【タカマ二次小説】廻り舞台と紡ぎ歌#24 抵抗
ところ変わって高天原。
那智が帰った後の小さな入り江。
橋姫と対峙している颯太は、
護符の力が急激に
弱っていくのを感じていた。
この動き封じの呪文は、
瞬間的威力は絶大なのだが、
長くは持たない。
あくまで、時間稼ぎ程度にしかならないのだ。
「この私に負けないなど、百万年早いわっ……!!」
ついに、橋姫が護符の力を跳ね返す。
(やばいっ……!!)
そう思っても、もう遅かった。
橋姫は颯太の体を勢いよく押さえつけ、
馬乗りになると、
颯太の喉元に喰らいつく。
恐ろしいほどの激痛が
体中を駆け巡り、
颯太は声にならないうめき声を上げ、
のた打ち回る。
「本当は、怖くて怖くて仕方がなかったのだろう……?
それなのに、よくもまあ、強がったものだねぇ……」
橋姫はそう言って笑い、
大きく開いた颯太の喉元に、
体を滑り込ませる。
同時に、颯太の体は
奇妙な吐き気に襲われた。
体中を何かが這いずり回り、
颯太の全てを支配しようとする。
体だけでなく、心や記憶までも侵そうとする。
(やめろっ……!やめてくれっ……!!)
もう無理だと、
意識を手放しかけたそのとき、
脳裏に声が響いた。
――颯太っ……!!――
それは、先程まで一緒にいた少年よりも
ワントーン高い、少女の声。
――無事に、どうか無事に、帰ってきてっ……!
お願いだからっ……!!――
祈るような、せがむような、
切ない声が響く。
――颯太っ……!!――
その声に応えるように、
颯太は力を振り絞る。
負けるわけにはいかない。
ここで、死ぬわけにはいかないのだ。
体を明け渡すことも、
心を明け渡すことも許さない。
颯太の必死の抵抗を感じ取ったのか、
体内からいらだたしげな声が響く。
――おのれっ……。この期に及んで抗おうとは……――
それは幾度となく、
颯太の「心」への侵入を試みる。
しかし、やがて、作戦を変更したのか、
再び、颯太の喉元へと移動し、
声帯に口づけをした。
その瞬間、
颯太はねっとりとした激しい違和感を覚え、
ついに気を失った。