
【タカマ二次小説】宿り木の果てに#10 決意
3月に入り、
小学校で習う単元もほとんどを終えて、
残すは卒業式の練習だけになっていった。
那智は嬉々として、
合唱練習に取り組む。
歌う曲目は「さよならは言わないで」。
ソプラノとアルトの二部構成で、
奇数クラスはソプラノ、
偶数クラスはアルトに分けられている。
1組の那智はソプラノで、
その歌唱力の高さから、
アルトとの境に並ばされた。
隣にいるのは、2組の美作百合。
アルトを歌う彼女も
その歌唱力を評価され、
互いにつられにくいと判断されて、
それぞれのパートの境目として、
隣に並ばされたのだ。
確かに彼女の声は深みがあって、
ハモると非常に心地よい。
音域も広いようで、
ソプラノでも十分行けるのだろうが、
天使の歌声とまで評された、
自分のボーイソプラノには敵うまいと、
那智は密かに胸を張る。
(中学に入ったら、オレ、
ぜってー合唱部に入ってやる!)
そう心に決める。
この自慢の歌声を
惜しげもなく披露して、
そして、神代中合唱部の栄光の歴史に、
自分の名を刻んでやるのだ。
那智は意気揚々と
合唱練習に精を出していた――。