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モヒンガー、正月のお菓子、夕顔の実のスープの話

話す人:(T)チョウチョウソーさん
ミャンマーのヤンゴン出身 日本に難民として来日、現在は高田馬場でミャンマーレストラン「ルビー」を経営。NHK海外放送キャスター、在日ミャンマー人支援、大学教授と一緒に学生の社会活動協力、など多方面で活動
聞き手:(Y)山下 crafts of myanmar noteの管理人

Y:ミャンマーの国民食モヒンガーについて、「ミャンマーの麺料理 モヒンガー」として話してもらいました。今回はその続きで、モヒンガーのより掘り下げたお話と関連した他の料理のお話です。

T:ではまずモヒンガーという言葉からお話しましょう。
モヒンガーというのはミャンマーの代表的な麺料理だということは前回お話をしました。そのモヒンガーという名前、これはビルマ語です。ミャンマーは多民族国家で134の民族がいます。その中で最大の民族がビルマ族で全体の7割を占めています。ビルマ族の言葉がビルマ語です。

モヒンガーの「モー」は軽く食べるものにつける言葉です。例えばお菓子。それからご飯の代わりに食べるもの、それらに「モー」が付きます。

たとえば「モロンイーボウ」。「モ」は軽く食べるもの、「ロン」は丸、「イー」は水、「ボウ」は下から上に浮かぶの意味です。丸くて水の下から浮かんでくる軽い食べ物、ミャンマーでお正月に食べる黒砂糖の入った小さなお団子です。茹でて作るので水から浮かんでくるという事ですね。

モロンイーボウ チョウチョウソーさんのお店の正月パーティの特別料理

Y:チョウチョウソーさんのお店のお正月のパーティで食べました。(ミャンマーの正月は4月17日)ココナッツを削ったものがかかっていて素朴でかわいくて美味しいお菓子ですね。
T:ミャンマー人の子供はみんな大好きな、大人にとっても懐かしい味のお菓子です。
Y:来年のお正月も楽しみにしています。(笑)

T:(笑)。モヒンガーに戻って、「ヒンガー」はスープです。それも少し辛いスープのことをヒンガーと言います。
たとえば「ブーディーヒンガー」ブーディーは夕顔の実(日本ではかんぴょうの原料として使われる)。つまり夕顔の実のスープです。夕顔はミャンマーではよく食べられますし、ミャンマー人は大好きです。日本でも6月から高田馬場の八百屋さんで良く売られています。これはミャンマー人が高田馬場には多いから。ミャンマー人の経営する高田馬場の食品店でもたくさん売られています。

Y:夕顔の実は日本ではあまり一般的な食材では無いです。でも優しい味でさっぱりして癖が無いので夏のスープとしてもっと食べられても良いと思いました。お店でもお願いします。

高田馬場のミャンマーの食料品店で売られている夕顔

T:はい。話が飛びましたが(笑)、「モ」と「ヒンガー」を合わせてモヒンガー。軽い食事として食べる辛味のあるスープという意味ですね。モヒンガーが朝食によく食べられるのはそういうことからです。

元々はミャンマーの南部の人たちが作った料理です。それが全国に広がるにつれて、地域によっていろいろな種類のモヒンガーが出来ました。これは前回お話しました。

Y:日本のラーメンも中国の料理だったのが日本でいろいろな種類に発展しました。そのようなものですね。モヒンガーを通していろいろなことが分かってきます。

T:ラーメン(笑)そうそう、そういう感じです。そしてさらに隣接する外国の料理や素材、政府の政策まで、モヒンガーはミャンマーの地政学的影響をいろいろと受けているんです。

料理はその国の文化や人を理解するための良い手がかりです。
特に日本人は食べることへの興味が旺盛で、味や盛り付けに対して繊細な感覚と美意識を持っていますね。私は料理をとおして日本の人にミャンマーをもっと知ってほしいと思っています。料理の話はまたいろいろとしていきましょう。

(路上の写真は2019年11月にミャンマーのヤンゴン市内で撮影。その他は2022年に高田馬場で撮影)