるのかについて解説していきたいと思います。
韻についての理解があるかないかではラップをどれだけ楽しめるかに大きな差が生まれます。
なので、最近ラップに興味を持ち始めたという方はぜひ入門として読んでみてください。
そもそも韻とは何か?
まず韻を踏むとは何かについて解説します。
韻を踏むとは母音を合わせることです。
日本語は基本的に子音と母音の組み合わせで成り立っています。その単語と単語の母音を合わせることを韻を踏むといいます。
例えば、「東京」という単語で韻を踏むなら、母音はo・u・o・u なので母音が同じである「想像」「高校」「冒頭」「納涼」などの単語で韻を踏むことができます。
単語内のすべての文字の母音が揃っていて、かつその単語の文字数が長いほど、もしくは同じ母音で韻を踏みつづけるほど、良い韻とされています。(良い韻のことをかたい韻、韻がかたいなどと表現します)
かたい韻の例を紹介します。
Bigな番狂わせ 「キックザカンクルー」again
(LITTLE)
KICK THE CAN CREW / 千%
KICK THE CAN CREWという三人組のグループのLITTLEというラッパーの韻です。驚異の9文字踏みです。
この曲について少し説明を加えると、この「千%」という曲は一時期活動を休止していたKICK THE CAN CREWが14年ぶりに復活する際に発表した曲です。
長い文字数で踏みつつ、内容も14年ぶりの新曲というタイミングにドンピシャなリリックで自分的に好きな韻の1つです。
LITTLEさんは韻にこだわりの強いラッパーで、いい韻がたくさんあるので気になる人はぜひチェックしてみてください。
次はRHYMESTERの「The Choice Is Yours」の宇多丸さんのバースです。
誰が敵 そして誰がフレンド 誰が悪魔 そして誰が聖人(セイント)
誰が得してて誰が許せんと 誰もが目をむいて憂う前途
デマとホントが絶えず転倒 誰の言ってることがいまトレンド?
誰のコメント 誰のレコメンド 誰がこの不安解消してくれんの
誰かのせいにしたい? それも限度 誰を犠牲にした? 日本全土
次は誰にリスク押し付けんの 誰が落とし前つけんの
そいつは自分たちの選択 マジ面倒 だがそれもできないんじゃもうジ・エンド
まるで暗闇の懐中電灯 未来を照らす君こそがレジェンド!
(宇多丸)
RHYMESTER / The Choice Is Yours
この宇多丸さんのバースはe・n・oの韻で踏まれています。文字数的には3文字で少ないのですが、同じ韻でワンバースずっと踏み続けている超かたい韻です。
こんな感じで韻とはどういうものなのかわかっていただけたでしょうか?
なぜ韻を踏むのか?
韻がどのようなものかということをわかっていただいたところで次は、なぜ韻を踏むのか、韻を踏むことの効果を説明していきたいと思います。
①歌詞にリズムを持たせる
ラップの曲は基本的にメロディーがありません。なのでその代わりにリズム感を重要視する音楽です。
そこで歌詞に抑揚やリズムを生み出すために韻を踏むわけです。
韻を踏むことによって一定のリズムが生まれ、ノリが生まれたり、キャッチーで耳に残りやすくなったりします。
広告でも頭に残りやすいキャッチフレーズにするために韻が踏まれているものがあります。
例えば、「インテル、入ってる」や「なくそう、逆走」などです。
これらのキャッチフレーズは一度聞いたら頭に残りやすく、つい口に出したくなってしまうものです。
このような効果が韻にはあるのです。
②面白い表現が生まれる
ラップの作詞では伝えたいことを言葉にする際に韻を踏むという遠回りをしなければなりません。
なので韻を踏むことは一見デメリットに思われます。
しかし、韻を踏むという遠回りをしたからこその面白い表現が生まれるというメリットがあります。
いつもの帰り道をあえて遠回りしたら、今まで知らなかったいい感じのご飯屋さんを見つけたみたいな感覚です。
例えば、この歌詞です。
表参道のオープンカフェ よりも
お嫁さんとの醤油ラーメン
(ZORN)
ZORN / Have A Good Time feat.AKLO
韻を踏もうとしなかったら「表参道のオープンカフェ」というおしゃれなワードから「お嫁さんとの醤油ラーメン」という庶民的なワードの組み合わせは生まれなかったでしょう。
韻の力によって、普通なら結びつかないようなワードや意外なワードの組み合わせの表現が生まれます。
韻を踏むというあえての遠回りをして生まれた面白い表現を楽しむのもラップの醍醐味の1つです。
③歌詞に説得力を持たせる
最後は歌詞に説得力を持たせるということです。
前にも書いたように、ラップの歌詞では韻の力によって言葉と言葉が引き合わされます。
この韻によって引き寄せられた言葉と言葉を使うことによってその言葉が使われることに対する運命感が生まれます。
そして、その言葉を使った文を使うことが運命で既に決まっていたかのような説得力を生むことができるのです。
以上これらの3つが韻を踏むことの効果です。
最後に、、、
こんな感じで日本ではあまり馴染みのない「韻」についてわかっていただけたでしょうか。
ラップの曲を聴くときや歌詞を見るときはぜひ「韻」に注目してみてください。
そうすれば、ラップを今まで以上に楽しめるはずです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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