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【タカマ二次小説】陽光の届かぬ塔の雲雀#12 野望

神王宮に戻った私たちは、
お父様の手厚い歓迎を受ける。

お父様は私の無事を大層喜んでくれていたけれど、
私の頭には、そんな言葉はろくに入っては来なかった。

それよりも、これから起こることに対する不安が大きくて、
居ても立っても居られない。

祝杯の準備をするようにと、
従者に命じ始めたお父様の言葉を、彼が遮る。

「そんなことはいい。それより約束だ。勾玉を渡してもらおう」

「おお、そうだった……!!おまえも知っていよう。
我が王宮にある伝説の間。そこに勾玉がある」

そう言って、お父様は彼を王宮の地下へと連れて行こうとする。

事態が掴めない私は、慌てて呼び止める。

「待って、お父様っ。勾玉って、どういうこと?
天ツ神たちが持っている勾玉が、ここにもあるの!?」

「ああ、そうだとも。13号にしか継承できぬ、特別な勾玉がな……」

含みのあるその言い方に、ものすごく嫌な予感がした。
私はとっさに叫ぶ。

「私も一緒に連れて行ってくださいっ!」

「よかろう。伽耶、おまえは従者たちと一緒に、
少し離れてついてこい」

お父様の言葉に頷き、私は従者たちを連れて、少し離れて歩く。
辿り着いたのは、神王宮の地下にある伝説の間。

いつもは固く閉ざされていて、決して開かないその扉の先には、
不思議な部屋がある。

壁一面にぎっしりと伝承の文字が刻まれ、
床には大きな魔法陣が刻まれた奇妙な部屋。

(いつもはここへ近づくと、お父様にものすごく叱られた……)

その部屋に、お父様が真っ先に入り、彼にも入るようにと促す。
その光景が異様で、私は得体の知れない不安を覚える。

彼も戸惑っているのか、すぐには入ろうとしなかった。

「どうした?入りなさい」

お父様の言葉を受けて、彼が部屋に足を踏み出す。
彼の足が床に描かれた魔法陣に触れた、そのときだった。

不意に魔法陣から火花のようなものが起こり、
あっという間に彼を包み込む。

そしていつの間にか、彼は透明なガラスケースのような檻に
閉じ込められてしまった。

「サンちゃんっ!?」

「何なんだ、これはっ!?」

彼が必死に檻を拳で叩く。

けれど、彼がどんなに叩いても、檻はびくともしなかった。
それを見て、お父様が嬉しそうに笑う。

「どんなに暴れても出られんよ。
それは、伝説より生まれた聖なる結界なのだから……!!」

「結界、だと!?」

「おまえはこの先ずっと、その結界の中で、
幽閉の身として生きるのだ。
私が全世界を手に入れるための、最終兵器としてなっ!!」

「月読っ、きさまっ!!」

悔しそうに叫ぶ彼を見て、お父様がさらに声を上げて笑う。

「そうそう、約束だった。
教えてやろう、お前の正体をな。
おまえは昼の光、すなわち全世界を呑み込む破壊神。
闇(バケモノ)だっ……!!」

私は耳を疑った。

彼が闇(バケモノ)ですって……!?
全世界を呑みこむ破壊神……!?

そんなバカな。

「なんのことだっ!?」

私同様に事態を呑みこめていない彼に、
お父様は壁に刻まれた文字を指し示す。

「見るがいい。伝説の文字を。
……『その刻印、すなわちあの獣の名。
昼の光を呑み込むものなり。
大地は昼に支配され、ここに闇は復活を遂げる。
やがて、第六の宝珠とともに』……」

彼の額に刻まれたアザは、「獣」の名を指し示す刻印であり、
「獣」とは昼の光を呑みこむ闇(バケモノ)を指すのだと、

6個目の勾玉こそが、闇(バケモノ)を目覚めさせる鍵になるのだと、
お父様は得意げに語る。

まるで、その声に反応するかのように。

結界の中で、彼の腰に差さっていたはずの剣が、
宙に浮かんだ。

そしてそれは宙に留まり、真っ青な勾玉へと姿を変える。

勾玉はやがてゆっくりと、
彼の目の前に舞い降りてきた――。


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