
【タカマ二次小説】廻り舞台と紡ぎ歌#83 指に絡む想い
仲睦まじそうなふたりの姿を遠目で眺めては、
揚羽は吐息を漏らす。
夕食を終えた青年ふたりが部屋を出たにも関わらず、
一向に出てこない金髪の少女が気になって、
ふすまの隙間から覗いてみれば、
微笑み合うふたりの姿が目に入った。
朱色の花飾りを髪に挿した金髪の少女が、
銀色の指輪をした青年と向き合って笑っている。
そこに自分の入る隙なんてないように思えて、
諦めにも似た思いで宙を仰ぐ。
――お姉さま。私、あの人は
やめた方がいいと思います――
不意に、時雨の声が蘇る。
――だってあの人、
薬指に銀籐(エルシュ・ラタン)の
指輪をしてるものっ!――
薬指にはめる指輪に、込められた想い。
それは、決して断ち切ることのできない絆だ。
どんなに神に帰依していようと、
この絆だけは手放したくないと、そう願い、
神に許しを請うために、はめる指輪。
それが、世間一般には知られていない、
巫女や神官、祈祷師たちに伝わる通念。
(――時雨の言うとおりね……)
目尻からこぼれ落ちそうな涙を、
人差し指の甲で拭い、
揚羽は慌てて踵を返す。
そして、はす向かいにある小部屋に飛び込むと、
その場に跪き、声を殺して泣いた――。