【授業ディベート入門2】 政策論題を選ぶ(中編)

「ディベートをしてみたんですが、盛り上がりませんでした。」
「ディベートをしてみたんですが、失敗しました。」

そういった話を聞くとき、原因はだいたい、次のうちのいずれかです。
1. 論題が悪い
2. フォーマットが悪い
3. 進行のコツが掴めていない

参加者(生徒・児童)、指導者(先生)にとっても、時間と手間はかかったのに不満ばかりが残るという残念な結果になります。

そこで今回は、【論題設定の方法】について考えます。

前提1: 政策論題

先日も述べたように、政策論題がおすすめです。

ここでは、政策論題/価値論題/事実論題の違いを明らかにしましょう。

画像1

先日、高校生向けの講座を行った際のpptを微修正したものです。

「事実論題」にあたるのは、どの論題かな?

「政策論題」にあたるのは?「価値論論題」にあたるのは?と考えてもらったのですが、なかなか正解に辿りつきませんでした。

前回も書いた、「政策とは何か」の捉え方の問題かと思われます。

↓ 答え合わせです。

画像2

政策論題はゲーム性が高く、調査型(あらかじめ論題について調べてから行う)ディベートに向いていることがわかるでしょうか。

前提2: 肯定側と否定側のバランスがいい論題

例えば、「英語を公用語にすべき」という論題は定番の1つです。
公用語にすることのメリットもあれば、日本語が疎かになるというデメリットもあり、ディベートの試合をしても拮抗することが予想されるからです。

一方で、「英語を公用語とし、日本語の使用を禁止すべき」という論題でディベートをするのは無茶です。日本語を失うことによる不便さや文化的デメリットが大きく、否定側ばかりが勝ってしまうことでしょう。

すでにどこかで成功した実績のある論題を使うほうが、安全です。
成功している論題 = 肯定・否定のバランスが整った論題 と考えることができます。

しかしながら、そうは言っていられない場合も多いものです。
「地域・参加者の層などに合わせ、特有の問題を取り上げる必要がある」
「最新のテーマを扱わなければならない」
といった理由で、実績のない論題に取り組む場合は
1. その論題についてインターネット、文献等で調査を行う
2. 実際にディベートに取り組む方の層を想定して、1試合分のシナリオを書いてみる
というシミュレーションを通して、肯定・否定のバランスを確認し、論題を公表したいところです。

とても手間がかかる作業です。
そこまでの手間はかけられないという方は、ディベート教育を実践している方に相談して論題を選定してください。
もちろん、当方にご連絡いただいても構いません。

繰り返しになりますが、論題の選定ミスは、ディベート活動が失敗する代表的な原因です。
ここで失敗すると、参加者(生徒・児童)、指導者(先生)にとっても、時間と手間はかかったのに不満ばかりが残るという残念な結果になります。

前提3: 参加者の年齢・層にあった論題

【参加者の年齢】
小学校中学年の授業で安楽死論題を扱った事例を聞いたことがあります。
安楽死論題は定番の論題で、ディベートをするなら1度は経験したいものですが、小学校中学年には早すぎるのではないでしょうか。
発達段階を考慮する必要がありますね。

【参加者の層】
これは私自身が過去に経験した失敗です。
「予算500円で満腹になるためにはどのハンバーガーショップに行くべきか」という論題。
老若男女わかりやすい導入論題として多用しているのですが、経営者グループの講習会では「ファストフードには行かないからわかりにくい」と言われてしまいました。
普段どんな生活を送っている参加者なのか、考慮する必要がありますね。

また、逆に、当事者性が強すぎてゲームとしてのディベートが楽しめない場合もあります。
例えば、クラスで高校野球の投球制限に関するディベートをするなら、甲子園を目指す球児が在籍しているか確認し、取り組む場合はその生徒への配慮が必要かもしれません。

ターゲット(参加者)にとって、近すぎず遠すぎない論題を選択するのが無難です。

「よそでは成功したのに、ここでは成功しなかった」そういう論題もあります。
論題の選定について相談なさる場合は、ターゲット(参加者の層)について詳しくお伝えください。
安楽死ディベートを通して深い学びを得ることのできる中学1年生もいれば、それが難しい高校生もいます。


論題選定は本当に難しいものです。

次回は、「政策論題を選ぶ(後編)」ということで、論題と時事性について扱います。


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