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【タカマ二次小説】陽光の届かぬ塔の雲雀#22 踏みしめた先に
「神獣鏡と神華鏡をこちらへ。
合わせ鏡にしてください」
鳴女様に促され、地平線の少女(ホル・アクテイ)が
ふたつの鏡をかざす。
すると、鏡の中に階段が現れ、やがてそれは鏡を飛び出して、
遥か上空を目指して伸びる、一本の長い階段となった。
まるで空の果てまで続いているかのように見える、
この階段を登りきった先に、天珠宮があるのだという。
一歩ずつ、上へ上へと登れば登るほど、
荒れ狂う自然界のエネルギーが強風となって押し寄せてくる。
気を抜けば、あっという間に吹き飛ばされてしまうほどの、
激しい嵐。
髪は乱れ、衣服は煽られ、
まともに目も開けていられない。
(ああ、これほどまでに……)
これほどまでに、自然界を怒らせてしまったのね……。
「大丈夫ですかっ?」
不意に、圭麻さんの声が耳に届く。
「平気ですっ!!これくらい……っ!!」
精いっぱい、強がってみせる。
まだ、天珠宮には辿り着いていない。
こんなところで、弱音を吐くわけにはいかない。
「本当なら、あなたが天照を継ぐはずだったのでしょう?
それが、どうして結姫に……」
突然、素朴な疑問を投げかけられる。
それは、私自身が散々自分に問いかけたもの。
そして、その答えはおそらく。
「私が、月読の娘だからだと思います」
「え……!?」
驚いて問いかえす相手に、私は声を張り上げて語る。
風に掻き消えることの無いように、
相手の耳に、ちゃんと届くように。
世界をここまで汚してしまった父と、
何も知ろうとはせずに、その恩恵を享受していた自分のことを。
「私も、お父様と同罪なのですっ……。
だから私は、天照としてふさわしくないっ……。
でもせめて、この世界がどうなっていくのか、
見届けなければいけないの……。
それが、私が日継ノ姫宮(ヒツギノヒメミヤ)として、
今からでもできる、唯一のことだからっ……」
真正面から襲い掛かる風に負けないように、
一歩一歩足を進めながら、言葉を紡ぐ。
そんな私を振り返り、圭麻さんが笑う。
「強いんですね、女の人は……」
「え……?」
(私が、強い……?)
きょとんとしている私の耳に、
さらに意外な言葉が届く。
「尊敬します」
荒れ狂う疾風の中で、淀んだ空気と真っ黒い雲に覆われ、
重たい足を引きずって歩く中で。
彼の笑顔が、まぶしく見えた――。