
【タカマ二次小説】想い出のララバイ~隠し味を添えて~#8 虫の居所
「まっさか、高天原(こっち)では女だったとはなぁっ」
泰造が半ば呆れたような声を出す。
那智が勾玉を手に入れた後、
神王宮の中庭に集まった一行は、
颯太の口から那智の正体を聞いて、
皆驚きを隠せない。
当の那智はというと、ここぞとばかりに隆臣のそばを陣取って離れず、
うっとりした口調で語り始める。
「オレ、中ツ国(むこう)でもつねづね思ってたんだ。
オレって、どっかで女なんじゃないかな~とかさっ」
それはもう、嬉しくてたまらないといった様子だ。
「だぁって、こぉ~んなに隆臣のことが好きなんだもんっ!!」
那智が勢いよく隆臣に抱きつく。
その瞬間、颯太の胸が異様にざわめく。
何やら苦いものが胸に広がり、
颯太はとっさに目をそらす。
(……べ、別に、気にすることなんかないじゃないかっ。
中身は、そのまんまなんだからっ……)
颯太は必死に自分に言い聞かせる。
外見はどうあれ、中身は、がさつでわがままで、
男のくせに隆臣が好きだと公言する、
いけ好かない社長令息そのものなのだ。
彼女が誰とベタつこうが、自分には関係がない。
それなのに。
(何だっていうんだよっ……)
胸の中にはなぜか、嫉妬にも似た醜い感情がくすぶっている。
さっきまで一緒にいたのは自分なのに、というわけのわからない想いが溢れてくる。
そんな自分に、颯太は苛立ちを募らせていく。
「みなさん!!そういうことは後にしてくださいねっ!!
早く神華鏡を手に入れて、ここを離れるんでしょう?」
圭麻の言葉に、颯太は我に返る。
天照を救うため、自分たちが次になすべきことは、
月読の一人娘であり神王家の巫女姫、
伽耶の持つ神華鏡を手に入れることなのだ。
颯太は慌てて余計な感情を頭から追い出す。
「よっしゃっ!さっそく、伽耶さんに会いに行こうぜっ!!」
気合十分の泰造の言葉に背中を押されて、
伽耶の部屋がある塔の入り口へ向かった――。