【タカマ二次小説】取り残された世界で君と見たものは#6 奇跡の裏側
伽耶による衝撃の告白は、
颯太にとっても想像を絶するものだった。
もしかしたら、隆臣も結姫も、
すでに命を落としているのかもしれない。
ここ数日、
そんな考えが頭をよぎらなかったわけじゃない。
よぎらなかったわけじゃないが、
まさか結姫が隆臣に食べられることを望み、
それを拒んだ隆臣が、
自ら太陽に身を投じたなんて、
そんなこと、想像できるはずもなかった。
「それで……、結姫は……?」
恐る恐る尋ねた言葉に、
伽耶が答える。
やはり結姫は、
そのまま中ツ国に帰されたらしい。
隆臣の意識を取り戻すために、
力を使い果たした彼女は、
勾玉を失って、
もうそれ以上高天原には、
いられなくなったのだという。
「目の前であの人を失って、
一時は自暴自棄になっていましたが……。
迦陵頻伽(カリョウビンガ)の支えもあって、
最後は笑顔で、帰って行きました……」
おそらく今頃は、
中ツ国で無事に暮らしているはずだと、
伽耶が続ける。
それを聞いて、
颯太はほっと胸をなでおろす。
これで結姫までもが
命を落としていたらと思うと、
たまらない。
「隆臣は……、アイツはほんとに、
死んだんですか……?」
わずかな希望を託し、
発した言葉は、
自分でも悪あがきのように聞こえた。
この期に及んで
あての無い「奇跡」を願っている自分が恨めしい。
「おそらく、高天原(こちら)ではもう……。
けれど、きっと中ツ国では、生きていると思います」
どうやら伽耶が言うには、
本来、太陽に身を投じて焼かれるという行為は、
肉体のみならず、
魂そのものを消滅させてしまう行為なのだという。
高天原の体はおろか、
中ツ国の体さえも、
存在できなくなるほどの、
破壊的行為なのだと。
死後の転生もままならないほど、
存在そのものを完全に滅ぼしてしまう行為なのだと。
「本来なら、中ツ国でも生きてはいないはずなのですが……。
鳴女様が、それはあんまりだと……。
せめて、結姫さんの心を救いたいと……」
そう言って、鳴女も後を追うように、
隆臣が消えた先へ飛び込んで行ったのだという。
おそらく、
自分の生命(いのち)のエネルギーを使って、
隆臣の魂を守ったのだろうと、
伽耶は語る。
「それじゃあ、鳴女さんは……」
「私に、天珠宮を任せると言い残して、それっきり……。
おそらく、高天原(こちら)ではもう……」
その言葉に、
泰造ががくりとうなだれて膝を折る。
「うそ、だろ……。そんな……」
ちくしょうっ!と叫んで、
拳を思いきり床に叩きつける。
床にへたり込んでいた那智の体が、
びくっと跳ねたのが見えた。
おそらく衝撃が伝わったのだろう。
いつもなら、何すんだと、
文句のひとつやふたつ、
言いかねない彼女だったが、
今はやけに静かだった。
彼女はただ呆然と、宙を見つめていた――。