
【タカマ二次小説】想い出のララバイ~隠し味を添えて~#3 低俗な会話
中ツ国。
時は遡り、
颯太がまだ小学5年生だった頃のこと。
昼休みの教室は、
カードゲームに興じる者や、
盛んに噂話に花を咲かせる者、
持ち込み禁止のゲーム機を持ち寄って盛り上がる者、
所構わず走り回る者などもいて、大層騒がしい。
その片隅で、颯太は一人、
無言で本を読んでいた。
隣では、クラスメイトの加賀鉄志と三河健二が
「クラスの女子で誰が一番可愛いか」で盛り上がっていた。
「やっぱ、留衣ちゃんだよなっ!」
「いやいや、真菜花も捨てがたいな。あの笑顔がたまんないね」
「そうかぁ?オレは断然留衣ちゃんだね。
あの顔見るとついついいじめたくなるんだ」
「てっちゃんにとっては初恋の人だもんな~。
けど、いい加減にしないと嫌われるぞ?
鉄志くんのいじわるっ!ってさ」
「わかってるよ、んなこと……」
そんな会話を耳にしながら、
颯太は本のページをめくる。
誰が誰を好きだとか、
誰が一番可愛いだとか。
小学5年生にもなると、
そんな話題が自然と耳に入るようになり、
関心を持つようになる。
颯太とて例外ではなく、
たとえば結姫が隆臣のことを好きなことくらいは、
ずいぶん前から知っていた。
だが、自分のこととなると話は別である。
颯太にはどうしても、
「恋愛感情」というものが理解できない。
(……だいたい、「可愛い」って言ったって、
たかが知れてるじゃないか……)
颯太は心の中で吐き捨てる。
正直、颯太にとって、
いちいち騒ぎ立てるほど「可愛い」と思う少女など、
学校にも塾にもいなかった。
だからこそ、自分は「恋」などという馬鹿げた感情とは
当分無縁だと思っていたのだ。
――夢で彼女と出会うまでは。