それから早1年が過ぎようという頃。
ついに颯太も
小学校6年生の冬を迎え、
受験の本番が近づいてきた。
颯太は塾で手渡された
模試の結果を見て、
肩を落とす。
(このままじゃ、落ちる……)
原因はわかっている。
まるで子犬のように
じゃれついてくる少年の
相手をしているせいだ。
もう二度行けやしない
夢の世界への憧れが、
「彼女」への想いが消せないせいだ。
時間は刻一刻と過ぎているのに、
いつまでたっても、
勉強に身が入らない。
「因幡くん、もう少し頑張らないとね」
塾の先生にも発破をかけられて、
颯太はハイ、と短く答える。
窓の外では、
白い花びらのような雪が
はらはらと舞っていた――。