【タカマ二次小説】陽光の届かぬ塔の雲雀#16 灯火を胸に
天照を叔母に持ち、月読を父に持つ私は、
幼い頃から、天照を継ぐ巫女姫として育てられた。
叔母様の後を継ぎ、この国の最高位の巫女として、
まばゆい太陽として、この世に存在するふたつの世界を守る。
それが、生まれながらにして課せられた私の役目。
(でも、もしも――)
もしも、世界が病み、荒んでしまったら。
神王家の力だけでは、立て直すことができなくなってしまったら。
そのときは。
(中ツ国から来た少女が、世界を守る……)
それが、はるか昔からの言い伝え。
けれどそれは、神王家の人間にとっては、
とりわけお父様にとっては、受け入れがたい事実だった。
なぜなら、我が神王家を差し置いて、
世界を救ってしまう「伝説の少女」の存在は、
神王家を頂点とした都(リューシャー)の秩序を、
高天原の秩序を、揺るがしかねない存在だから。
(でも、叔母様は違った……)
地平線の少女(ホル・アクテイ)の存在を
殊の外恐れていたお父様とは対照的に、
叔母様は彼女のことを信じていた。
地平線の少女(ホル・アクテイ)は私たちの味方であり、
助けてくれる存在であり、まさに希望の光なのだと。
だから、恐れることなどないのだと、信じればいいのだと、
そう言って微笑んでいた。
だから、私はそんな叔母様の言葉を信じる。
世界はきっと救われる。
叔母様もきっと助かる。
そう、心の底から信じていた。
信じたかった。
誰が何と言おうとも。