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【タカマ二次小説】陽光の届かぬ塔の雲雀#18 存在の証明

「嘘よ……。嘘だわ、そんなの……」

私は耳をふさぎ、首を振る。

鳴女様の口から語られた言葉は、あまりにも恐ろしく、
信じがたいものだった。

(そんなの、ありえないわ……)

彼が、天照様を食らうだなんて。
それはもう、誰にも止められないなんて。

青ざめて震える私のそばで、
鳴女様が言葉を続ける。

「破壊神が汚れきった世界を葬り去り、
世界を一から造りなおす。
それが『天の岩戸計画(プロジェクト)』なのです……」

背中に真っ黒い翼を生やし、破壊神となってしまった彼。

彼の姿はまだ、最終形態ではなく、
今後さらに姿を変え、竜(ドラゴン)になってしまうのだという。

そして、竜(ドラゴン)となった彼は、
太陽の化身である天照様を食らうのだという。

――「日蝕」の文字通りに。

「これは、天照様の意思で私が発動させた計画……。
自ら竜に呑まれることこそが、天照としての真の役目……。
世界が汚される度に、繰り返されてきた計画なのです……」

(嘘よっ!!!)

私はそう叫びたかった。

叫びたかったけど、声にならない。
重たい沈黙が、その場を支配する。

凍りつくような冷たい空気に呑みこまれ、
私は今にも押しつぶされそうだった。

そんな時。

ふいに重たい空気を切り裂くように、
黒髪の少女が大きく手を振り上げる。

そしてその手が、渾身の力を込めて、振り下ろされた。

実体ではないために、触れることができないはずの、
鳴女様の頬目がけて。

「高天原も中ツ国もなくなってしまえというのっ!?
すべて人間が、私たちが世界を汚してしまったからっ!?
そんなっ、そんな人間ばかりじゃないっっ!!!」

溢れる涙もそのままに、彼女は言葉を放つ。

鳴女様の体に触れることができず、
そのまま振り下ろされたその手は、

けれど確かに、鳴女様の心を引っぱたいた気がした。

「鳴女さんは私に『天照様を助けて』と言ったじゃないっ!!
あれは嘘だったの!?
じゃあ、私たち5人を何のためにここに呼んだの!?
もう天照様を助けられないなら、どうしてっ!?」

それは、ひどく真っ当すぎる叫びだった。

世界が滅ぶことが最初から決まっていて、
それはもう誰にも止められないのだとしたら、

いったい何のために伝説の少女やその仲間たちが、
今ここにいるのか。

叔母様が「希望の光」とまで呼んだ伝説の少女。
彼女の存在に、意味がないわけがない。

私は息を凝らして、鳴女様の返答を待つ。
そこに隠されたもう一つの「真実」に向き合うために。


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