
【タカマ二次小説】想い出のララバイ~隠し味を添えて~#6 破壊力
「さあ、どうぞ、ごゆっくりお召し上がりください」
月読の案内で通された部屋は、
天井や柱、絨毯やカーテン、テーブルや椅子など、
あちこちに手の込んだ意匠が凝らされており、
壁には美しい絵画が飾られていた。
テーブルに並べられた食器や料理も豪勢で、
いったいどれだけの犠牲の上に作られたものなのだろうと、
颯太は眉をひそめる。
しかし、その言葉を今口にしても、
有益な情報は得られない。
まずは、月読の客としてもてなしを受けつつ、
天照に関する情報を聞き出すことに心血を注ぐべきだ。
そう考えて、颯太が席に着こうとしたときだった。
背後で、ガシャン、という派手な音が響く。
驚いて振り返ると、金髪の女官が、
床に飛び散ったスープを慌てて拭き取っていた。
そばには、割れた器の破片が散らばっている。
「大丈夫?」
急いで駆け寄って、
散らばった破片を拾い集めていると、
すかさず、月読の怒声が飛んでくる。
「貴様、よくも王宮を汚すようなマネを……!!
それにその食器、おまえの給金の何百倍もの値打ちがあるんだぞ……!!」
月読は頭ごなしに叱りつけ、
謝る彼女を尻目に女官長に命じる。
「こいつは当分食事抜きだ。いいな!?」
「そんな……!」
颯太は思わず叫んでいた。
何もそこまでしなくてもいいじゃないか。
そう言い募ろうとした矢先、金髪の女官が慌てて止める。
「いいんだ!逆らっちゃいけない!!」
そして、月読に聞こえないように、
颯太の耳元でそっとささやく。
「ありがとう……!」
(うわっ……!)
颯太は思わず、息を吞む。
自分だけに向けられた、彼女の笑顔。
それはまるで一輪の花のように咲き誇り、
颯太の胸を貫いた。
跳ね上がった心臓が体中を駆け巡り、
体温を上げていく。
脳裏には、夢の中で聞いたセリフが木霊する。
――あの笑顔がたまんないね――
(たまらないというよりも、これは……)
凄まじい破壊力だと言った方が正しいかもしれない。
彼女が部屋を去った後も、
颯太の胸には、彼女の笑顔が熱く焼き付いていた。