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【タカマ二次小説】宿り木の果てに#1 夢

「奇跡」が起きたその日。
結姫は気づくとベッドの上にいた。

寝ぼけ眼で時計に目をやると、
時刻はすでに昼に近い。

「遅刻……!?」

驚いて飛び起きるも、
よく考えれば今日は日曜日。

学校は休みだ。

「よかったぁ……」

安堵の息を吐いて、
辺りを見回すと、

カーテンの隙間から
眩しい光が差し込んでいる。

「お日様、見たのいつぶりだっけ……?」

そう言いながらカーテンを思い切り開けて、
日差しを一身に浴びる。

(あれ……?)

なんでだろう。
目尻が濡れている。

目尻から何かが頬を伝わって、
零れ落ちる。

(あれ……?私、どうして……)

その瞬間。脳裏に記憶が蘇る。

――結姫……。サンキュ……――

そう言って、
太陽に飛び込んでいった人影。

散り散りになった闇と、
戻ってきた光。

(あ……)

思い出してしまった。
何もかもを。

(たか、おみ……。たかおみ、
隆臣、隆臣、隆臣っ……!!)

溢れだした思いが、
止めどなく涙となって零れ落ちる。

結姫は床にへたり込み、
枕を抱いて声を殺して泣き続ける。

――隆臣が救ってくれた世界を、
あなたが守らなくて誰が守るの!?――

不意に、ビンガの声が聞こえた。

わかっている。

いつまでも泣いていてはいけないことくらい、
わかっている。

けれど。
この思いを出し切らないことには、

次の一歩なんて、
踏み出せなかった――。


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