
【タカマ二次小説】廻り舞台と紡ぎ歌#73 鼓膜を覆う闇
那智は圭麻と泰造に連れられて、
おずおずと颯太のいる部屋に
足を踏み入れる。
そこで待っていた彼の顔を見た途端、
那智はその場にへたり込む。
「颯……太……」
「那智っ……!」
駆け寄ってきた彼に、合わせる顔がなくて、
那智は俯いたまま、なんとか言葉を発する。
「ごめん、なさいっ……。
オレの、せいでっ……」
(オレのせいで、颯太がっ……)
漏れた言葉が、涙が、
畳に零れ落ちた、その刹那。
不意に抱きしめられて、那智は目を見開く。
「謝らなきゃいけないのはオレの方だ……。
オレの方なんだ……」
(なんで……)
――奪ったのは、おまえだろ……?――
脳裏に冷たい声が響く。
その呪詛の言葉に、
今にも飲み込まれそうで。
那智をなだめる颯太の言葉が、
自分が悪いのだとそう語る彼の言葉が、
どこか遠い国の言葉に聞こえた――。