【タカマ二次小説】陽光の届かぬ塔の雲雀#15 廃墟に現れた救世主(メシア)たち
「伽耶さんっ!!しっかりしてっ!!伽耶さんっ!!」
耳元で聞こえる声に目を覚ます。
私の顔を心配そうに覗き込んでいたのは、
私よりも5つほど年下の、黒髪の少女。
そして、私と同じくらいの年頃の、
少年少女たちだった。
「結姫さん……。それに、皆さんも……」
水晶の森で出会った、伝説の少女とその仲間たち。
彼らの視線を受けて、私はゆっくりと体を起こす。
「どうして誰もいないの?
月読は?……それから、隆臣は?」
何が起きたのかを教えてほしい。
そう訴える結姫さんに私は告げる。
「お父様は、砂になって崩れてしまいました。
別人のようになったあの人に、触れた瞬間に……」
「あの人って……、隆臣っ……!?
どこ!?どこにいるのっ……!?」
必死に畳み掛ける彼女に、私はすがるように叫ぶ。
「お願いっ!!あの人を止めてっ!!
あの人、背中に黒い翼が生えて飛んで行ってしまった……!!
天珠宮に行くと言ってた!!止めてっ!!あの人を止めてっ!!
じゃないと、天照様が死んでしまうっ!!世界が滅んでしまうっ!!」
気を失っている間に聞いた、叔母様の声。
今にして思えば、あれは。
(まるで、遺言のようだった……)
この先、何があっても、だなんて。
生まれ変わっても、だなんて。
まるで、世界の終わりを予期したかのような言葉に、
私は身震いを隠せない。
「ちょっと待ってくれよっ!!」
取り乱す私に、那智さんが疑問を呈す。
「なんで隆臣がそんなことにならなきゃいけないんだよ!?
わけわかんねぇよっ!!」
彼女の問いに、私が答えるよりも早く、凛とした声が響く。
「日蝕が始まるからだ」
声の主は、泰造さんの腕に抱きかかえられていた少年。
長髪で利発そうな透視人(シーヤー)。
まるで、今までずっと眠っていて、
今目覚めたばかりのように見えた。
彼はゆっくりと泰造さんの腕から離れ、
自力で立ち上がる。
今目覚めたばかりのように思えるのに、
その瞳には、淀みがない。
真実を真っ向から受け止める、
そんな気迫に満ちた瞳。
私の脳裏に、不意に叔母様の声が蘇る。
――伽耶……。どうか、これから起こることから、
目を背けないでください――
――あなたの目で見たものを、
感じたことを、大切になさい……――
そして、その声を思い出せば思い出すほど、
私は胸が苦しくなる。
(叔母様……。お願い。どうか、死なないで……)
大好きな幼馴染が一瞬にして変り果て、
お父様の命を奪った。
この上、叔母様もいなくなるだなんて、
そんなの耐えられない。
世界の存続や滅亡。
それらはあまりにも大きすぎて、
私には、どう受け止めればいいのかがわからない。
けれど、このままでは、
叔母様までもが死んでしまう。
それだけは、何としても避けたかった。