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【タカマ二次小説】夢で逢えたら(初版)#11 パラダイスへようこそ

翌日。

結姫に見送られ、
ふたりは遊園地に向かう。

この地域では有数のアミューズメントパーク、
シルバー・ミレニアム。

ゲートを抜けると、
まるで異国を思わせるようなエレガントな街並みが広がっている。

まさに「夢の世界」だ。

マップを広げる颯太の横で、
那智が辺りを見回しては、感嘆の声を上げる。

そして近くを走るジェットコースターを見つけると、
さっそくねだり始める。

「なぁ、アレに乗ろうよ」

「え……!?いきなりジェットコースター……!?」

少々びびり気味の颯太である。

「なんだよ?怖いのか?」

「こ、怖いわけないだろ……?」

「じゃあ行こうよ!ほら、早く!」

那智に急かされて、
颯太は仕方なくジェットコースターの列に並ぶ。

刻々と近づく順番。

聞こえてくるのは、
キャ~という悲鳴とも歓声ともつかぬ声。

隣にいるのが那智だということもあって、
颯太の緊張は極度に高まっている。

一方、那智はと言えば、
早く乗りたくてうずうずしているようだ。

もう、と言うべきか、やっと、と言うべきか、
ついにふたりが乗り込むときがやってきた。

シートベルトを絞め、
その上からバーを下ろして体を固定する。

ゆっくりとコースターが斜面を登り始める。

どこまで登るのかと不思議に思うほど登り、突如止まる。
そして次の瞬間。

一気に宙に振り落とされるような感覚が、
ふたりを襲う。

もはや、重力さえも感じられない。

颯太は、恐怖にひきつった顔で必死にバーを握り締め、
声の限りに叫び続ける。

その横では、那智が喜々とした表情で歓声を上げている。

「あ~、楽しかった!次はどれに乗る?」

あくまで恐怖の乗り物を満喫した那智。
対して、アトラクション一発目にしてへろへろの颯太。

「悪い……。ちょっと休ませてくれ……」

「なんだよ、情けないなぁ」

そう言いつつも、那智は空いているベンチを探す。

「あ、そこ空いてるぞ」

そう言うや否や、
那智は颯太の腕を掴む。

慌てる颯太だが、那智は気にも留めず、
そのままぐいぐい引っ張っていく。

その表情は、
まるでこどものように無邪気だ。

颯太はその笑顔に、
先ほどまでの恐怖など、忘れてしまう。

ただ、胸の高鳴りだけが、今も続いていた。



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