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【タカマ二次小説】廻り舞台と紡ぎ歌#67 真珠貝と月

「颯太のヤツ、
やっぱり何か隠してやがる……」

泰造の言葉に、圭麻が頷く。

「ええ、間違いないですね……」

それにしても、どうしてあそこまで
頑なに口を閉ざすのか。

那智が橋姫と会ったことを知って、
あれほど動揺した彼が、

どうして真実を口にするのに、
あそこまで躊躇するのか。

(それはつまり、真実を知れば、
那智が傷つくことになると……?)

圭麻には、それ以外の理由は考えられない。

けれど、そんな真実であればなおのこと、
橋姫の口から聞かされた方が
より傷が深くなるのではないだろうか。

(時間がほしい、ということは、
絶対に言わないというよりは、
どう話せばいいかを考えたい、
ということなんでしょうけど……)

彼の心が決まる前に、
橋姫の触手が伸びなければ良いが、と圭麻は思う。

ふと那智の方を見やれば、
彼女は不安げな顔で、
障子戸の隙間から月を見上げていた――。



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