うるしで繕う生活道具/ガラスの金継ぎ
金継ぎを習いはじめた頃、漆が定着しない場所(釉薬の上など)は、溝をつけ素地を露わにして漆や錆をつけるという説明が主流だったように記憶しています。
程なくしてガラス漆が一般化し、磁器の表面に新たに溝をつけたりしなくてもある程度強度がある装飾が可能になったり、ガラス製品の蒔絵装飾や直しができるようになりました。
これまでも幾つかお預かりし、先日も指輪の修理の返却を終えたばかりです。
教室でもガラスを持ち込まれる方が多く見受けられます。
ガラス漆は、大まかな説明ですがケイ素に反応する食品基準法に適合した接着剤が配合されているとのこと。(堤浅吉商店さんでは詳しく表記されています。)
企業によって少し性質の違いもあるようで、取り扱いがあるサイトで用途に合わせて求めています。
修理方法ですが、繕われる方によってそれぞれ工夫があるようです。
私が手がけている方法は、間に箔を貼ってから接合する/断面にガラス漆のみで貼り合わせるの2通りで、硝子材料の質や厚みでどちらが適切か判断しています。
吹きガラスは厚みがあり断面がよく見えるので、箔を挟む直しも楽しいです。
見た目に強い印象になりますが、箔が漆定着の足場になって丈夫に使えます。
アンティークガラスも箔を使うことで美しく整え、鑑賞に向くようにしています。
箔直しの場合、糊代の厚みが出て密着が望めないので、飲用に使うものであれば漏れのないように隙間を埋める必要があります。陶磁器のように錆を入れてから蒔きまで進みますので、工程で必ず必要な研磨に耐える厚みがあることが条件です。
断面にガラス漆を塗りそのまま貼り合わせる修理は、少ない工程で仕上がり、技術的にもそれほど難しいことはありません。ガラスのケイ素に反応するという特性から、水晶や純度の高いクリスタルガラス、ビンテージガラス、また薄手で箔の直しに向かないものに使っています。断面はガラス漆の色が透けて儚さが出ていると感じています。
自宅で使っているガラスです。修理をして使い続けているものが多くあります。
中央は数年前に知人から割れた状態で譲っていただきました。古い日本の吹きガラスのコップで、とても華奢なつくりですが、しっかり接合できたことで問題なく使えています。
素敵に仕上がるものが多い中で、接合しても強度が出ず修繕が不可能なものもあります。さらに割れが多すぎるものは陶磁器のような圧着が難しいので形は戻しても使えない直しになってしまいます。鋭利な接合面の処理にかなりの時間を割くので、費用もある程度かかるマイナス面もあるので、ご依頼もで教室でも、事前に考えられることは相談の上進めています。
個々の特性に大きく左右されるので、安定した成果に至るまでが難しい所ではあるのですが、条件を乗り越えていった上での仕上がりは達成感があり、光に透けた姿も大変好きなので、可能性を広げられるよう意欲的に取り組んでいます。
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