菊地克典・工房ととか
作品
写真は初期の頃よりずっと作り続けている椀、栃の手削り汁椀の制作途中です。右は削りたてで白木の状態。左は漆で木固め中。
鑿でスパッと切っているので、断面から漆がタップリ浸み込んで丈夫な器になります。黒く見えますが透き漆です。
汁椀は毎日何回も、使って、洗って、を繰り返しますが、長年使ってすり減って木地が出てきたら、上から漆をかければまたずっと使えます。
そんなふうに愛用してもらえれば幸せです。
はじめまして
松本市の隣の小さな村、筑北村で木の器を作って暮らしています。
出身は横浜市です。田舎暮らしに憧れて信州に移り住みました。
樹が好きだったので、木を使って何か作りながら暮らして行けたら幸せだろうなあとずっと思っていました。
「山に住んで、木を彫ってモノを作り、時々ふもとの街に売りに行く。」
そんなイメージでした。
最初は木曽の上松技術専門校で木材工芸を学びました。木曽には3年住みました。その後結婚を機に、たまたまの伝手で今の場所に移りました。
何年かたった頃、村の人に「うちの親父が昔、漆搔きをしていたから教わるかい?」と声をかけてもらいました。偶然にも、大きな漆の樹がたくさんあって、昔から漆搔きがされていた地域だったのです。
そんな幸運もあって、自ら伐採した木を削り、自ら採った漆で仕上げるということも出来るようになりました。木地から漆の仕上げまで、一貫して一人で行っています。
ものづくりの相棒
当工房のシンボルツリー、欅の樹です。
近所の人の山の樹なのですが、台所に座って食事をすると、窓からすぐ正面に見えるので勝手にそう呼んでいます。老樹だからなのか、春は一番遅く芽吹いて、秋は一番早く葉を落とします。でも毎年毎年着実に葉を繁らせる姿には「マイペースでいいんだよ。」と教えてもらっているような気持ちになります。
何かに悩んだり、あせったりしている時、ふと見上げては心の落ち着きを取り戻しています。
今年の冬は
写真でかっこ良くチェーンソーを片手で操作しているのは私ではなく、近所のIさんです。90歳を越えていますが、毎日コナラやクヌギを切って炭焼きをして暮らしています。本当にすごいと思います。
Iさんは冬になると近所の人に木の伐採をたのまれたりするのですが、去年の冬は私も手伝いをたのまれて一緒に仕事をしました。道に倒れそうな大きな赤松を何本か倒しました。
今年の冬も、また伐採を頼まれたということで、私にも手伝ってほしいと言われました。Iさんは、飄々として優しい人柄で、この冬また一緒に仕事できることを楽しみにしています。