【タカマ二次小説】廻り舞台と紡ぎ歌#43 止まらない想い
「え!?中ツ国に行きたい!?」
いつものように家にやって来た那智の、
突然の申し出に、
圭麻は柄になく素っ頓狂な声を上げる。
「頼むよ。おまえならできるだろ!?」
一体何を根拠にそんなことを言うのかと、
圭麻は呆れて言葉を失う。
「どうして、急に……?」
かろうじて言葉を押し出した圭麻に、
那智は語る。
昨日、都(リューシャ―)で噂の
占い師のところへ行ってきたのだと。
そこで言われたのだという。
「夢」にヒントがあると。
「夢ってつまり、中ツ国のことだろ!?」
だったら今すぐ行かなきゃ、と言わんばかりの那智に、
圭麻は苦笑いをこぼす。
「ちょっと待ってください。
そんな急に言われても……。
少し時間をいただけますか?」
ちょうど偶然にも、
先日、家の前で不思議な欠片を
拾ったのだ。
碧く光るその鉱物の力を借りれば、
何かができるかもしれない。
けれどさすがに、今すぐは無理だ。
「……また待つのかよ……」
ぼそっと呟いた那智の顔が見るからに辛そうで。
圭麻は慌てて口走る。
「ちょうど、そういう発明品を
作ろうとしてたところだったんです!
やるだけやってみますからっ!だから、ね、」
那智が頷いたのを確認して、
圭麻はほっと胸をなでおろす。
どうも最近、那智のこういう顔に弱い。
(オレが下手に自覚させちゃったからなぁ……)
那智自身がはっきりとは
認識していなかった颯太への想いを、
はっきりと気づかせてしまったのは圭麻だ。
こうなることがわかっていたなら、
あんな鎌はかけなかったのに、と
自責の念に駆られてしまう。
自分の気持ちに気づいてもなお
うじうじしてしまう颯太と違って、
那智は気づいてしまったら最後、
あとはもう一直線だから。
(受け止められるのは、颯太だけなのに……)
それなのに、肝心の颯太がいないことが
歯がゆくてたまらない。
行き場のない想いを抱えて沈み込んでいる那智を見るのは
非常に辛い。
(いい加減、帰って来てくださいよ……)
宙に向かってぼやいた言葉には、
何の言葉も返ってはこなかった。